署名についての当会のスタンスについて
このたびの署名活動につきまして、1万筆以上ものご署名をいただき、誠にありがとうございます。最高裁での法改正を阻止するためには、これでもまだまだ足りないと思われるのが現状です。
今回の署名活動等により特例法の手術要件の違憲判決や法律改正も止められた場合(つまり、署名が成功した場合)、私たちとしてはそれをもって「特例法により別の性別としての『全ての権利』が認められた」と主張するつもりは全くありません。
戸籍を異性に変更する際に「手術要件が当然の前提だと認められた」という現状維持ができた、というだけです。
私たちは「世の中を、制度を、法律を変えたい」という気持ちは1ミリもありません。現状維持により、静かに暮らしたいだけなのです。LGBT理解増進法に反対していたのも、今まで静かに暮らしていた当事者が炙り出されたり、変な注目を浴びることで今までの生活が壊されてしまう可能性があったためです。
私たちは特例法の廃止の主張をされている方々についても、対立する気はありません。現在特例法において性別変更をすでに行った当事者は1万人を超えており、その全ての人が社会に適合できているのかと言われると、当事者間でも多々疑問があるということは確かです。ですから、私たちは「自浄」を求められている、迫られているのだと強く感じています。ですので、私たちからは、学会や医療側へ性同一性障害への診断の厳格化、安易な手術の禁止、未成年者への性別移行医療の反対を、引き続き求めていきます。
また、当事者の立場からの特例法の必要性と合理性を述べていきます。
特例法から手術要件がなくなったら、「男性器ある法的女性」が次々と認められることが予想できます。性同一性障害の診断を1日(あるいは短期間)で取得した人が、男性から女性になりたい、あるいは女性から男性になりたい、という、「本人の希望」でしか根拠のない性別移行が可能になってしまいます。また、性犯罪目的の男も今以上に入りやすくなるでしょうし、今後は逮捕したりまた咎めることすらも「差別だ!」とされてしまえば、施設側も警察も、どうすることもできません。これまで以上に女子スペースがとても危うい状況になるでしょう。
以上のことから、特例法自体を無くすべきと考える方々も、どうかこの署名運動には協力して下さるようお願い申し上げます。
本来、性同一性障害の診断を受けるまでには、数ヶ月~1年以上が必要とされてきました。その期間において、自分が別の性別として生きていけるのかどうかを試す期間でもあり、また自分の出生から今までを見つめ直し、自分史を書くことで自分の過去を振り返り、子供の頃からの性別違和がどうあったのか、本当にこのまま治療を進めていいのかの自省期間としての意味合いもある期間を必要としてきました。本当に性同一性障害であるのか、精神科医が医学的に判断を必要とする情報を得るための時間でもありました。
その時間をすべて無しにして、1日で出た診断書をもとに、手術もしないで「別の性別」として戸籍を変更させても、いいのでしょうか?
手術要件というのは、別の性別になりたいがための手法ではありません。特例法ができるまでは、性別適合手術が美容整形のように扱われてきました。止むに止まれず、どうすることもできないくらいの苦痛や苦悩を持つ当事者は、それまでは「自己満足」という目で世間から見られてきました。特例法が法律として認められた時、はじめて「病気の治療として必要なこと」と世に認められたわけです。私たち当事者にとって、これはまさしく恩恵であると同時に、希望の光ともなりました。
私たちは、この日本で暮らす中で、静かに穏やかに暮らしたいと願っています。対立したいわけではないのです。
男女を分断したり、性別を曖昧にするような法改定を望んではいないのです。その思いから署名を開始いたしました。
当事者の思いが、少しでも伝わってくださいましたら、ぜひご署名のご協力をお願いいたします。
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