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WBCの開催地はどう決まるのか

先日、2026年WBCの開催地が発表されました。

今から楽しみな野球ファンも多いかとおもいますが、ところでこの開催地はどのように決まっているのでしょうか。今回掘り下げてみたいと思います。
※筆者は大会関係者などではないので、あくまで推測ベースであることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。


なぜ決勝戦は毎回アメリカなのか

まず過去全大会で、決勝戦の開催地が毎回アメリカなのは疑問を持つ方も多いでしょう。これはやはり、WBCという大会はMLBが主催者である以上は、MLBチームの本拠地が使われるのは仕方がない部分があります。
確かにサッカーやラグビーのW杯のように、大会ごとに様々な国で持ち回りで開催ですが、それをWBCでやるのは難しいのが現状。それは前述の通りMLBが主催なのもありますし、今の方法の方が大会の収益も確実に得られる(集客が見込める)という点もあります。サッカーのW杯ならどんな開催地でどんな国とどんな国が対戦しても集客が見込めますが、そんなスポーツイベントは例外中の例外です。

都市はどのように選ばれているのか

決勝戦がいつもアメリカなのはさておき、ではそれ以外の開催地はどのように選定されているのか。またアメリカの中でも開催する都市はどのように決まっているのか。
まずは過去にWBCが開催された都市を一覧で見てみましょう。

歴代の開催地一覧

これらの都市が選ばれた理由として、重視していると思われるポイントを5つピックアップしてみました。今まで開催地となった都市は①~④(アメリカの場合は①~⑤)を満たしています。

①野球人気が高い国、地域

集客も踏まえ、この点は欠かせません。そうなると東アジアの日韓台か北米、中南米になります。今後は欧州などにも期待したいですが、WBCレベルの規模の大会を実施するには未だ難しいのが現状です。
(ちなみに上記以外だと南太平洋のパラオやミクロネシア連邦も野球が盛んだそうですが、非常に小さい国でWBC出場はありません。)

②治安や経済が安定している

これはスポーツに限らず、国際的なイベントを行う上では欠かせない点。いくら野球人気が高くても、貧困や政情不安を抱えるキューバやベネズエラでWBCを開催するのは難しいでしょう。

③収容人数の多く整備された球場がある

この点は前述の2つにも深く相関しますね。立派な球場がある場所となると、大抵は野球人気が高いかつ経済力がある国となります。

④3月でも温暖な気候もしくはドーム球場

WBCは毎回3月に開催されますが、3月に野球ができる気候の地域は限られています。例えばニューヨークのヤンキースタジアムなんて立派な球場ですが、3月のニューヨークは夜だと氷点下になることもあります。
過去に開催されていた都市を見ると、台湾やフロリダなどは3月でも温暖な気候。ソウルやトロントは3月だと寒いですが、これらの都市では気候の影響が少ないドーム球場で開催されていました。

⑤(アメリカの場合)移民の多い都市

アメリカの中では様々な都市で開催されていますが、それらの都市に共通するのは移民の多さ。そもそもアメリカは世界中から移民が集まる国ですが、過去にWBCが開催されたアメリカの州を見ると、下記の通りWBCの出場国からの移民が多い。
カリフォルニア州:韓国系や日系、メキシコ系
アリゾナ州:メキシコ系
フロリダ州:ドミニカ系やプエルトリコ系、ベネズエラ系など

これは集客の面で重要です。これらの地域で試合をするとホスト国アメリカ以外の試合でも、メキシコ系の移民はメキシコ代表を応援しに来たりするので集客が見込めます。過去のWBCを見てもアリゾナで行うアメリカ×メキシコの試合は圧倒的にメキシコの応援が多いほどです。
※以下は2023年WBC、アリゾナ州フェリックスで行われたアメリカ×メキシコでメキシコ国歌斉唱の様子。

そしてマイアミは特に野球強豪国が揃う中南米からの移民が多く、近年は中南米のチームが上位進出することが多い点も踏まえて2023年は決勝戦の開催地に選ばれたと言えるでしょう。マイアミは次回2026年でも引き続き決勝戦の開催地です。

2026年WBCの開催地

次のWBC開催地は先日発表されました。

2026年WBC

開催地:東京/ヒューストン/マイアミ/サンフアン

過去全大会で開催地となっている東京。日本は先日、経済力を示すGDPが4位に転落しましたが、それでも2位の中国と3位のドイツは野球が人気スポーツとは言えない点を踏まえると「野球が盛んな国の中では世界2位の経済力」ということになります。

少子化といえど人口は世界200か国ほどの中で12位の1億2000万人、それで野球人気が高い国の首都を開催地から外すのは収益的には難しいのでしょう。集客はもちろんのこと、そんな日本の試合を時差なくゴールデンタイムに行うことによる視聴率も重要です。

そしてサンフアンがあるプエルトリコは2023年のWBCで視聴率は60%超えの野球人気ぶり。また政情は中南米では比較的安定しており同じく野球が盛んなドミニカ共和国やベネズエラより開催地に適していると言えます。

初開催のヒューストンは200万人ほどのメキシコ系移民がいると言われています。

2023年WBCとの大きな変更点

次回WBCは2023年からの変更点として、準々決勝の会場が全てアメリカになり、東京で準々決勝が行われなくなりました。日本人としては残念ですが、なぜこうなったのでしょうか。

その理由として過去に開催地だった韓国や台湾が今回は1次ラウンドの開催地とならず、アジアでは東京だけが開催地になった点かと思っています。
まず韓国は今年ドジャース×パドレスの開幕戦も行われたソウルの高尺スカイドームがありますが、同球場は収容人数が2万人以下と日米の球場と比較すると少ないです。また2017年のWBCでは1次ラウンドの会場でしたが集客が今一つだった過去もあります。それならプエルトリコの方が良いという主催者の判断だったのかもしれません。

そして台湾は2023年のWBCで連日満員かつ昨年に台北ドームが完成。しかし台湾は2026年WBCの出場権をまだ獲得できておらず、2025年の予選を勝ち抜く必要があります。台湾が開催地なのに台湾代表がWBCに出場できなかったら、というリスクを踏まえると開催地とするのは難しかったのでしょう。また同じくアジアの中国も2026年WBCの出場権をまだ獲得していません。

こうして1次ラウンドの開催地が東京+北中米3か所になったのですが、もしこれで東京で準々決勝を行おうとすると
1次ラウンド 北中米のどこか
準々決勝 東京
準決勝 アメリカ

という過酷な移動をするチームができる可能性があります。これは主催者としても避けたかったのでしょう。

最後に


ここまで読んできて、皆さんはどのように感じたでしょうか。MLBは大会で収益ばかりに囚われすぎと思う方もいるかもしれませんが、とはいえ収益を度外視して理想論ばかり語っても仕方ない気はします。とはいえWBCは大会の歴史が浅く、良い意味で伝統がない大会だからこそ、今後は変わっていくかもしれません。
そして歴史が浅く不完全な大会だからこそ、侍ジャパンの応援だけでなく大会自体の進化を楽しむのも、WBCの醍醐味ではないでしょうか。

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