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トランスジェンダーと性同一性障害は無関係、私たちは共同通信社に抗議します

本投稿内容を9月21日に共同通信社へ郵送で送付しましたのでご報告いたします。送付した文書は添付の通りです。


2024年(令和6年)9月20日
性同一性障害特例法を守る会

私たちは性同一性障害特例法を守る会は、性同一性障害当事者による団体です。これまでも、マスコミが流布する「性同一性障害とトランスジェンダーの混同」について、強い抗議の意思を表明してきました。

しかしまたもや、共同通信社が配信したニュースで次のように報道されました。

心と体の性が一致しないトランスジェンダーが障害ではないとの考えの広がりを巡り、政府が2027年の施行を目指す世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類」最新版の和訳で、性同一性障害ではなく「性別不合」を採用したことが19日分かった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9c5315ef3b4fab783d082a15658ed793d84d778c

記事のヘッドラインに当たる「心と体の性が一致しないトランスジェンダーが障害ではないとの考えの広がり」と、後段の「政府が2027年の施行を目指す世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類」最新版の和訳で、性同一性障害ではなく「性別不合」を採用したことが19日分かった。」とは内容的に結びついていません。もしこれが、意図的なものであるのならば、読者のミスリードを狙った、イデオロギー的な偏見に基づくものであり、公平中立を旨とすべきマスコミとして、大きな問題があると言わざるを得ません。

「トランスジェンダー」には実は正確な定義はありません。

WHOなどでも、「性別二元論に収まらない」と考える人々を大雑把に括った「アンブレラ・ターム」として紹介しています。その中に「性同一性障害・トランスセクシュアル」と呼ばれる人々を含む、としているだけのことであり、明白に「性同一性障害(性別不合)」は「トランスジェンダー」のごく一部だけを示すことは明白です。


参考:https://note.com/mojamojappa/n/nd0e85be74373

ですから「トランスジェンダー」の大多数は、性同一性障害当事者ではないのです。これは「令和元年度 厚生労働省委託事業職場におけるダイバーシティ推進事業 報告書」(https://www.mhlw.go.jp/content/000673032.pdf)でも、「出生時の性別と自認する性に食い違う」と回答をした「トランスジェンダー」の中でさえ、「性同一性障害の診断を受けた」数は15.8%、さらに「性別適合手術を受けた」「戸籍上の性別を変更した」数は 5.9% に過ぎない結果になっています。事実上「トランスジェンダー」とは、「自分がトランスジェンダーだと思えば、トランスジェンダー」という程度の意味しかないのです。今までも医療が真剣に対応すべき問題として取り上げられてきた「性同一性障害」との違いは明白でしょう。

今回の報道に即して言い換えると「心と体の性が一致しないトランスジェンダーが障害ではないとの考えの広がり」は、性同一性障害の「性別不合」への名称変更とはまったく無関係です。ただ「障害という言葉を使うことで」医療から当事者を遠ざける懸念から、「gender identity disorder」という言葉を言い換えたに過ぎないのです。そして「精神病というカテゴライズによって差別を受ける」懸念から「精神疾患」から新設の「性の健康に関連する状態群」へ、移動になっただけのことです。取扱いに関しては大きな変更は行われていないのです。今まで通りに医療が必要とされ、それが提供され続けることに変わりはないのです。

精神神経学雑誌オンラインジャーナル「ICD11 で新設された「性の健康に関連する状態群」」https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1240020134.pdf

実際「トランスジェンダー」には「性同一性障害(性別不合)」以外にも、次のような人々が含まれます。

・いわゆる「女装家」。多くの女装家は男性としてのアイデンティティを持ち、「男だから女装を楽しむことができる」と考えます。
・ゲイのサブカルチャーである「女装して女性をパロディ的に扱って楽しむショーの従事者」であるドラァグクイーン。
・自身に強制される「女性の性役割」に反発して、「女性としての社会での性役割」を拒む人々。
・狭苦しいジェンダー規範に縛られずに生きていきたい、と願う人々。

これらの人々は、「自らの選択」において生きている人々です。明白に「病気」「障害」ではありません。その上に「トランスジェンダー」のごく一部しか性同一性障害当事者はいないのです。多くの「トランスジェンダー」は病気でも障害でもないのです。としてみれば、この点ではこの記事のヘッドラインは正しいのです。
しかし、性同一性障害当事者はこれらの「トランスジェンダー」とは立場と利害がまったく異なる人々です。別な取扱いが今までなされ、しっかりと区別されてきた「性同一性障害」を「トランスジェンダー」と同じ扱いにしてしまえば、「性同一性障害」の利害が明白に損なわれるのです。「トランスジェンダー」を引き合いに出されることによって、私たちを「トランスジェンダー」と同一視しようとするのは大変な迷惑でもあり、かつ侮辱であるとさえ感じます。

私たち性同一性障害当事者は、医療を真剣に求めます。ですから、私たちのこのニーズから、「性同一性障害(性別不合)」が真面目な医療の対象としてこれからも存続し、より充実していくことを求めています。この名称変更でも、医学界が「性同一性障害(性別不合)が病気ではない」と宣言したという事実はまったく存在せず、おかしな世論誘導がなされていると私たちは捉えています。

ですから、性別不合という言葉を改めて採用し、日本精神神経学会とGI学会が共同で先日発表した「性別不合に関する診断と治療のガイドライン(第5版)」であっても、医療の重要性が薄まったという認識は存在していません。今まで通り、真剣な医療の対象であるべきですし、またそれは専門医の間でも共有されている認識でもあります。

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/gid_guideline_no5.pdf

あたかも「性同一性障害が病気でなくなった・医療の対象ではなくなった」と匂わすかのような報道に対して、その誤りを指摘し、正確な事実の報道を行うように、共同通信社に抗議し、のみならずマスコミ全体に対し、私たちは当事者として強く要請いたします。

このような利害の違い・ニーズの違いから、私たち性同一性障害当事者は「トランスジェンダー」と呼ばれることについて、最近では非常な嫌悪感を抱きつつあります。ぜひ皆さまにおかれましては、今後は性同一性障害当事者が「トランスジェンダー」の一部ではなく、全く別のカテゴリーであるということを、しっかりと認識して頂けるようお願いいたします。

追記:朝日新聞による報道でも、問題のある個所があります。

新しい和訳では、性同一性障害は疾病や障害ではなく、性の健康に関する状態として「性別不合」に変わる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/36ddda472a1b298c52560b14134ecbb15bd49ebe

同性愛は脱医療化されましたから、ICDにもDSMにも項目が存在していません。今回の「性の健康に関する状態」に存在しているという事実は、医療が真剣に取り組むべき問題として性同一性障害(性別不合)が残り続けている証拠です。けして「疾病」「障害」でなくなった、ということではありません。

以上


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