おっさんは怪談を集めたい
はじめまして、山本義凡(ヤマモトギボン)と申します。
2021年9月。
YouTubeでオカルト系番組をたまたま見て以来、オカルトの穴に落ちて抜け出せなくなってしまいました。
家族や仲がよい友人に「何か怖い話とか不思議な体験はない?」と聞く程度から始まったのですが、飲み屋で聞くようになり、とうとう見ず知らずの人にまで取材をしてまわる始末。
(いい感じに)ブレーキがアホになってきている物好きな中年、ワタシ。
初めての投稿になるので、名刺がわりとして怪談を集めはじめるきっかけとなる出来事を綴らせていただきます。
ワタシについて
お風呂やトイレが怖くなって後悔する。
人一倍怖がりのくせに、TVで心霊特集などがあると嬉々として見る。
どこにでもいる、妖怪や怖い話やX-ファイルが好きなこどもでした。
しかし、同じ話題で盛り上がれる同志がいません。
怪奇体験をした!という人にもほとんど出会ったことがなかったため「まぁ、オカルトってそういうもんだよな」と思いながら歳を重ねていきます。
大人になってからも不思議なこと(オカルト)への憧れはあったので、オーラを見る練習をしてみたり、能力開花を期待して霊峰に行ってみたりみたいなことは気まぐれでやっていました。
まぁこういった話や行動は、聞く人によっては引かれてしまいかねないと考えていたので、基本的には誰にも言うことはありませんでした。
さらに妻はこわがる人でした。
お化け屋敷には断固として入らず、ホラー映画も見てくれません。
そんな性格の妻なので、このひそかな趣味がバレてしまうと引かちゃうんじゃないかと思い、オカルトが好きということも伝えることもできずに結婚生活を過ごしておりました。
カミングアウト
ところで、「デニスの怖いYouTube」を知っているでしょうか?
霊にとり憑かれると"売れる"というジンクスから、お笑いコンビの「デニス」が心霊スポットをまわるといった人気のホラーチャンネルです。
ある日、YouTubeでたまたま表示されたこの動画をなんとなく見たことをきっかけに、オカルトチャンネルのYouTubeサーフィンをはじめます。
ここから、圧し殺していたオカルト愛が再び芽吹きはじめます。
「やっぱよ、一度は幽体離脱で夜を飛んでみてぇよなぁ…」
そっと目をとじる。呼吸を整え全集中。魂が体から抜け出し自分の寝姿を俯瞰で見ているイメージ。OKそのままだ……よーしいい子だ…
夜な夜なワタシは、寝ている妻のとなりで滑稽な特訓を始めます。
残念ながら一度も幽体を離脱させることはできませんでした。
しかしある時、このほとばしるオカルトハイを自分の中だけに留めておくことができなくなってしまったワタシはついカミングアウトしてしまいます。
「妻ちゃん…実はな……寝るときいっつも幽体離脱の練習してるねん…」
妻は笑ってくれました。変に思われなくてよかったと胸をなでおろす。
だが、つぎに彼女の口から出た言葉はまったく予想していないものでした。
「あれ?そういえば私、幽体離脱したことある!」
妻の幼少期体験
妻が5歳ぐらいの時である。
お母さんに一緒に遊んでほしかった彼女だが、あいにく洗濯物を取り込んだりとせっせと家事をしている最中だったので相手にしてもらえなかった。
しばらくはガマンをしたものの、耐えきれなくなった彼女は駄々をこねる。
わかりやすく仰向けになり「あ"そんでぇーーー!!!」と泣きじゃくる。
背中にふすまの敷居を感じながら、仰向けで手足をバタつかせた。
今でも背中にあたる敷居の感覚をはっきりと覚えているそうだ。
次第に泣き疲れてしまった彼女は寝落ちしてしまった。その瞬間。
洗濯物をたたむお母さんと仰向けになって眠っている自分の姿が見えた。
お母さんは眠ってしまっている自分を抱きかかえてベッドにつれていく。
そんな光景を見たという話だった。
ワタシがあれだけがんばって練習したのにまったく出来なかった幽体離脱を、オカルトに興味のない妻はわずか5歳の時に体験済みだったという事実をつきつけてきた。圧倒的敗北感。
「何それ!?めっちゃすごいやん…!」
興奮と劣等感がまざり合う。
