我らの内なる敵に警戒せよ

我らの内なる敵に警戒せよ
“シーチン”修一
【雀庵の「大戦序章」272/通算703 2024(令和6)年2/26/月】天皇誕生日の23日からの3連休は氷雨のように寒かった。そう言えばメルマガ「頂門の一針」主宰者の渡部亮次郎氏は1月に88歳になったばかりだが、このところ紙面に“ナベシャン”の匂いが薄らいできた感じがする。単なる加齢のせいならいいが・・・ちょっと寂しいね。

カミサンガ2年ほど前にリタイアして家事をやってくれるので小生はのんびり、時に憑かれたように営繕に励んでいる。やれるうちが華か? ダイニングルームのペンキ塗りは22日で終了。正確には「当初目的完了」で、天井を含めて全部やるには2週間ほどかかるから、「心技体」が揃うまでは手を付けられない。「老人無理をすれば怪我の元」、脚立から落ちて骨折しかねないから焦りは禁物、“それでいいのだ!”と思っていた方が無難だな。

無理をしたり、油断をしたり、目先の利益に釣られたり・・・人間は大昔から成功(前進)と失敗(後退)を繰り返してきた。熊は餌を求めて里に下り駆除される、それを恐れて暫く山で暮らすが、餌が足りずにどうしようもなくなると里に下り駆除される。勢いがあるときは我が世の春だが、秋を越せばやがて冬。動物は皆そんなもののようだが、どういう訳か、人間だけは衣食住足りても満足せずに「もっと、もっと」と縄張りを拡大したがる。人間の世界は永遠に「浜の真砂は尽きるとも世に争いの種は尽きまじ」、まるで天罰のよう。

Wedge ONLINE 2024/2/19日、岡崎研究所の「『国外に脱出する』インド人と中国人 変わる“大国の条件”日本も他人事ではない!」から。
<2024/1/31のウォールストリートジャーナル紙(WSJ)で、同紙コラムニストのSadanand Dhume(サダナンド・デューム)は、「米国に不法入国してくるインド人や中国人がこの2~3年間に急増している。また、富裕層のインド人、中国人の合法的移住も多い。多くの人が逃げ出す事実は、両国を超大国の台頭と呼ぶにふさわしいか疑問を生む」と、こう問題提起している――

地政学の専門家は、今を「アジアの世紀」と表現する。中国とインドの経済的台頭が、500年にわたる西側諸国の優位に終止符を打つと考えている。しかし、中国とインドは、世界の移民の大部分を占めている。国の繁栄と安定が保証されているのであれば、なぜ高学歴者や富裕層を含む多くの人々が国外に出ようとするのか。
2023年度、インド人9万7000人、中国人5万3000人の不法入国者が見つかった。これは、21年度より、インド人は3倍以上、中国人は2倍以上である。

昨年、約5万5000人の中国人と約6万9000人のインド人が、卒業後1~2年の実務研修を受けて、米国での就職を目指した。インド人は現在、メキシコ人に次いで2番目に多い移民グループで、 中国人は3位。これらの移民パターンには、アジア世紀の信者が見落としがちな弱点がある。その一つは「富裕層」の流出だ。

繁栄している国は、通常、資本や人材を惹きつける。富裕層を流失させることはない。しかし、22年、中国は1万800人の億万長者を失っている。2位はロシアで8500人、インドは3位で7500人。
中国の場合、習近平が、民間部門を弾圧したことが大きな要因である。中国人は長い間、米国永住権を許可するEB-5投資家ビザを、どこの国より多く取得してきた。また、西側のパスポートは、中国において政治的混乱が再来した場合の保険である。

インドでは統治が行き届いていないことが、富裕層や高い教育を受けた人材を国外に流出させる。彼らは汚染された都市、税務当局による嫌がらせ、劣悪な公衆衛生プログラム、粗末な都市インフラから逃れたいのだ。昨年インド人は、EB-5投資家ビザを2番目に多く取得した。
これほど多くの中国人とインド人が超大国と目される両国から離脱している事実は、両国の台頭が果たしてどれだけ必然的であるか疑問を投げかけるものである。

以下は解説者の批評。【国を捨てる人たちはどう動くか】以上のデュームの指摘は、一国の発展を見る上でとても重要な視点である。一国の国力を判断する際、経済力や軍事力等のハードパワーは重要な要素ではあるも、同時に「思想・表現・宗教の自由があり、安心して生活できる国か」、「生まれに関係なく、頑張れば夢を実現できる公正・公平な社会であるか」等のソフト面も大切な要素である。正に、富裕層も含め国民が大挙して退避するような国を「世界の超大国」と呼ぶことが適切か、という疑問は、忘れてはならない視点だと思う。

デュームは、裕福な中国人が、ビザを得て中国を脱出する理由、即ち1)習近平が民間部門を取り締まったこと 2)習近平の強硬姿勢が国民を怯えさせていること等に触れている。不法入国中国人の場合、米国のテレビ報道等によると、概ね次のようである。
「ビザなし」で入国できるエクアドルまで空路で行き、車や徒歩、船などで中南米諸国を通って直線距離で約3700キロ離れた米国に向かう。これらの人たちの多くが中級クラス以上で、移動のために5000から1万ドルを払う。亡命理由は1)「中国の夢」という理念に幻滅した、2)自由が欲しい、ということに加え、3)イスラム教徒(ウイグル人)、キリスト教徒など宗教上の理由を挙げる人もいる。

