戦争の時代をどう生きる?

戦争の時代をどう生きる?
“シーチン”修一
【雀庵の「大戦序章」271/通算702 2024(令和6)年2/18/日】2011年の「3.11東日本大震災」で津波が港の船を軽々と押し流す報道映像を見て、「もうこれ以上の事件や災難はないだろう」とテレビ(TV)を見なくなってから12年経った。
現役時代は忙しかったのでもともとTVはほとんど見なかったが、仕事ではCF(販促のための映像)は年に2本ほど創っていた。それで知ったのだが、TVのソフト=映像を創る人と、ハード=受像機を造る人はTV番組をほとんど見ないということ。
現場で映像を創るディレクター、スタジオで編集するオペレーター、それらを監督するプロデューサーなどは「TVはハードやソフトを作ってナンボ」という人々で、仕事はかなり過酷で残業や徹夜は当たり前の世界。リクルートに似ているが、1984年の頃に30歳くらいで年収1300万円という人は珍しくなかった。彼らは仕事を終えて帰宅しても一杯やりながらテレビ番組を見るという人はほとんどいないようで、懇意にしていたディレクターは「フェラーリを乗り回して優越感に浸ったり、ホラー映画(DVD)を借りてきて精神を癒している」と言っていた。なぜホラーなのか・・・何も考えないでも脳みそが刺激されてすっきりするからかもしれない。まるで一種のドラッグとか飲酒みたい・・・

東北大学の小学5~6年生調査ではテレビの視聴時間が長いと成績が落ちるらしい。 テレビを見ないで勉強している生徒がいるのだから当たり前の話だ。TVを見て頭が良くなったという話は聞かないが、現役を引退した老人を中心に「TVがないと生きていけない」ようなTV中毒患者は随分増えているよう。今はTVとスマホのW中毒!?
老眼だから・・・と読書をしない老人も増えていそうだが、それなら「良書」を精選して座右の書にしたらいい。その際、ベストセラーは避けた方が無難だ。明治以降のベストセラーで今も読み継がれているのは福翁の「学問のすゝめ」だけ。古典や教養・学問系の読書の習慣を身に着けると脳の劣化対策、ボケ防止にもなるだろうと小生は思っているが、ま、鰯の頭も信心から・・・人はそれぞれだが、それでいいのかどうか・・・

教育社会学者の松岡亮二・早稲田大学准教授の「教育格差」 (ちくま新書) にはこうある。
<人には無限の可能性がある。私はそう信じているし、一人ひとりが限りある時間の中で、どんな「生まれ」であっても、あらゆる選択肢を現実的に検討できる機会があればよいと思う。なぜ、そのように考えるのか。それは、この社会に、出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件(生まれ)によって教育機会の格差があるからだ。
この機会の多寡は、最終学歴に繋がり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり、20代前半でほぼ確定する学歴で、その後の人生が大きく制約される現実が日本にはあるのだ。(「はじめに」より)>

日本に限らず、先進国は皆似たようなものだろう。ざっくり言えば、良き家庭に生まれれば大学や大学院卒など高学歴でインテリの職業に就き概ね良き家庭を築く。その一方で貧しい中高卒の家庭に生まれれば学歴・知性が浅かったりして“並”や肉体労働の仕事に就き、収入にも余裕がないため、その子供も負の連鎖でそれなりの家庭を築くことになる――ということ。米国の「自殺と遺伝」調査では遺伝の影響も大きいというから、「学歴と遺伝」は似たような“人生因子”かも知れない。

松岡亮二氏はNHK教育サイト2020/7/3「新型コロナが突きつけた『教育格差』」でも警鐘を鳴らしている。以下抜粋すると――
<【コロナ禍により、教育現場ではさまざまな課題が指摘されていますが、なかでも懸念されるのが「教育格差」です。ただ、この「教育格差」という言葉は聞いたことがあっても、その詳細を知る人は少ないと思います。そこで、教育社会学者として長年、このテーマと向き合っている早稲田大学の松岡亮二准教授に、この「教育格差」について語ってもらいました】
◎教育格差って何? 「教育格差」は学習機会の有無や学力の高低のような結果の差ではなく、子ども本人に変えることができない初期条件である「生まれ」と結果に関連があることを意味します。
さまざまな「生まれ」がありますが、なかでも出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic Status,以下SES)と出身地域は主要な初期条件です。この「生まれ」によって、教育成果(学力や学歴など)に違いがあることを「教育格差」と呼びます。SESは文化的・経済的・社会的な要素を統合した概念で、親の学歴・世帯収入・職業などで構成されていて、高いほど子どもの教育にとって有利な条件といえます。
教育格差には、「みんなが同じ結果(点数・順位・学歴など)になればよい」という意味はありません。あくまでも出身家庭のSESや出身地域といった「生まれ」によって結果に差があることを指しています。
日本全体を対象とした調査のデータを分析すると、「生まれ」と学歴の関連は、多少の強弱の変動はありますが、すべての世代・性別において確認できます。たとえば、SESの主要な構成要素である「父親の学歴」を基準にすると、2015年時点の20代男性で「父親が大卒」層の80%が実際に大卒となりました。同じ20代男性で父親が大卒に満たない学歴で本人が大卒となったのは35%でした。
このように、父親が大卒かどうかといった粗い分類だけで浮き彫りになる結果の差は全世代・性別で確認されてきました。本人が変えることのできない「生まれ」によって人生の可能性が制限されている教育格差は、日本社会で育ったすべての人にとってひと事ではないのです。

