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" ととのう "を知った特別な宿。

ここ2,3年ほどずっと訪れたかった宿へ
ついに宿泊してきました。

それは奈良県山添村にある
" ume, yamazoe " さん。

「ちょっと不自由なホテル」をコンセプトに掲げるこちらの宿がある山添村は
奈良県と京都府と三重県のちょうど県境あたりに位置していて、
山間の村ですが意外とアクセスは悪くない。

ume という名前は、大和言葉の
う=うまれる め=めざめる
それから元々村長さんの住居だったという敷地内に
大切にされてきた梅の木があったことにもご縁を感じ名付けたそうです。

1日3組限定のこのお宿にて
そんな由来通り、
うまれて、めざめる感覚を味わう特別な時間を過ごしました。

大きく開かれたお部屋の窓からは村を見渡すことができ、
車の音よりも鳥の声がよく聞こえる。
お食事は村の特産品がふんだんに使われていて優しい味わい。

フィンランド式のサウナで心地よく暖まり、
自然と溶け合う感覚に浸れる外気浴を堪能する。

" 日常 "から離れてホテルに泊まりにきたはずなのに
その" 日常 "をこんなに遠く感じたことはなかった。
そんな心も身体もととのう感覚を味わえた経験を振り返りたいと思います。



11月のそんなに寒くない日。14時30分。
送迎をお願いしていたので、待ち合わせ場所の三重県の名張駅に到着しました。
あいにくの雨模様だけれど、おかげでそれほど寒くはない。
お宿まで駅から車で約20分ほど。
車中では送迎のスタッフさんがこの辺りの地形の話や有名なものの紹介などをしてくれ、
もう始まっているんだ、と心躍らせていると、
最後は急勾配で細い道をするりとのぼり、
あっという間にお宿に到着しました。

お宿を見上げる

120年以上前に建てられたもとは村長さんのお家を
リノベーションして使っているという外観から
長く時間を過ごしてきた空気感を感じます。
中に入ると立派な梁などを残しつつも、
開放的な現代の意匠へ心地よくリノベーションされていました。

元々古民家やリノベーションなどの建築物を見るのも好きで、
こちらも今回の楽しみの1つです。

おしゃれな内装に興奮を抑えられずソワソワしていると
ウエルカムドリンクとお菓子が運ばれてきました。

あつらえているお花はオーナーさんがお庭から摘んでくるのだとか。

敷地の近くで採れる柚子の入ったお茶と
近くに住むおばあさんの手作りのお茶クッキー。
素敵なおもてなしに癒されながら、
やっと念願の場所に到着したんだと実感が湧いてきます。

今回宿泊したのは「めぶき」というお部屋。
1日3組限定のため、お部屋も3部屋だけ。

最大8人宿泊できるという「めぶき」のお部屋は
半露天のお風呂と、何より
大きなガラス張りの窓が東に向いていて、
朝日を浴びながら目覚めるところが魅力です。
元は客間だったお部屋で、床の間なんかは
そのまま利用しているそう。


オーナーさんからお部屋の案内だけでなく、
「2階もあるのでぜひ探検してみてください」
そんな楽しみも残してもらい、
くつろぐ前にまずは階段を上がってみることに。
1階だけでなく2階にもベッドと、少しの畳スペース。
2階の屋根は低めなので、なんだか屋根裏部屋感があってまた良い。

1階に戻るとさっそくルームサービスのハートランドビールを取り出し
まずは1杯。至福。

外は相変わらず小雨が続いていたけれど、
谷間にもやが霞んでなかなかに幻想的な風景でした。

いろんな人が置いていくらしい本のコーナーから気になるものを何冊か借りて、
夕方のサウナの時間までのんびり待ちます。

こちらで有名なサウナは2時間ごとに貸切で使えるようになっていて、
お宿の予約の際に希望の時間帯を伝えます。
今回は夕食の直前の時間帯をお願いしました。

時間になったので、水着とポンチョをお借りしていよいよサウナへ。
屋外に建てられたサウナ小屋には薪で火が焚かれており、
ここは普段のサウナと比べて温度が低めなのが特徴です。
中に入ってじんわり温まるのも良し、
ロウリュをすると一気に体感温度が上がって、
水蒸気と混じりながら汗が噴き出します。
それでも全く苦しくなくて、
むしろ心地良くて、
耐久レースなサウナしか経験のなかったわたしにとって
新しい発見になりました。
サウナの中の明かりは炎と窓1つだけ。
外はどんどん暗くなる時間帯で、
気付けば足元が見えないくらいになっていました。
パチパチと薪の燃える音を聴くだけのなんと落ち着く時間。

