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院内集会を終えて

性同一性障害特例法を守る会
代表 美山みどり

 今までも国会議員の先生方に陳情などでお話をさせていただく機会はありましたが、改めて「院内集会」と言われるような大掛かりなイベントでお話させていただくとなると、重大な責任も感じて気を引き締めないと..という思いで一杯いっぱいになります。
 報道のためマスコミの方や、それ以外の市民の皆さまのご参加をお迎えしつつ、どれほどの議員の先生方に来ていただけるか、などと不安にもなりつつも、いろいろと発表準備をしながら当日を迎えます。

 会場は参議院会館。陳情などで訪れたことはありますが、国会議事堂の真ん前に衆院第一、衆院第二、と共に3つの巨大なビルが立ち並びます。警備さんの身体チェックを済ませると、ロビーの高い吹き抜け。仲間たちと待ち合わせていよいよ準備。女性たち、滝本弁護士、そして当事者、さまざまな立場の人たちが、女性スペースと特例法の問題に協同して立ち上がっています。手分けをして広い講堂での会場準備に取り掛かります。

 そして開場、議員さん、秘書さんに交じって、新聞社の方、雑誌記者の方、そして会を通じて事前に参加を申し込まれた一般市民の方をお迎えします。面識のある方などとご挨拶をしつつ開場を待ちます。

会場全体の様子

 まずは海外と国内のさまざまな問題をまとめた動画から。判りやすく実例中心でのものです。性自認至上主義がいかに諸外国で混乱を巻き起こし、ゴリ押しでしかない権利主張が、女性たちの安全を侵害しているかを、リア・トーマスWiSPAなどの実例を挙げて説明。
 国内でもゴールドフィンガー事件や未手術外国人トランス女性の女湯突撃事件を挙げて「外国人のパスポートの性別記載は、すでに陰茎の有無を事前に判断できる状況にはない」という危険性が指摘されます。
 海外でもまさに「文化戦争」と呼ばれるほどの社会対立を巻き起こしている問題を、日本でも再現したいとLGBT活動家たちは考えているようです。このような事態を食い止めるために私たちは「女性スペースを守る法律」「女子スポーツを守る法律」を作るように、議員の先生方に訴えかけるために今日の院内集会を行ったのです。

 そして武蔵大学の千田有紀先生からの基調講演。「女性の定義をめぐって~制度的解決の必要性」という演題です。
 フェミニズムの立場から「今までは女性たちとGID当事者と比較的うまくやってきたが、それが破綻してきた」状況をうまく説明しています。特例法が出来て20年、私たちは「気の毒な人たち(まあ、当事者としてはいろいろ思うこともありますが)」として、あるいは「手術という関門を乗り越えた安全な人たち」として、「(妊娠・出産・性被害」という)ままならない身体」を持つ者同士としての共感がベースにあって、共存してきたと指摘します。

 しかし「性同一性障害からトランスジェンダーへ」、性別の基準を「身体から心(ジェンダー・アイデンティティ)」に変えようとすることで、20年間の共存関係が破壊されたと千田先生は話します。あろうことにか、この性自認至上主義によって「性自認を認めないのは差別だ」とし、なおかつ女性たちの安全に関わる場面では世論の反発を掻い潜るために「女性スペースに入り込みたいトランスジェンダーはいない」などと、明白なダブルスタンダードを主張しているとさえ指摘するのです。

千田有紀先生の基調講演

 まさにこれ、特例法の手術要件がMtFの場合でも違憲になったら、「手術していなくても、性自認を優先しろ!」と前言を覆してゴリ押しをしてくるのではないのでしょうか?現在はまさに待ったなしの状況にあるのです。違憲判決を下した裁判官の言葉もいかにも事態を理解しない、頼りない無責任な発言ばかりです。

 女性たちは自分たちの安全と権利が侵害されることとなりますから、対立しないための合意による線引きといった、制度的な解決を求めます。しかしそれさえも「差別」と呼んで過激な活動家たちは議論に応じようとしません。このような政治的な対立が、欧米では政治イシューの域を超えた社会対立と分断を巻き起こしていることを指摘します。

 問題を座視すれば、社会対立を生むだけです。それによって私たち性同一性障害当事者は、女性たちから非難と警戒の目に晒されています。これが私たちの望む世界でしょうか?私たちも「トランスジェンダー」が引き起こした性犯罪にはいい加減うんざりしています。私たちは「トランスジェンダー」とはもはや一緒にされたくはありません。