身分の世襲は制度としては廃止されて久しいです。しかし「生まれ」によって教育成果である学歴に差があり、就業機会など社会において得られるさまざまな便益に格差がある実態は戦後も存在してきました。
具体的には、親が高学歴・高収入だと子が大卒になり、安定した正規雇用を得るという傾向があります。都市部で育つことも大学進学に有利なことが分かっています。「生まれ」が教育達成を介して職業や収入などと関連する以上、日本はいまだに「緩やかな身分社会」といえます。
もちろん、恵まれない家庭や地方出身でも社会的な成功を収める人たちはいますが、日本全体を対象とする調査から浮かび上がる全体の傾向として、「生まれ」によって人生の可能性が制限されてきた実態があるのです>(以上)

小生は、脳みそとガッツと金儲けに優れ女にモテた(女好きの)平民の父と、士族の家柄で俳句と書道を趣味として書道教室も開くなど面白おかしく&知的に暮らすのを良しとする母の間に生まれ、両親のDNAを塩梅良く引き継いだのだろう、大学まで行かせてもらった上に、好きなようにさせてくれたので運が良かった。自立心が旺盛だったから親に小遣いをもらうことなく家庭教師や郵便局のバイトなどでしのいでいたが、アカに染まって捕縛された末に、保釈金を払ってもらってシャバに戻ったのは痛恨の極みで、1年間家業を手伝って恩返ししたものだ。

松岡先生の「生まれによって人生は左右される」は概ねその通りだが、金太郎飴みたいに「みんな同じ」が良いわけではない。小生のようにチビで不細工な人もいれば、容姿端麗な美女美男もいる。欧州では1789年のフランス革命の頃「平等に憑かれた人々」が跋扈したそうだが、不自然な主義主張は結果的に激しい殺し合いになり、やがてはナポレオン独裁を招き戦争を招いてしまった。古人曰く「無理が通れば道理が引っ込む」、そこそこの「機会均等」あたりで良いのではないか。

世の中には「できる人」と「できない人」がいる。戦前の思想家・河上肇のように一世を風靡した「できる人」でもやがては「できない人」になったりするし、その逆にウダツの上がらなかった凡人がめきめき頭角を現すこともある。全盛期に「神輿は軽くてパーがいい」と偉そうに世間を睥睨していた人も晩年は鳴かず飛ばず・・・よくあるケースかも知れない。西日本新聞2024/2/16「永田健の時代ななめ読み 「『神輿(みこし)は軽くて』」の真実」から。曰く――
<海部俊樹元首相が亡くなった(1931/昭和6年 - 2022/令和4年、首相在任期間1989年8月 - 1991年11月)。湾岸戦争への対応に苦慮し、自民党の党内抗争に翻弄された首相だった。その海部氏を巡り、永田町には有名な伝説がある。海部氏が首相だった頃、竹下派の大幹部として自民党を牛耳っていた小沢一郎氏(現立憲民主党)が海部氏を評しこう言った。「神輿は軽くてパーがいい」>

尊大だなあと思うけれど、「勢いがあるときは言動を慎重に」「下り坂では大胆に出て再起を目指せ」という箴言はあってもよさそうだが、それを実践するのはとても難しそうだ。現実は艱難辛苦のときは大人しくし、上昇気流のときは偉そうにするのが人間のサガのようだが、現代版「おしん」(NHK朝ドラの最高傑作)のような方が今でもいると知ってびっくりした。矢野博丈・大創産業<ダイソー>創業者の「『100円の男』の哲学(21号、産経2024/2/6)」の「『仕方がない』 困難を受け止め、我慢する」は感動的だった。曰く、

