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漫画『おひとりさまホテル』と『家が好きな人』の感想


たまたまなのですが
日本のあちこちの様々なホテルにおひとりさまで泊まり、素敵なところを感じる人たちの漫画と

いろんなひとり暮らしをしてるいろんな人が、自分の家でそれぞれにのんびりする漫画を読みました

ホテルに出かける話と、自宅にいる話なので、真逆の個性があるそれぞれの作品だったのですが、そこ以外にも合わせて感想を書きたく思うところがあったので、2本立てでご紹介します


『おひとりさまホテル』
原案  まろ(おひとりさま。)漫画 マキヒロチ 

2023年9月時点で2巻出てます

ホテルの設計やデザインを手がける会社に所属する個性豊かな面々が、 様々なホテルにおひとりさまで宿泊する模様を描いたオムニバス式の群像劇にして、詳細なホテルのレポート漫画です
作中に登場するホテルはすべて日本国内に実在しており、実際に泊まることが可能です
というか、どこのホテルにも泊まりたい! と切望してしまうほど、ホテルという場所の魅力が伝わる漫画づくりをされていて、ホテルに泊まることそのものが旅の目的として出かけた経験のない人間には、主役はホテルそのものであるこの作品が、もはやファンタジーのように感じられました
登場するホテルは、都心のいわゆる高級ホテルから、観光地の老舗のホテル、沖縄のリゾートホテルに、名古屋のテレビ塔をリノベーションしたホテルまで、千差万別です
ホテルの外観からロビーでのチェックイン、ホテル周辺の散策の後に、自分の部屋でのお風呂、寝室でちょっとうたた寝してからルームサービスの食事…
そんな情景をひとりじめする贅沢さを、とびきりの作画で伝えてくれます
個人的な推し回は、伊東のハトヤとサンハトヤの回です
あの大宴会場のショーや有名な回廊の作画が、ほんとに素晴らしかったです

『家が好きな人』 井田千秋

1巻のみ完結です

5人の人物が、それぞれ自分のおうちで過ごす日々、その風景を切り取った一枚絵であったり、漫画であったり、絵本のような描写であったりと様々な様式で、緩やか~に流れるおうち時間が感じ取れる作品です
それぞれのご自宅が個性がありつつも、奇抜すぎず、整然と綺麗に設えた部屋ではなく、かといってごちゃごちゃと散らかってもいない、
いい感じの雑然とした、そこに暮らしている人がいると感じられるお部屋の描写が、何とも雰囲気がよい作品です
あと、ちょいちょい出てくるおうちごはんが、凄くおいしそう! ポテサラトースト素晴らしい!
そして作中の人物のエピソードがもし映画だったら? の想像図ポスターのデザインが可愛くて素敵です
あと、それぞれのお部屋にはクマちゃんのモチーフが必ず登場しているんですが、それを探すのも楽しいです


これら2作を読んで思ったこと(ここからネタバレ)

という訳で、どちらも素敵な作品でした
片方はホテル、片方は自宅
どちらもこの場所はいいなあ~っていう、ものすごくおおらかにまとめると、そういうお話です

しかし家の方に無くて、ホテルの方にはあった要素がどうしても引っ掛かっています
それは、『おひとりさまホテル』には登場人物がまあまあ嫌な目に遭うシーンが各話にほぼ必ずある事です
そして、嫌な目にあったものの、ホテルのお部屋の設えやスタッフさんのサービス、お料理の美味しさ、ホテルの部屋からの眺望などに癒されていく…という筋書きが多いんですね
その嫌な目が、何とも身近に感じられるリアルなイヤさのある嫌な目なものですから、個人的に読んでいてホテルの素晴らしさよりそのイヤさに感情移入してしまって、実はホテルに集中しにくいところがありました
で、それだけだったらまだ良いのですが、ホテルに泊まるメインの人物自体が腹立つ性格と言動をしているのが、更に気になった所でした!
(ちなみに腹立つのは表紙のボブヘアの女性です)
腹立つところをざっとまとめると

・大学の頃の友人の自宅に低額な家賃で間借りしているが、家事労働などはほとんど担っていない
・昔の恋人(現在は既婚者)に恋心を再燃させてしまい情緒不安定になって、同居人や会社の同僚にそのしんどさを酔って泣いてつらつらと話す
・ホテルの宿泊先で同居人から家の管理についての連絡を受けると、せっかくの夜なのにやめてよ~と疎んじる
・それを同居人に責められると、そんな正論言わなくたっていいじゃん…と本気で落ち込む

こうした内容です
もうそんな女追い出せばいいじゃないですか! って思って、同居人さんに肩入れしちゃうんです
この漫画はホテルの素敵なところを紹介するのがメインなのに、どうしてもこのホテルに泊まっとる女がイライラしちゃうんですよ!
一方、『家が好きな人』はそんな心をざらつかせてくる登場人物はおらず、ゆるゆると優しい空間が流れています
しかしそうするとですね
こうして記事にしたり人に話したりする際には、良かったとこよりもイヤな奴が出てきた! という部分を口を極めて語ってしまいます

というわけで
人に安心してすすめるなら『家が好きな人』
友人などと議論のネタにするなら『おひとりさまホテル』
どちらの作品もおすすめです


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