インドに関しては、デユームは、インド人が脱出を図る理由として 1)汚染された都市、2)税務当局による嫌がらせ、3)劣悪な公衆衛生プログラム、4)粗悪な都市インフラ、などから逃れたいとの点を挙げている。これらに加え、カースト制度、ヒンズー教とイスラム教の対立といった問題もあると推測する。

【日本も考えるべき在留邦人の状況】中国人とインド人の海外脱出の増加は、日本にとっても他人事ではない。日本は深刻な人口減と労働力不足に直面しており、その対策の一環として、現在、技能実習制度と特定技能制度の改正に取り組んでいる。今年の通常国会で改正法案が審議される。また、AI関連技術者などの高度人材の受け入れにも取り組んでいる。向上心のある勤勉な外国人材(中国人、インド人を含む)を迎え入れることは、日本の将来にとって不可欠である。

この10年間で日本人の人口は381万人減少している。22年の1年間で75万人減少した。この人数は福井県の人口に相当する。毎年一つの県が消滅している規模の減少数になっている。2023年6月現在、日本に在留する外国人は322万人。中国人が1位で79万人、2位はベトナム人52万人、インドは4.6万人。
在留外国人は10年前より115万人増加し、日本人の減少分の約3分の1程度を補っている。また、23年10月現在、日本で働く外国人労働者は205万人であり、この10年間で約3倍増となっている。価値総合研究所の試算(2022年2月公表)では、2030年には約419万人の外国人労働者が必要と見込まれており、国を挙げての取組みが不可欠である>(以上)

冒頭で「2023年度、インド人9万7000人、中国人5万3000人の不法入国者が見つかった。これは、21年度より、インド人は3倍以上、中国人は2倍以上である」とあるが、これは米国への不法入国者なのか? WSJ紙では「毎年、何万人ものインド人や中国人が、命と手足を危険にさらして不法にアメリカに入国することを厭わない。2023年度、税関・国境警備局(CPB)の職員は、97,000人のインド人、53,000人の中国人の入国許可されていない外国人、つまり入国許可のない人々に遭遇した。これは、2021年に摘発されたインド人の3倍以上、中国人の2倍以上だ。CPBのデータによると、中国の数字は2024年には劇的に上昇する見込みだ」とある。
ネットメディアの質はピンからキリまでだが、岡崎研究所は故・岡崎久彦大使が設立した名門のシンクタンクだ。「外国メディアの論説の紹介とそれへのコメントを提供し、外交安保政策起案の元になる国際情勢分析」をモットーにするなら「丁寧な翻訳」にもっと気を配るべきだろう。

ところで米国への不法入国で摘発された者は「2023年度、インド人9万7000人、中国人5万3000人」とあるが、インド、中国とも人口は14億人、日本の10倍強だ。日本への不法移民はほとんどなく、多くは「不法滞在者」で、「不法に入国し、在留資格のないままその国に留まっている人、または、合法的な在留期間を過ぎ、在留資格を失った後もその国に留まっている人のことを言う」そうだ(国際協力NGOワールドビジョン・ジャパン)。

我が国の出入国在留管理庁によると令和5/2023年1月1日現在の日本における不法残留者数は7万491人もいる。単純な比較はできないが、米国へ不法入国するインド人9万7000人、中国人5万3000人は、印中それぞれの人口14億人から見ればインドは0.0000692%、中国は0.0000378%。ほとんどゼロのようなもので、印中の為政者はまったく気にしないだろう。
不法移民に“侵略”されている米国の人口は3億4000万人。「米国には2023年、過去最多の約250万人がメキシコ国境から不法に入国した」(産経2024/2/14)という。人口100万人あたり7353人の不法入国者! たまったものではない。

それに対して人口1億2000万人の日本での「不法残留者」は人口の0.0059%で、「人口100万人あたり5900人の不法残留者がいる」ことになる。我が町、川崎市は人口150万人程だから9000人近い不法残留者がいる勘定だ。

先進国では移民への対応は概ね「受け入れ賛成派」と「受け入れ反対派」に割れている。「受け入れ賛成派」は“国境をなくしたい”という地球市民≒リベラル≒共産主義信奉者や、儲かれば中露北やイスラム原理主義国とも取引したいという銭ゲバ信奉者が多いよう。不法移民に寛容だ。

かたや「受け入れ反対派」は“ご先祖様から受け継いだ自由民主人権法治=資本主義経済、努力すればそれなりに報われる社会”を良しとしている。不法移民については「自国から逃げ出す前に努力したり改革に励んだのか? それもせずに自由や生活保護を求めて先進国に不法入国するのはいかがなものか? もうウンザリ!」と否定的だ。一流の国、一人前の国は棚ぼたで今の体制になったのではない、血で血を洗う戦争に勝ったり負けたりしながら試行錯誤の末に今がある。

不法移民にどう対処すべきかという問題ひとつをとっても試行錯誤は今もなお続いている。いずこの国も難問山積、外敵、内敵もウジャウジャ・・・オツムをフル回転させて「解」を探していくしかない。シンドイけれどいつかは青空が見えるに違いない。
それにしても「投げたらそこで終わり」というけれど、ボケも進行しており隠居したい気分になることが多くなった。我らの内なるもうひとつの敵=脳みその劣化を防ぐ方法を調べてみよう。
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*読者諸兄の皆さま、御意見を! ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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