「ん〜… あっ!まだあったかも」
窓のむこう
石川県にある妻の実家は少し変わっている。
1棟のビルを3名義で借りて、縦割りで3組の別家族が暮らしていた。
4F建てのビルでリビングスペースが2Fにあったため、基本的にはそこで食事をしたり団欒していたという。
妻はキッチンにある流し台の奥にある窓のスキマから外を見ることが多かったらしい。
窓はすりガラスになっており、部屋に空気をとおすために10〜20cmほどのスキマがいつもあいている。
まだ幼く背が低かった彼女は手を伸ばしても窓に手がとどかなかったので、流し台を挟んだすこし離れた位置で窓のスキマから外をのぞいていた。
ある日、窓のむこうを見ながら何気なくこう言った。
「いつもおるのに今日は着物の女の人おらんねー」
「そんな人いないよ…」
お母さんはすこし曇った返事をする。
「えー、おるやん」
「おらん!おらん!」
もうこの会話はしたくないとばかりに話を終わらせるお母さん。
「なんで知らんの?おるのに…」
妻は心の中でそう思いつつも、深くは追求しなかったそうだ。
それ以来、彼女はその話を誰にもしていなかった。
さて、いったい妻は“窓のむこう”に何を見ていたのか?という話だ。
となりの家にはお婆さんが一人で住んでいたらしい。
幼いころとはいえ、当時、着物を着ているような人はまわりにはいないし、当然そのお婆さんも着物は着ていなかった。
そんな中、子どもがいう「着物を着た女の人」という発言。
おそらくお母さんも気味が悪かったのだろう。今なら理解できるという。
「女の幽霊がスキマから見てることがあったてことやんな?」
ワタシは興奮気味にたずねた。
「ううん、ちがう」
どういうことだろう?
よくよく彼女に話を聞いていくと、ワタシの想像とはまったく違う事実がわかってきた。
「いま思えば、たぶんあれって平安時代だったと思う。その時はわからなかったけど」
なんと、窓のスキマから見えていたのは平安時代のような風景だったいうのだ。「着物」と言っていたのは「十二単(じゅうにひとえ)」のことだったという。
平安貴族が住むような屋敷の縁側に十二単を着た女の人が2〜3人。
文机(ふづくえ)に座って筆をしたためてる人がいたり、何かモノを運んでいる女の人がいたらしい。
彼女はその光景を特に珍しいなとは思わなかった。
何度かそのスキマから同じ景色を見ていたこともあり、不思議なものを見てる感覚ではなく当たり前の光景としてとらえていたそうだ。
当たり前のことだと思っていたからこそ、いつもいる女の人がいないとお母さんに伝えたのだ。
妻は時空を超えた景色をキッチンの窓のむこうに見ていた。
怪奇は身近に
不思議な体験談なんかそうそうでてくるものじゃない。
そう思いこんでいたワタシのストッパーはその時に外れた。
オカルトとはまったく縁がないと思っていた妻から出た怪奇体験。
当時の記憶をたぐりよせるように話す、その圧倒的なリアリティと信憑性。
ワクワク感で全身が満たされ、ワタシの心を震わせた。
その後も妻を問い詰めた(!?)のだが、でるわでるわの体験談。
ワタシは味をしめてお世話になっている鍼灸院の先生にも聞いてみた。
「いやー、僕、霊感とかまったくないんで」
とか言っていたのだが、話をしていくうちに不思議と思い出してくるものらしい。その話がまた面白い!
そして、気づいた。
不思議な体験だったからこそ、あり得ないと決めつけて気のせいということにしていたり、怖さを忘れたくて記憶のスミにおいやっていたり、変な人だと思われないように人に話すのをためらっている人が意外に多いことを。
大なり小なり、人は不思議な出来事を経験しているのだ。
こうして、おっさんは怪談を集めるべく走りだしたのである。
いろんな方に聞かせていただいたお話は追って書いていこうと思います。
まだまだ拙い文章ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
はじめまして、山本義凡(ボンちゃん)と申します。
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