ヘッジファンドの帝王が推奨するポートフォリオ
GIA通信 - vol.422
みなさま、こんにちは!
Global Investment Academyの両角です。
スポーツの世界では、選手やチームの特性として《守備型》《攻撃型》のような分け方をされるケースがありますが、それは資産運用にとっても同じ。
自らの属性や立ち位置、さらに専門的な言い方をすれば、己のリスク許容度の違いによって《守り重視》か《攻め重視》かの姿勢を使い分けて考えることが必要です。
ただ、それはあくまでも考え方の中心にあるのは”己”であって、資産運用の世界では、己がコントロールできないことも多々あります。
では、そんな中でどのようなポートフォリオを構築すれば良いのか・・・?
今日のGIA通信は、資産運用のプロが考える究極のポートフォリオについてのお話になります。
皆さんの投資戦略を構築するに当たって参考になれば幸いです^^
世界最大手のヘッジファンドが開発した
「○○○○型ポートフォリオ」とは?
突然ですが、皆さんは「レイ・ダリオ氏」はご存知でしょうか?
投資や資産運用に関心があるリテラシーの高いGIA通信の読者様ですから、おそらく多くの方が聞いたことあるかな、と。
レイ・ダリオ氏は、世界的にも著名な投資家として知られ、ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツ(現在の運用額は16兆円!)の創業者でもあります。
▲レイ・ダリオ氏(Bloombergから引用)
このダリオ氏は「ヘッジファンドの帝王」の異名を持ち、米フォーブス社が発表する「Billionaires 2020」で46位の資産家となりました。
また「世界のヘッジファンドマネージャー報酬ランキング」では第5位の9億ドルを稼いだ事でも有名です。
年間1000億円近い報酬を手にするって、一体普段どんな生活をしているのでしょうかね・・・汗
※上はあくまでも金持ちのイメージでダリオ氏を指しているのではありません
このダリオ氏は、資産価格の変動要因は《インフレ》《デフレ》《経済成長》《経済下降》それぞれ4つのサイクルに分類して、この各期間に適した資産に25%ずつ均等に投資する事で、最大利回りかつ最小リスクを目指す【全天候型ポートフォリオ】を開発したことでも有名です。
【全天候型ポートフォリオ】と一見難しそうな名前ですが、簡単に言い換えれば我々がいつも耳にする《分散投資》のことです。
さまざまな商品を組み合わせることで弱点を補い合い、安定したポートフォリオを作りましょう、という内容です。
こんなプロ中のプロの人も、やはり資産運用の基礎にしているのは《長期投資》と《分散投資》。
これには普段から口が酸っぱくなるほど投資家の方々へお伝えしているメッセージと同じでしたので、私としても少し安心しましたw
▲「2020未来予測&投資戦略セミナー」の資料から抜粋
どんな環境においても大きく毀損しない
資産運用は減らさないことが大切!
ちなみにこのダリオ氏が推奨する「全天候型ポートフォリオ」ですが、具体的な商品群と割合を入れてみるとこんな感じになります。
ローリスク・ローリターンの代表格である国債の比率が、長期と中期あわせて55%もあるのは個人的に少し驚きました。
ただ、さすがに20兆円弱の巨額のマネーを預かり運用するとなると、積極的にリスクを取りづらくなるものも頷けます。
さて、4つに分類された”天候”で、このポートフォリオがどのように機能するか?
まず《インフレ》に対してですが、金や銀などの現物資産、あるいは原油などのコモディティ商品はインフレになると価格が上昇しやすい傾向がありますので、割合は小さいものの必ず組み入れます。
一方《デフレ》への対策としては、インフレとは逆に物の価値が下がる環境になり、金利も低下傾向にありますので、債券のパフォーマンスが相対的に上昇します。
よって、国債を組み入れてリスクをヘッジしているのですね。
また、《経済成長》する環境においては、企業も大きな利益を生むことができるため、配当金や株価の値上がりによる利益を狙う株式が有利となります。
一方、《経済下降》のタイミングでは、株価が落ち込む一方で、安全資産である金やコモディティにお金が流れ込んできます。
上記はあくまでも前提とする考え方ですので、常にこのような比率でポートフォリオを組んでおらず、環境に合わせてそれぞれの比率を適切にリバランスすることが重要です。
資産運用のプロの考え方や手法を理解し、我々も己の資産運用の場で活かすようにして行きましょう。
お金が貯まる基本中の基本だが
意外と出来てないことも多い・・汗
そんな投資家として大成功しているダリオ氏が、先日CNBCのインタビューで、金銭的成功のために必要な3つのポイントを語っていましたのでご紹介します。
やはり我々も上手に資産運用をして行く上では、まずは成功者の意見を聞き、実際に真似てみることから始めることをお勧めします。
あ、もちろんだからと言って、彼らの発言を何でもかんでも鵜呑みにするのではありませんけどね苦笑
まず一つ。
