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『四月物語』


 岩井俊二監督の作品を好きになったのは、母に連れられて『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観に行ったことがきっかけだった。確か12歳の時だった。
 最初は何の話なのか頭の中でまとまりがつかなかったのだが、ずっと七海と真白の二人のドレス姿が頭から離れなかった。授業中も、ドラマを観ている時も、本を読んでいる時も、常に2人の姿が私の中にいた。それが嫌じゃなくて、初めて自分の好きなものを得られた気がしたのだ。私はこの感情と出会ってから、私の好きなものはこれだ、守らなくちゃいけないものだと大切にしてきた。

 私は雨が昔から好きだった。春が昔から好きだった。雨は、湿った空気と冷たい水が自分も呼応しているようで好きだから。煙たがられてるところが愛おしいから。雨女だから。
春は、3月で一区切りしてしまう喪失感と新生活でうきうきする気持ち、この相反する気持ちのざわつきが刺激的だから。ソワソワして落ち着かないけれど、こんな感情は春でしか知らない。気温が温かなるのも好きな理由の一つだ。花が芽吹いて、風が温かく心地よい風になって、落ち着かない気持ちを癒してくれる。

 私の好きな春が詰まった作品だった。特に最後のシーン。雨がもっと好きになった。

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