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建設の頓珍漢①【毎週ショートショートnote裏お題】

わたくしが生まれ育った商店街は、月並みで、たいへん落ち着いた風景をしておりますの。

けれど、あなたがその気になって目を凝らせば、至る所に隠れている建築の頓珍漢に気づくはずですわ。

超芸術トマソン――無用の長物と化した建造物たちは、前衛美術家の赤瀬川原平の手によって、役立たずの元大リーガー四番打者ゲーリー・トマソンと同じ呼び名を与えられましたの。詳しくは、Wikipediaを参照してくださいませ。

登って降りるだけの階段。

建物の二階の壁面に現れる突如あらわれるドア。

十数メートル離れた二つのビルの屋上を橋渡しする一本の鋼材。通称、鉄骨渡り。

開かずの賽銭箱、沼。

常連たちの形見を並べることで、通りに面したショーウィンドウが仏壇と化している眼鏡店

そんな魅力的な超芸術たちに、いま存続の危機が迫っています(真顔)。

商店街のある一帯を取り壊して再開発し、タワーマンションとショッピングモールを建設する計画が立ち上がったそうですわ!


(410字)
たらはかに(田原にか)さまの企画への参加作品です。

この作品が気になった方は、こちらのマガジンもご覧ください。


雑記:

裏お題「建設の頓珍漢」に対して、頓珍漢な建設を列挙するという形で応えました。

それだけだと工夫が足りないので、語り手に濃いキャラの水島菫さんを採用しました。眼鏡(物体)同士のBLを描いたり、西川兄妹の過去を元にグリム童話風の物語を書いたりと、作者である私の想像以上の活躍をされている登場人物です。言葉遣いが独特なので、書いていて大変なのですが、「毎週ショートショートnoteは本当に良い執筆練習になる」と思って頑張っています。

あとは、超芸術トマソン、鉄骨渡り、パチンコ沼など、いろいろなネタをできるだけ盛り込みました。小説中にWikipediaへのリンクを貼るというギャグも試してみました。

一編のショートショートとしてはコメディですが、長編小説としては、物語の舞台である商店街が存続の危機に晒されるというシリアスな急展開です。今後の展開としては、

  1. 再開発計画は単なる勘違いで、すぐに平和な日常に戻る(漫画の単行本でよくあるタイプの展開)

  2. 開発計画が実行に移され、消えゆく商店街を見守る悲しい展開

  3. 商店街の人々が一致団結して、開発計画に反対し、商店街を守り切る展開

などが考えられます。勘のいい読者の方は既にお気づきかもしれませんが、上の三つの展開のどれにもならない予定です。古い体質の商店街は存続しませんし、ショッピングモール&タワーマンションも建ちません。しかし、ハッピーエンドにはするつもりです。


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