美術館で椅子に身を預けた。元気になった。
「どこかにゆっくり座りたい…」
師も走る。年末の午後2時半。冬の太陽はうすく弱々しく、すでに傾いていました。
駅前の空気はひんやりとして寂しい。人々は誰もが早足に歩いています。
少し前にあった出来事のせいで、私は打ちひしがれていました。
そのために冷えて固まった心は、なかなか元に戻りません。
こんな時にカフェはだめ。狭いカウンター席でWi-Fiを拾っていても、自分を取り戻すことができないからです。
「どこかにゆっくり座りたい…」
私はあの場所へ向かいました。
北浦和に降りたらここへ
駅西口から徒歩5分。北浦和公園の中にあるのは埼玉県立近代美術館です。
園内には、まだ金色の銀杏が残っていました。
奥にはちょっとした舞台のような噴水広場があり、定時ごとに噴水が踊ります。
埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館は、建築家の黒川紀章氏が初めて設計をした美術館です。
黒川氏が設計した美術館でほかに思いつくのは、六本木の国立新美術館。
埼玉県立近代美術館の外観を見上げると、窓の曲線や色合が、新美と似たものがあるなあと思いました。
「今日座っていいよ」。寛げる椅子がたくさんある
埼玉県立近美では、館内のあちこちに椅子が配置され、そのどれもがユニークで美しい作品です。ついつい触れて愛でたくなります。
これらはみんな「今日座れる椅子」として公開されています。
3階。右の巨大な椅子によじ登ろうとしましたが、さすがに一人でやるのは恥ずかしい。二人でも恥ずかしいが。やりたかったな。
ところで、あれ、左の椅子…いいわね!
キャラになりきる
「ネルソン・マシュマロ・ソファ」です。見ているだけでウキウキになります。
さて、ここで問題です。
問い : ここで、私は何になりきっているでしょう。
ヒント : 「アーニャ、ピーナッツが好き」
答え : 『SPY×FAMILY』2巻。表紙に椅子が描かれています。
アニメは滅多に見ませんが、アーニャは好きです。
真っ赤なくちびるソファ『ボッカ』は、ライブラリー内に来ていました。
美術館の力。アートの力。
美術館にいたのは1時間ほど。ユニークで楽しいたくさんの椅子は、私の目を和ませ、身体をたっぷりと癒してくれました。
ここにしばらく身を置いていると、私の体はだんだんと自分の体温を思い出したようです。
それ同時に、固まっていた心がゆるりとほどけ、元に戻ったのが分かります。
美術館の力はとても大きい。人間の生活に必要なのだなあと感じた1日でした。
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