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小説:光のフルスクリーンモード、などを含む言葉の塊(398文字)

 柔らかいアルコールを半透明したような月だった。意味の無い意味が意味を笑い、価値の無い価値が価値を笑う。ほんの少しだけ高い場所へ続く階段をまたゆっくりとのぼり、それはおりることと同義だった。

 絡まった色をむしり取り、今、この星空の裏側に隠す。定まった色が鈍くなり、今、何らかの行為の切れ端から漏れる影だけが立ち上がる。それを畳み込むような光のフルスクリーンモードを見る。それは消失しながら分泌されるモードであり、多角形かつ無角形だった。その枠は作られながらも溶けていく。つまり、内からの推進力は外からの縮退力にかろうじて勝っていた。

 埋もれた箴言はララバイの色を奏で出す。北の四人の灰色がいつか諭していた。雪原仕込みの四人称複数未来時制は、過去進行未完了形の別名だった。涙に濡れた歌詞カードを抱きしめる。川を泳ぎ切るストロボ。そのコントラスト。

 そこまで書いたところで、彼はバゲットにかじりつく。

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自由律俳句

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