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遅刻を咎められ慌てるサンタクロース

前回のお話。
保護猫を譲り受けようと保護団体に応募し、瞬速でフラれてしまったBBAR。
やけを起こして「動物愛護がなんぼのもんじゃい!」とペットショップに目標を変更した。
隣県のペットショップに好みの猫を発見したBBARであったが、果たして猫との生活を取り戻す事ができるのだろうか!?

「え?その猫が欲しいの?」
長女の低い声には呆れと若干の不満が色づいていた。 
あー、嫌なんじゃのー……。

BBARが見つけたのはラグドールとノルウェージャンフォレストキャットのハーフのメス猫で、灰色の長毛モフ猫だった。
なんとなく、長女は嫌がりそうな気はしていた。
次女はモコモコ長毛種が好きだが、長女はスッキリ短毛種派。
しかも、選べるのなら白猫が黒猫が良いという、実にシックでモダンなセンスの持ち主だ。
長い灰色の毛の猫に、長女はドン引いていた。

「行って会ってみたら可愛いかも……」とモゴモゴ説得を試みるも「会って可愛くて連れて帰りたくなるのはママでしょ?」とド正論でのカウンターKO。
ペットは家族の問題、私が1人で暴走してはならぬ(すでに空回り気味ではあるが)。

そんな事を話していた25日クリスマスの朝。
次女がこの世の終わりフェイスで部屋から出てきた。
「ジャガイモと石炭すらない……」
そう言って自嘲気味に笑ったかと思ったら静かに嗚咽をあげはじめた。

ジャガイモと石炭とは、クリスマスの日に黒いサンタから悪い子に配られると言われる逆プレゼントである。
そう、この日は次女の元にプレゼントは無かったのだ。

我が家では毎年恒例で娘達にサンタへ手紙を書かせ、クッキーとミルクを添えてサンタへお願いをしていた。
長女は反抗期の時に夫と喧嘩をした際、売り言葉に買い言葉で父親からサンタは俺と暴露されてしまい真実を知っているのだが、次女はどうやら中2の今もガチでサンタの存在を信じている様子。

BBARは次女はとっくに真実に気づいているが、親の面目を保つ為に愚かな嘘に付き合ってくれてるんだろうと思っていたのだが、どうやら本気の本気でガチだったらしい。

ちなみに、プレゼントを用意しなかったわけではない。
次女は今回、学校のテスト勉強と課題提出や音楽コンクールに忙しく、サンタへのお願いの儀式を出来ずにいた。
クッキーとミルクを用意は出来なかったが、なんとか手紙は書いたようで、それがBBARサンタに届いたのが23日の朝。
手紙には、手紙を書くのが遅くなった事の謝罪と欲しいプレゼントが第五希望まで記載してあった。

BBARはすぐさまamazon様にプレゼントの注文をすべくスマホを開いたが、第一希望はすでに売り切れ。
第二希望が24日14時〜16時指定であったので、急いでポチったのだ。
だが、amazon様は指定の時間にはいらっしゃらなかった。
どうやら発送が遅れているようで、日時指定は26日の午前中に変更されていた。
クリスマス当日にすら届かない。

それがわかってからなんの策も講じなかったのは、これをキッカケにサンタシステムが終了になるだろうと思ってしまったからだ。
次女「プレゼントないよー。サンタ来なかったー」
親「もうそろそろ子どもじゃなく大人扱いなんじゃないの?」
次女「えぇー!?〇〇欲しかったのにー!」
親「じゃあ、ママがプレゼントしてあげるよ」
……という流れを想定していた。
が、現実はピュアガールが肩をプルプル震わせながらシクシク泣いている。
「マ…ママが代わりに買ってあげようか?」用意していたセリフも「そういう事じゃない」とバッサリ袈裟斬り。

ど、ど、どうしよう……

部屋に入って布団の中で泣き続ける次女。
BBARが大脳皮質フル回転させて編み出した対処法は、サンタからの詫び状を書く事だった。
長女に相談してイオンにクリスマスカードを買いに行き、スタバでBBARサンタは詫び状を書いた。
筆跡は毎年娘達へサンタからのメッセージカードに書いていたのと同じ物だ。
プレゼント遅配の理由は袋に穴が空いていて落としてしまったから探している事にした。
長女の提案で詫び菓子としてクッキーを一枚添える事にした。
サンタの奥さんが作ったようなハンドメイド風のチョコチップクッキーをチョイスした。

あとは、どうやって布団巻貝に引きこもっている次女にこの手紙を読ませるか…………

作戦はこうである。
BBARが手紙を階下の棚にセットし、和室にはおやつを設置。
アリバイ工作の為にキッチンで皿を洗っている。(ずっと家事してましたアピール)
長女が次女に「一緒に原神やろう!おやつあるから一階に行こう!」と誘い、次女が先に階段を降りるよう誘導。
階下で手紙を見つけた次女は大喜び。
世界は平和になった。

くっくっく。イケる!完璧だぜ!

しかし………次女は俯いて歩いていたため手紙に気づかず和室にゴール。
サイレントに慌てふためく長女にBBARは口パクとボディーランゲージで応じる。
『慌てるなムスメ軍曹!まだ勝機はある!ここは一時ランチタイムとし、食後のチャンスに賭けるのだ。諦めたら、そこで試合終了だぞ!」
『イエッサー!マミー将軍!』

食後、少々ゲームをしたが、やはり次女はあまり気乗りしていない。
誘われて仕方なくオーラが和室に充満している。
BBARは次なる作戦に移る事にした。
お手伝いと称して片付けを命じたのだ。
大きな荷物が来るから玄関周辺を片付けておいて欲しいと。
これで玄関横にある階段付近の手紙にも気づくはず!

「ママー。これでいい?」
次女は俯き体勢を崩す事なく、玄関に脱ぎ捨てられていた靴を片付けて終了してしまった。
ちょっとは目線を上げろ〜‼︎

うぬぬ、こうなったらファイナルウェポンじゃ。
「その棚の上も片付けて」
これはバレる。絶対にママ怪しいってなる。
私に言われるがまま棚に目線を移した次女はようやく手紙を発見。
「なんだろう?私の名前かいてある」
BBARは最後の悪あがきに「なに?DM?DMだったら捨ててね」とすっとぼけた。
封筒を開けて手紙を読む次女。
すると……次女はニマニマと顔を綻ばせながら「サンタさんからだった」と言った。

あ、まだ信じてる。

悪い子認定された訳じゃなかったと納得した次女はサンタからの手紙を大事そうに胸に抱えて、足取り軽く部屋に入って行った。

次なる作戦行動はamazon軍が到着次第決行である。

………………あ、保護猫の話どこいった?

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