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心的時間旅行と夕暮れ

空港や駅が好きだ。
旅行に帰省、懐かしい人や大好きな人たちに会える機会。
構内の音も心地良い。
そして、目的地に運んでくれる乗り物たち。
だから飛行機や電車も好き。

今日は4日ぶりの晴天だった。
午後3時、やや陽が傾き始めた空を眺めているとキラリと光るものが。
西日を浴びた飛行機だ。
もっと近くで見たい。
わたしは空港近くの広場に向かった。
飛行機というのはなぜこうも胸を高鳴らせるのだろうか。
何もない空に突如、ランディングライトを灯した飛行機が現れるあの瞬間の心強さ。
手を伸ばせば届きそうなほどの高さで頭上を通過する美しい機体。
遠いようで近くて、近いようで遠い。
想いや願いを運ぶ幸せの兆し。
今この時もあの機体の中には、久しぶりに帰国した人や大切な誰かに会いに来た人がいて、空港では多くの人がまだかまだかと到着を待ち侘びているのだろうなと思う。

かつて、家族と旅行した日、友人と空港で落ち合って散策を楽しんだ日に引き戻される。
韓国に出発する前に母とどれくらいウォンに両替する?と両替所の前で相談したこと。
友人と空港内のレストランでいただいたモーニングが美味しかったこと。
展望デッキから眺めた旅客機の迫力にはしゃいだり、お土産物屋さんの珍しい商品に驚いたり。
数え上げればきりがない空港での風景。
その時々の周りの人たちや音もどことなくよみがえり、忘れたくない思い出たちが心をかけめぐる。

ふと広場に目をやると家族連れがちらほら。
3歳くらいの子どもが飛行機に手を振る。
小さな手は柔らかい冬の光の中で愛らしく揺れていた。
ここにいる人たちの日々にも思いを馳せる。
わたしもまた、この人たちの記憶の一端になれるのだろうか。

空港や飛行機はわたしにとって記憶や感情を想起させるものだ。
わたしの推しの諏訪部順一さんは、空港に似ているといつも思う。
優雅で洗練された空間、出発前の少しの緊張と希望を含んだざわめき、到着する時の安堵感。
あの特別感は他の方にはないと、ひとり微笑む。
マインドフルネスが大事なこととはわかっているが、こうしてさまよう時間も大切にしたい。

#エッセイ
#随筆

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