コロナ自粛中のコーチ

ある大きな大会での試合

新型コロナウイルスの影響で家にこもる機会が増えた。
もちろん練習なんて出来ないですし、人に会うことも出来ない。仕事の休みの日はテレビが親友です。
そんな時、YouTubeで大きな大会の決勝戦の試合を観ました。

そのチームはとても強いチームだった。しかも全員背が大きい。特にそのチームの10番はエースナンバーだけあってとても上手い。ドリブルもトラップもパスもシュートも際立っていたし、CK、FK、PKは全部その10番が蹴る。
この10番の選手はサイドのDFだが本当にどこにでも顔を出す。隙あらばどこでもボールを奪いに来るしパスも要求する。そして背も大きいから空中戦は無双状態。
自陣でボールを奪ったらそのまま相手コートのサイドをドリブルで駆け抜けていき、強烈なシュートまで決める。まるでキャプテン翼である。

とても戦術で固められた、隙のないチームで、練習の様子を垣間見たような気がしました。
個人練習にはとても時間がかかっていると思ます。もしくは上手い選手が集まりやすい土壌があると言えるかもしれない。
その上で試合形式の練習でとても厳しい自由度の少ない練習をしているのではないでしょうか。
全選手ある程度のポジションを固定し、10番にどうやってボールを出すか?というのが至上命題のような練習をしているような印象。また、10番が全てのプレースキックを担ってることから、セットプレーの練習にとても重きを置いている。(実際CKからのヘディングでゴールをよく奪う)

簡単に勝つことに何の意味があるのだろうか?

もちろんその戦術を作るためにどれだけ苦労したかもよく解っています。選手もコーチも本当に一生懸命あらゆる犠牲を払って作り上げているはずです。
だから優勝するにふさわしいチームなんだと思います。
でも、同じ苦労をするならどの選手が出てもチームとして変わらない強さを発揮できるチームを作るべきだと思います。(とても難しい上、結果が中々ついてこないが)

それは本当に勝てないし、手間も時間もかかります。
それでも私は全員の選手が全部のポジションを経験するべきだと思います。

例えばこの10番の選手なら、真ん中の中盤にポジションして、相手選手が大勢いる狭いスペースでプレーする能力を培わせたり、周りを見れる能力を高めるようにすることで、プレーの幅は大きく広がり、選手としての将来性はグンと伸びてくると思います。

勝つために選手の成長の可能性を犠牲にすることは絶対にあってはならないことです。

そういう意味でこの年代でポジションを固定することは本当に危ういと思います。
勝つためにはそれぞれのスペシャリストを育成することが圧倒的な近道です。(そもそもその考え自体間違えているかもしれない)
ですが、それではプレーの幅は無くなり、選手自身が考える機会をガクッと減らしてしまいます。
プレーの幅が少なく、考えて動くことが出来ない選手はカテゴリーが上がるにつれて必ず頭打ちになります。
それは一般社会に当てはめても同じことが言えることだと私は思います。

まずは、全てのポジションである一定の能力(どのポジションでもボールに触れれる程度)を身につける。その上で、選手自身が持つ個性をどのポジションでも活かせて戦うことができるようにすることが重要だと思います。

そうすることでたくさんの選手が試合に出ることができ、全員の底上げがしやすくなります。それぞれのポジションで必要な能力の違いにも気付くことができます。自分の得意な戦い方や場面を想像できるようになり、サッカーのへ理解も高まります。

選手が選手を考える

全てのポジションを理解したほうが、仲間に優しくなれると思います。
そのポジションの難しさを理解できるし、「今あそこがヤバイ」と気付いてあげることもできるのではないかと思います。仲間がミスをしてもその気持ちを理解しやすくなり、思いやれる気持ちが湧いてきやすいと思います。
ポジションを固定するとどうしても起こってしまうのが、「お前のとこでいっつもボールが奪われる」、「シュート決めてくれよ」、「何でここにパスしない」とか、『ポジション=責任』になってしまうと思います。そんな責任の押し付け合いが生まれてきます。
ぶっちゃけた話、プロでもサッカーはミスの連発です。
ミスが本当にゼロになるならボールを持ったら最後は必ずゴールします。
サッカーなんてせいぜい2、3点取れば良く出来たと褒められるスポーツで、負けた時の責任を一人のせいにして解決できるわけがありません。
仲間のポジションを知り、自分がどう動くべきか、仲間をどう助ければいいのか、どうすれば勝てるのか、そういうことを自然と考える力こそ本当に強い選手の姿だと私は思います。

まだまだ机上の空論、理想論ばかりでそんなことできるのかよって感じですが、それで勝てなくても将来には必ず活きる練習になることだけは確信があります。

強豪のチームと違ってウチみたいな弱小のチームには技術や体力がありません。

しかし、技術や体力(特に体力は)年齢を追うごとに日増しに伸びてくるのが少年サッカーです。
大人になった時にはあっという間に逆転してしまう程度のものです。

だから、選手一人一人が考えて動けるような仕掛けを作り、サッカーの難しさと楽しさを理解してもらえるような練習を積んで、どこよりもチームでボールを蹴る楽しさを知るチームにしたい。
そんな選手はどんな役割を与えられても乗り越える力が身に付くと思うし、何事も楽しむ力が身に付くと思います。

強豪の真似をしても一生その差なんて埋まることはない。
向こうは同じかそれ以上の練習量をこなしてきます。
弱小チームには弱小チームなりの勝ち方があってもいいと私は思います。

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