 そして、滝本太郎弁護士が登壇します。滝本先生が女性スペースを守るための法案女子スポーツを守る法案趣旨を説明しました。しかし「多様性の尊重」という美しい言葉で、法的な定義が社会的にも重大なものとなる「女性」という言葉が極めて恣意的に使われていることが大きな問題であると指摘します。そして最高裁の経産省事件の判断、そして手術要件の一部違憲判決によって、もはや待ったなしの問題として浮上してきたということを強調しています。

法案の趣旨を説明する滝本太郎弁護士

 しかし、現状では女性スペースの正確な定義もありません。活動家の側も「女湯はダメ」としていますが、このような違憲判決が出てしまうと、さまざまな女性保護のための施設・制度についても、個別に「どれがOK」「どれがダメ」という議論を細かく決めていかないといけないことが、喫緊の課題となるわけです。ですので、現実的な行動としては、女性スペースを守る法律を作ることがまず大事であり、特例法の改正に優先すべきだと主張しました。

 その後、ご来場の議員さんのスピーチがありました。
杉田水脈議員はご自身の遭遇した「新潮45」事件が、LGBT活動家が「議論は差別」という態度を露にした最初の事件だとご指摘されました。

ご来場された議員の方々のスピーチ 杉田議員

 石橋りんたろう議員は、この問題が雰囲気だけで正確な定義もせずに議論していることに強い危惧を感じていることをお話されました。

ご来場された議員の方々のスピーチ 石橋議員

 片山さつき議員は「女性を守る議連」として、特例法改正のための特命委員会への法律案の検討を始めている、とのことです。
 そして、議連の中で特例法制定に御助力いただいた専門医である針間克己先生をお呼びして、針間先生自身が「性自認」ベースでの診断基準では専門家としての判断に責任を持つのは難しく「なりすまし」の排除が難しいとを認めていることを、お話されました。
 また制定当時の関係者から、手術要件廃止で特例法に「穴があく」ことを全く想定せず検討もしていない事態だ、と伺っていると明言されました。

ご来場された議員の方々のスピーチ 片山議員

 そして私、美山みどりの番です。私は手術済・戸籍変更済の当事者の立場から、特例法の手術要件の意義を話させていただきました。特例法は「手術をしたい人のため」の「特例」である法律であり、けして「手術をしたくない『トランスジェンダー』のための法律」ではないこと、そして私たちが手術を「自分たちを守る盾」であり、新しい性別に適合する決意を示すものだと考えていること、そしてそれが客観的に確認可能な条件であるから守らなくてはならないことをお話しました。
 さらに、活動家が主張するような「過酷な条件」ではなく、MtF なら最低なら100万円の費用と大した身体負担もないこと、FtMならホルモン投与で肥大した「マイクロペニス」で外観要件がクリアできる事実を話させていただきました。明らかに手術をなくしたい活動家の主張は事実と離れて「過酷」を誇張した「ためにする」主張なのです。
 まさにこの特例法の改正については、医療と法律と社会とが複雑に絡みあった問題であり、拙速な改正には問題が多いのです。当事者の考えをしっかりと受け止めて慎重に議論していただきたいのです。そして特例法改正よりも「女性スペースを守る法案」「女子スポーツを守る法案」を優先すべきと訴えました。

特例法の手術要件の意義を話す当会代表の美山

 私の後は平等社会実現の会、織田道子さんからのお話で、性暴力被害者をサポートする団体の責任者として、女性スペースの重要性と、その場に未手術の「トランス女性」が入り込むことが引き起こす問題とを、実例を交えてお話しました。女性が抱く恐怖心は、活動家が主張するような「理解」「研修」では解決不能なものであることを、強く強調していました。
 そしてとくに東京都で公共の場での女子トイレが「共用トイレ」に回収されて減っている問題について指摘し、女性にとって「女性スペース」が持つ大きな意義を説明しました。

性暴力被害者をサポートする団体の責任者として話す織田さん。
女性が抱く恐怖が研修で解決不能であることを強調されました。

 本当に皆さん熱の入った発言が続き、予定では発言は1時間ということでしたが、1時間40分ほどにも延長し、時間に追われて会場からの質疑応答の時間を取りづらかったのが反省点です。しかし、各発言者が終わるたびに盛大きな拍手に迎えられるほどの、議員さん秘書さんも含む延べ50名以上の参加者。議員さんご本人では7名(自5国1維1)、議員秘書さんなど8名(自3維3国1立1)、加えて国民民主党の区議さんのご参加を頂きました。
 このように有意義な院内集会になったことを、ここに皆さんに報告いたします。ちなみに当会の副代表はご挨拶を頂いた杉田水脈議員のファンでもあり、ツーショット写真を撮らせていただいて舞い上がっておりました(苦笑)

 ご出席いただいた方も、そうでない方にも無事開催できたことに感謝の気持ちを表します。





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