なにげに文士劇2024旗揚げ記念連載#1【朝井まかて】
作家たちの「放課後」
文:朝井まかて
文士劇? 作家による素人芝居のことです。
楽しそう! はい、楽しいです。アホですねえ。はい、アホです。
きっかけは、先輩作家・葉室麟さんのお墓参りに遡る。あの日、東山彰良さんと澤田瞳子さん、そこに髙樹のぶ子さんも加わってくださって墓前で献杯し、場所を移してお茶を飲んでいた。なぜそんな話になったのか記憶が曖昧だけれども、ふと文士劇やりたいなあと呟くと、昔は盛んだったわねと髙樹さん。
今から思えば、私はたぶん書斎ではないどこかに身を置きたかったのだ。書く日々に倦んでいたわけではない。むしろそれはとても幸福なことだ。けれど、作家たちが集まって舞台に立つ。実現できたら、どれほど面白いだろう。読者とリアルな時空を共有できたら。
普通は、ここで話が終わるのである。文士劇やりたいねが酒の肴になり、数年が過ぎ、あんな夢もあったねなんて苦笑する。
ところが、黒川博行さんに相談したら一気に事が動いた。時代ものは衣裳にお金がかかるから学園ものにしたらと東山さんが思いつき、ほな『放課後』がええんちゃうかと黒川さんが原作者の東野圭吾さんにお願いしてくれた。演劇のプロからはまずハコを押さえて行程を立てるものと指南を受け、劇場も決まった。出演者も瞬く間に集まった。本当にやるのと半信半疑ながらも胸を躍らせて(たぶん)、参加を決めてくれた。
11月16日(土)、「なにげに文士劇」を旗揚げする。
フィクションみたいな展開だ。ただ、起承転結の「起」と「結」はあるが、その間のプロットはない。専門家がほぼボランティアで運営に助力してくれているが、主体は文士、実行委員会だ。本筋は自分たちで決めねばならない。手作りの手探りだから判断に迷うことが多い。間違うことも。だから頭を打ってばかりいる。本業の執筆もあるので多重で追い詰められたりする。でもどこか懐かしい気持ちもある。
思い出した。高校生の頃、授業中に文化祭の準備をしていた、あのグルーブ感に似ている。アホは治らない。
日時:2024年11月16日(土曜日)16時開演
開演:サンケイホールブリーゼ
全席指定 8,000円
[主催・製作]なにげに文士劇2024実行委員会
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