今 その翼は
2006.9.15
時が満ちるのを待ち続けた。
雨の日も、雪の日も、嵐の日も。
強い太陽の光にさらされて、
夜の冷たい風にさらされて、
逃げもせず、隠れもせず、ただ静かに。
夜明け空に大きな虹が架かったその日、
朝陽を浴びた君は、何かを決めたように
少し微笑んだようだった。
たったひとり、何も持たず行くんだね。
さようなら、と君は言った。
さようなら、ありがとう、と。
大きく一度地面を蹴って羽ばたいたら、
もう二度とこの場所には戻らない。
君は帰らない。
この瞬間を待ち続けた君。
ただ見送ることしか出来ない僕。
迷うことなく羽ばたいた君の翼は、
陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
僕は泣いていたかもしれない。
君のあまりの美しさに。
君のあまりの強さに。
そして今、僕の翼を広げよう。
このボロボロの翼を。
君が見た世界を、君が信じた世界を。
僕は僕の力で、
何も持たずに羽ばたこう。
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