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小説を書く前に

 新しい小説を書かなければ。
 意気込んでパソコンの前に座っても貧乏揺すりが関の山。渇水期に入っていると頭に何も降って来ない。時間が過ぎるといつの間にか主旨が変わってyoutubeでお気に入りの曲を聴いていたり。
 小説と離れるほど、アイデアが降ってくるような気がする。ビール片手に山道を歩いていたり、湯船に浸かってのんびりしていたりする、その時だ。核となる部分が決まると頭の中に沈んでいた要素と次々に結び付く。

 小説の内容が決まると人称の問題が浮上する。自分の中にあるテンプレートに従えば、小さな話は主人公視点による一人称となる。逆に大きな話や入り組んだ内容は三人称。個人の視点では補えないこともあって。
 二人称で小説を書くことはまれである。主人公の姿を隠したい時に使った。短編の二人の剣がそれに当たる。

 一人称と三人称は時に迷うことがある。話の内容が小さいとは言えず、大きいとも言えない場合。どちらでも良さそうに思えるのだが、書いている間に人称問題で詰まると困り果ててしまう。
 そのような時に使うのが三人称一元視点、または三人称一元描写と呼ばれる書き方になる。
 ややこしい呼び名ではあるが、書き方としては簡単で三人称の中に一人称が混ざっていると思えばいい。例として挙げてみよう。

 ベッドで横向きに寝ていた鈴木春香は薄っすらと目を開けた。そのままの姿でカーテンレールに吊るしてあった黒いスーツをぼんやりと眺める。
 ――バイトじゃなくて、今日から正社員として働くんだっけ。
 目に活力が宿り、開いていた掌をギュッと握り締めた。

 ――ではなくて()を使ってもいい。三人称と一人称のいいとこどりで懐が深い。ゆえに使う機会は多いと思う。

 これは自分用のテンプレートなので無理に当て嵌める必要はないし、人称を制約と思わないで自由に書いてもいいだろう。その話の内容に合った文体を心掛け、通して読んでも引っ掛かる箇所がなければ、それで十分。

 なんちゃって創作論はここまでにして、自分も小説を書かないと。
 アイデアよ、降って来い!

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