<「仕方がない」は私の好きな言葉である。ただ、ポジティブな考えで頭を切り替えようという思いで出た言葉ではない。どうしようもない事態に直面したとき、私はあきらめの境地で「仕方がない、仕方がない」と自分に言い聞かせてきた。いつしかそれが転じて、「仕方がない、わしには運も能力もない。社員の方が偉いんじゃ」と事あるごとに自らを戒めるようになった。
困難に直面するのは、実は「成功の前触れ」ともいえる。野球選手がレギュラーを取るために“千本ノック”を受けるように、物事が好転するためには困難な経験を乗り越えねばならない。苦しさから逃げ出したい自分をなだめ、前向きにコツコツと頑張るしかない。「仕方がない」とつぶやくときは「もっと頑張れ」という神様からのシグナルと受け止めている>
我にも正義、彼にも正義、この世は正義と正義のぶつかり合いで「仕方がない」と思うことは日常茶飯事だが、そこで諦めずに明日を信じて頑張る、踏ん張る・・・矢野博丈氏のような同志がいるのだ、俺は孤立しているわけではない、と大いに勇気づけられた。

産経の「JAPAN Forward 日本を発信」2024/2/12「ウクライナでの戦争はいつまで続くのか」は内藤泰朗編集長の論稿。これにもパワーをもらった。小生は、1945年以降の戦後体制が連日震度5のように揺れており、明日が読みにくい、何となく不安、もしかしたらガチンコの第3次世界大戦が始まりそうな気配で、それにもかかわらず日本はつまらぬ内輪の政争で連日ドタバタ、あまりにも民度が低くてウンザリしているが、危機感を持っている“同志”を得た感じだ。以下転載する。

<ロシアがウクライナへの大規模な侵略を開始して2月24日で丸2年。戦争が3年目に突入するのを前に、さまざまな人から質問される。先日も、世界情勢に精通する欧米の外交官と直接、意見交換した際、いきなり「ロシアは欧州に攻め込むと思うか」と意見を求められた。この戦争が今後、何をもたらし、いつ、どのような形で終息するのか、世界は必死に探ろうとしているのだ。
手前味噌で恐縮だが、英語ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)は、ロシア軍侵攻の3カ月余り前、「ロシアは2022(北京)冬季五輪に合わせてウクライナ東部に侵攻するだろう」と予測する記事を世界に発信した。本欄でもその後、「今冬、中露に最大警戒を」との見出しで、JFの記事を紹介し、警鐘を鳴らすコラムを掲載した。

ただ当時は、専門家のほとんどがロシア軍の大規模侵攻はないと踏んでいた。欧米への接近を図る同じスラブの兄弟国ウクライナに、ロシアが激しい憤りを抱いていることを、彼らは知っていたが、「ロシアが欧米と対立し、多くを失ってまでウクライナに軍事侵攻はしない」と考えていたからだ。
なぜ、そうならず、JFの予測が的中したのか―。欧米の合理的な判断による予測に対し、JFは、ロシアの多数派を占める民族主義的な保守が世界をどのようにとらえ、何をしたいのか、ロシア側の論理で推論した。プーチン露大統領に聞いたわけではない。
侵攻を予測しても、戦争の終息時期やロシアによる欧州侵攻の可能性については正直、見通せない。だから、先ほどの外交官の質問には、記者(内藤)がかつて本紙モスクワ特派員として10年以上駐在し、強く感じた以下のような不安を伝えた。

ロシアの民族主義者たちは、欧米によってつくられた現在の世界を誤りだと否定し、いずれ自壊するか、破壊されるべきだと考えている。それでも、世界最大の国土と資源を持つロシアは生き残り、世界の救世主として神の使命を果たすことになる―。
少なくとも、彼らはそう信じているのだ。第三次大戦を望んでいる人たちもいる。なぜなら、欧米中心の世界が破壊された後、ロシアが世界を牛耳ることになると思っているからだ。
こうした考え方をする人とは当然、議論がかみ合わない。欧米の合理的な考え方では、ロシアの行動は予測できないだろう。

ウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏は、本紙への寄稿「最大の原因はプーチン氏にあらず」の中で、「ロシアを論じるうえでは、ロシア国民の中の帝国主義的な意識を無視してはならない」と指摘していた。その通りである・・・

2月19日には東京で、ウクライナ復興支援に向けた政府主催の会議が開かれる。ウクライナでの戦争は、いつ終わるのか、まだわからないが、必ずや終わるときがやってくる。
ウクライナ支援に積極的になれない国もあるが、支援しなければいずれウクライナは敗北を喫することになり、世界は新たな帝国主義の時代を迎える危険がある。日本は、その危険を世界に発信する拠点となることで、新帝国主義の勃興を阻止しなければならない。JFは、日本の動向を世界に伝えていきたい>(以上)

たとえ蟷螂の斧であっても千匹、万匹、一億匹となれば獰猛なクマも逃げ出すだろう。安西先生曰く「諦めたらそこで終わり」、同志諸君、中露北や我らの内なる敵を、それぞれの“武器”で叩くべし。国家として軍事力の強化をさらに進めるのは当然だが、不買運動、貿易縮小、進出企業の撤退、旅行自粛など民間でもできることはある。同志諸君、戦争は始まっているのだ、歯を食いしばって頑張ろう!
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*読者諸兄の皆さま、御意見を! ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
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