十分に温まったら、外に出て、
信楽焼の特注の陶器の水風呂にどぼん。
冷たいのをぐっと堪えて、少し慣れてきます。
サウナ温度が低めなので、水風呂も少し短めにしてみる。
外気浴はなんとサウナ小屋の上のハンモックでできてしまいます。
ここでもなんともにくい演出。楽しい。
少しの雨粒を身体に感じながら、目を瞑ってみる。
静かだと思っていたけれど、しばらくすると
さらさらと近くを流れる小川の音や、鳥の声なんかが
やけに大きく感じるようになります。
ささやかな風に雨あがりの気配を感じ、
全身の感覚がいつもより澄まされている。
これが " ととのう " ってことなのかも。

初めてサウナのととのう体験をした私は、
時間目一杯までサウナと水風呂と外気浴を繰り返し、
急いで着替えるのでした。

サウナでたくさん汗を流してお腹を空かせたわたしを待っていたのは
こちらも楽しみにしていたお夕食。
村の野菜やお豆腐や卵をふんだんに使い、
オーナーさんのご実家はお寿司屋さんとのことで
見た目も鮮やかで美味しいお魚も堪能しました。
天ぷらは目の前で揚げてすぐいただいたのですが、
食べるのに夢中で写真が残っていないくらい。

奈良県の地ビールや日本酒、季節の自家製リキュールなど
お飲み物も魅力的でお酒が進みます。

別のお部屋に泊まっている皆さんと
コの字のカウンターを囲んでゆったりとお食事を楽しみ、
お腹いっぱいになってお部屋に戻ります。

半露天の湯船に浸かった後は、
オリジナルで作ったというスキンケアたちを使わせていただきます。
いい香り。
お化粧落としだけ持参しました。

こちら、購入もできます

それから嬉しかったのが、室内着として用意されていたパジャマ。
上下セパレートのタイプで、はだけなくって良いです。
umeさんのロゴの刺繍入り。

柔らかいガーゼ素材


あがった頃にはなんて幸せな眠気。
星空はやっぱり見えなかったけれど、朝日を見られるといいね、
と、アラームは6時にセット。
しんとした村の静寂を聴きながら、いつの間にか眠りに落ちました。

アラームの前に目が覚める。
まだ辺りは真っ暗ですが、犬の鳴き声と
なんだかわからない動物の鳴き声のようなものが聞こえます。
次第に明るくなってゆく向こうの山の際を
ふかふかのお布団の中からぼーっと眺めていました。
前日の雨はおさまっていたものの、空には厚めの雲。
朝日の筋は見えたものの、残念ながら日の出は見られませんでした。

真正面に朝日が臨めるはず・・・

もう少しだけ寝て、それから起きたら
ちょっとそこまで、お外に出てみます。
整えられていない自然の秋を感じながら、
ふと脇には柚子の実のなる木が。
昨日いただいたお料理やお茶に使われていたのはきっとこれ。

自然の空気をいっぱい吸い込み、朝食をいただきに戻ります。
朝食の場所はフリースペースとなっている小上がりのお座敷でした。
どんな朝ごはんかな、と待っていると、運ばれてきたのは大きな木箱。
蓋を開けると、色とりどりの小鉢の並ぶ宝箱の中身がお目見え。

「わぁ、これ美味しい!」
「これも、これも」
と言いながらすぐにご飯がなくなり、おかわりをいただきました。

おなかいっぱいになり、あとは帰りの時間までだらっとしていたいところですが
実は、追いサウナをお願いしていました。
追加料金で空き枠があればお願いできるのですが、
せっかくだから明るい中でのサウナも楽しみたいなと。

早速水着に着替え、サウナへ向かいます。
昨日とはお天気も変わり晴れ間もあったので、
秋の心地良い風と日差しにあたりながら
サウナと外気浴を楽しみました。
村の向こう、遠くの山まで見えて、忘れられない景色でした。

水風呂の陶器の色合いもとっても素敵
外気浴を楽しむ

チェックアウトのギリギリまでしっかり楽しんで、
お化粧もせず最低限の格好だけ整えて、そうしたらもう帰る時間です。
帰りもまた名張駅まで車で送っていただきました。
そういえば車中で、朝方に聞こえた音のことを尋ねると、
おそらく鹿の遠吠えだろうとのこと。
鹿って遠吠えするのですね・・・

名残惜しく思いながら、お宿はすぐに見えなくなってしまいました。
きっとまた来られたら、ただいまって思うのだろうな。
滞在中は元の日常が不思議と遠く感じられて、
なんだか別世界のことのようでした。
日々に疲れてまた少しの間でも忘れたくなったら・・・
いや、そんなネガティブな理由では来たくはないな。
ただただ自然と一体になりたい気分になったら、
また来たいなと思いました。

ちなみに木造建築で音はよく聞こえるので、
気心の知れた仲の人と訪れるのがおすすめです。



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