ただ、抱きしめる

 幼い頃の記憶。
 
 違うんだよ、それ。
ただ、抱きしめてくれたらストレートに伝わるのに。それだけでいいのに…。
(そのへんが、下手なんだよな(笑) …心の声)

 あれこれ長々と、感情を言葉にして伝えてくる母に、そう感じた記憶がある。

 どんな場面だったのかは覚えていないけれど。
 
 教室で一緒に学んでいる時に、たまたまその子と脚がくっついたら、自分からは離さないようにしている。
 (私は、あなたが好きだよ。だから、くっついていていいよ)
 安心して自分から離すまでどのくらいくっつけているのか、それを確かめている。
 その子が自分から離すその時が、気持ちを放した時。
(ああ、満足できたのかな)
と、感じる。

 
 隣り合って動画を見ていた時、そっとA ちゃんの背中に手を当てていた。
 娯楽の笑える動画だった。

 一緒に楽しむはずが、ナゼか
私の目に涙がジワジワとこみ上げてきた。
 Aちゃんの中にある悲しみが、背中に当てた手を通じて、私の涙に結晶化したような気がした。
 

 ちょうど私のお腹に頭の位置があり、顔をうずめるように抱っこされに来るB君。
 息が出来ないのではないかと思うくらいくっつけてくる。
 こんなにも人にまっすぐに飛び込める心、私にあるだろうか。過去にもあっただろうか。

 いつも子どもたちは、体を通して教えてくれる。
 

 そういえば、パニックで暴れる子を止める時に、一度も怪我をしたことがない。
 いつも後ろからピッタリくっつき、穏やかな気持ちを伝染させるつもりで
(大丈夫、大丈夫) 
あなたを叱るために押さえつけるつもりはないよ、と包み込むだけ。
 動物脳が収まるまで…

ただ、抱きしめる。
 

 

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