豪雪の山里から ~ この地で出会った「推し」
こんにちは。ようこそ
さて最近の言葉、「推し」ってよく耳にするけど、使い慣れない
どのくらいの熱量だったら推しだと公言できるのかな?
昔からある「一推し」って言葉から「一」が抜けたから一番じゃなくても良いってことか?
まあ、その辺の解釈は置いといて
魚沼に住んで、たまたま巡り合って「すごくいいね♬」って感じた作品があります
魚沼在住の人でも知らないようなマイナーな人もいますが
そんな個人的「推し」の残した作品について紹介しておこうと思います
地元じゃメジャーな芸術家
石川雲蝶(いしかわうんちょう)は、
幕末から明治にかけて新潟で活躍した芸術家で、
木彫り彫刻の他、襖絵や漆喰塗りなど、
県内随所に膨大な数の作品を残しています
中でも絶対見ておきたいのは「西福寺開山堂」
もっと全国的に注目されてもおかしくない名所と
思うんだけど
開山堂に一歩踏み入って振り仰げば、天井一面に
広がる彫刻が、バーン!と飛び込んでくる
一瞬言葉を失うほどの大迫力にもう圧倒されます
腰を落ち着けて(と言っても上を見上げながらですが)
じっくりと眺めれば、遠近法をつかい
精巧に掘られた人物や動物たちの像は、
どれも表情豊かで生き生きとして
今にも動き出しそうです
特に良いと思うのは、リアルな技法だけでなく
独特のユーモアを感じさせる表現で
偉そうに格式張ってないところです
公式には「日本のミケランジェロ」と例えられてるけど、
作風からしたら「彫刻界の北斎」といった方が
しっくりくるような気もします
難点は、上を見すぎて首が痛くなること(笑)
これは魚沼に来たらぜったい外せない、一押しです!
魚沼で人生を全うした農民詩人
岡部清(おかべきよし)さんは、惜しくも2023年8月に
他界されました
魚沼の中でも特に奥深い、守門岳の麓にある二分(にぶ)という
小さな集落に暮らし、農業や炭焼きのかたわら
詩を書いた人です
たまたま自費出版の詩集「山のムラから」を
読ませていただいて、強烈なインパクトを与えられました
我が父は生前、詩を趣味にし、谷川俊太郎氏とも親交があって
自費出版の詩集を何冊か出してもいました
ですが私自身は、詩が好きなわけでも詩心があるわけでもなく
自分から詩集を開くなど考えたこともありませんでした
そんな自分なので、詩の良し悪しは分かりません
詩として表現された内容に感銘を受けたのです
岡部さんの詩の題材は、
美しい調べや格好つけた人生訓なんかではありません
それは、戦後の開拓農民が、地べたに這いつくばって
辛酸をなめるような厳しい暮らしぶりや
都会に出稼ぎに出た男の虚しさと、田舎に残って
家と子らを守る女の心細さなど、
世の中の発展とは裏腹に、過疎化が進む農村のリアルな人間の感情と、
社会に向けて投げかけられた疑問符でした
自分はそんなのとは、無縁の世界にいました
少なくとも農業にかかわるまでは、ずっと…
我々の食文化を支えてきた先人達の苦労も知らず
のほほんと生きてきましたのです
そんな無知な自分の頭をガツンと一発殴られたようで
申し訳のない気持ちでいっぱいになりました
無知・無関心は罪だったかもしれません
読んだからって元気や幸せをもらえる詩じゃないけれど
忘れちゃいけない大切なことを教えてくれる詩です
多くの人に読んでもらいたい
そう思える詩集でした
雪の表情を描き分ける無名の画家
俵山庸作(たわらやまようさく)さんは、魚沼出身の画家ですが
知る人は少ないようです
ネット検索してもほぼヒットしません
それぐらい無名の画家です
ですが、市立図書館で手にした自費出版の画集を見て
一瞬でファンになりました
彼の作品の多くは魚沼の雪景色です
雪景色と言っても、ただの白一色ではなく
その表情は実にさまざまです
例えば上の絵は、魚沼らしい残雪期の山の風景です
奥の高い山はまだ冬の様相ですが
手前にある低山の雪はしだいに融けて重く
山肌は雪と地面のマーブル模様になっています
杉の木々の中には、ちらほらと芽吹きが見えるのは
ブナでしょうか?
まさに豪雪の魚沼ならではという風景画で、
春の息吹を感じさせます
残雪の風景の他にも、軽くて柔らかい新雪、
延々と降り続く吹雪、雪に埋もれた集落、
そして雪の道に残る車の轍など
どれも雪の質感、風や温度までも伝わってきそうです
季節毎さまざまな表情を見せる雪の風景を切り取り、
これほど見事に描き分けられたのを見た覚えがありません
きっとこの人は、魚沼の雪景色が大好きだったんだな~
ということが丁寧に描かれた絵から伝わってきます
聞くところによると、この故人の作品の多くは
知人友人などの手に渡って、その後はどこにあるか
分からないそうです
原画の何枚かは、彼が生まれた地域の役所で
観ることができましたが、それ以外の絵は
どこへ行ってしまったのやら…残念です
まったくの私的な魚沼の「推し」をご紹介しました
いつか皆さんの眼にふれる機会が訪れることを願いつつ
ではでは
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