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翠子さんの日常は何かおかしい

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近未来の長編小説になります。 酒呑童子と八尺様の間に生まれた翠子さんが、 怪異を引き寄せては無双状態になります。 ギャグテイストの波乱の日常をお楽しみください。
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2024年5月の記事一覧

『翠子さんの日常は何かおかしい』第23話 綺麗なお姉さん

 青々とした畳に黒檀の座卓が置かれていた。全体が艶やかに光り、重厚感を醸し出す。紺のスー…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第24話 バウンティハンター

 脇目を振らず、時田翠子はワンルームマンションに帰宅した。手早くスーツを脱いで黒を基調に…

黒羽カラス
1か月前
3

『翠子さんの日常は何かおかしい』第25話 疑念

 ワンルームマンションに戻ると翠子は穏やかな顔で緑茶を淹れる。買い置きの袋を破って木目の…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第26話 共同生活

 チュンと雀が囀った瞬間、時田赤子はぱっちりと目を開けた。床に敷いた布団から抜け出すと横…

黒羽カラス
1か月前
2

『翠子さんの日常は何かおかしい』第27話 Aチーム

 日が沈んで間もない頃、時田翠子は最寄りの駅に到着した。軽い足取りでホームを突き進み、改…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第28話 戦いのあとに

 暗い空に丸くて白い穴が空いている。誰もが錯覚を起こすような満月の夜。繁華街から少し外れ…

黒羽カラス
1か月前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第29話 力の秘密(その1)

 パジャマ姿の時田翠子は満足げな笑みで上体を後ろに傾ける。ベッドの縁に背を預けると縮こまっていた両脚を伸ばした。吐く息に合わせて顔が仰け反り、敷布団の上に後頭部を載せた。  弱々しい手で腹部のボタンを外す。役目を終えた手はパタリと落ちて全身の力が抜けた。  洗い物をしていた時田赤子が戻ってきた。身に纏う着物には暖色系の菊が咲き誇る。炊事に邪魔な袂は襷掛けによってすっきりと纏められていた。 「姉様、味はどうです?」 「美味し過ぎた結果が、この姿……まさか朝食に肉厚のステーキが出

『翠子さんの日常は何かおかしい』第30話 力の秘密(その2)

 通りを行き交う人々は一目でギョッとする。自ら道の端に寄った。  道の真ん中を時田翠子が…

黒羽カラス
1か月前

『翠子さんの日常は何かおかしい』第31話 誘い

 時田翠子は音を立てないようにしてスーツを着た。出掛ける間際、心配そうな顔を時田赤子に向…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第32話 玉藻前の世界(その1)

 マンションの一室で時田翠子は着替えを済ませた。伸縮性のある黒いタンクトップに同色のスパ…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第33話 玉藻前の世界(その2)

 仄白く光る九角形の床に三人は転移した。一辺に一基の鳥居が立ち、全てが黒い。  女性はゆ…

黒羽カラス
1か月前
1

『翠子さんの日常は何かおかしい』第34話 玉藻前の世界(その3)

 提灯や灯籠に街が照らし出された。眺めていた三人の前を人々が横切る。腰に太刀をぶら下げた…

黒羽カラス
1か月前
2

『翠子さんの日常は何かおかしい』第35話 玉藻前の世界(その4)

 背後から迫る危機を引き離し、三人は入り組んだ小路を駆け抜ける。 「酒のあとの走り込みは…

黒羽カラス
1か月前
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『翠子さんの日常は何かおかしい』第36話 玉藻前の世界(その5)

 小路は緩やかに曲がり、次第に幅が狭くなる。翠子は走る速度を上げて先頭に出た。 「このワンピースはいかんぞ」  女性はずり落ちる虎柄のパンツを胸まで引っ張り上げた。両手を離すことが出来ず、翠子の真後ろに付けた。 「い、息が、上がる、なんでだ……」  自慢のリーゼントを乱し、竜司は必死の形相で二人を追い掛ける。  女性はくるりと向きを変えた。後ろ向きの状態でにこやかに笑う。 「久しぶりの身体に手こずっているようだな」 「こんなに、キツイとは、思いません、でした」 「小僧、前線に