「使う金額より多く稼ぐ方法を知ること」
・・・ふむふむ。
意外と当たり前のことを言っていますねw
ただ、この当たり前のことが意外と出来ていなかったりもします。
ダリオ氏はこの言葉を単に個人の資産運用のみに対して使うのではなく、国家に当てはめてよく使います。
例えば現在の米国に警報を鳴らしています。
米国は積極的な金融緩和先と異次元の大型財政出動により、景気が上向くことで国内需要&消費が活発になり、S&P500やNYダウも連日過去最高値を記録するほど好調です。
しかしながら、そのことで輸出額より輸入額が大幅に伸びてしまい、多額の経常(貿易)赤字を計上しています。
今年2月時点での報道では、米国の2021年度の財政赤字が2兆2580億ドル(約240兆円)になると予測されています。
連邦政府の債務残高も28.5兆ドル(約3000兆円)となり、過去最大を更新しそうだとのことで、1980年代のレーガン政権下で米国が苦しんでいた「双子の赤字問題」が再燃しています。
上記の数字には先日バイデン政権が議会を説得して通した1.9兆ドルのコロナ対策は含まれていませんので、数字はさらに悪化することは間違いありません。
経済発展が著しい新興国の多くは、どうしても国内需要が旺盛なために経常赤字は避けられず、「経常赤字→通貨安→インフレ」という流れに苦しめられることが多いです。
米国も足元の景気を何としてでも刺激しようと積極的な金融政策を講じていますが、このまま双子の赤字を放置してしまうと、今後大きなツケを払わざるを得なくなるでしょうから頭が痛い問題ですね。。。汗
貯蓄はコツコツ上手に出来るけど
運用や投資ができない日本人・・・涙
ダリオ氏が提唱する金銭的成功のために必要な3つのポイントの2つ目。
「そこからうまく貯蓄し投資する方法を知ること」
まず、最初の1つ目を達成するには、①収入(=稼ぎ)を増やす ②支出を減らす
このどちらかの方法が考えられました。
ただ、今のご時世で、①収入(=稼ぎ)を増やすのはなかなか容易いことではありません。
以下のグラフは、厚生労働省が毎年出している資料「国民生活基礎調査の概況」から引用したもので、日本の1世帯当たりの平均所得金額の年次推移を示したものです。
これを見る限り、平成6年に全世帯平均で664.2万円を記録したものの、その後は横ばいというか、むしろ下落傾向をたどっており、平成30年時点では552.3万円まで落ちています。
もちろんこれはあくまでも全国平均かつ全世帯平均の数字ですので、「○○○○である!」と断言することはできませんが、傾向としては良い方向よりも悪い方向であることは小学生が見ても明らかで、平成は「失われた30年」と言われる所以がここにあります。
繰り返しになりますが、このような環境下にある日本で、①収入(=稼ぎ)を増やすのはなかなか容易いことではありませんよね。。。涙
だからこそ、特に日本ではお金が消費や投資に向かわず、将来への不安感からせっせせっせと貯蓄を積み上げることになるのでしょう。
ちなみに2020年12月末時点での日本の家計の金融資産合計は、過去最高の約1948兆円まで増え、中でも「現金・預金」は前年比4.8%増の1056兆円とこちらも過去最高を更新。
(日本銀行調査統計局「2020年第4四半期の資金循環(速報)」より引用)
このことは何も日本だけに限らず、マイナス金利が広がっている世界各国でも同様に起きている現象でありますが、特に日本人は運用が下手くそなので、必要以上に現金を溜め込む傾向があることは、以前のGIA通信でもお伝えしている通りです。
「そこからうまく貯蓄し投資する方法を知ること」
日本人はうまく貯蓄することは出来ているのかもしれませんが、そのお金をうまく投資することは出来ておらず、今後の大きな課題であることは間違いありませんね。
投資で成功する方程式「○小○大」
これが出来れば資産は増える!
そして最後のポイント。
「うまく投資するための分散のやり方を知ること。分散は、期待リターンを減らすことなくリスクを減らしてくれるからだ」
分散のやり方については、上記にて【全天候型ポートフォリオ】を例に出してご紹介しましたのでそれを参考にしてください。
また、別のインタビューではこのように言っています。
これらは通常の経済(状態)では良いものだが、世界に対象を広げ、世界での分散を図るべきだ。
さらに少額だけ他の資産、金、物価連動債、欧州ほかへの投資、中国も加えるべきだ。
中国への投資は(米中が)競争する環境では良い分散戦略になる。
世界的に著名な投資家であっても、資産運用の《原理原則》はしっかり徹底して守って運用をしているこということですから、やはり説得力が違います。
こちらもいつもお伝えしていることですが、リスクとは単に失敗だとか、ダウンサイド・リスクのことだけを指すのではなく、上下に同様の大きさで存在するもの、振れ幅のことを意味します。
またリスクとリターンはほとんどのケースで相関関係がありますので、リスクを取りたくないがために、あまりにも低リスクな商品だけに投資をしていては、期待するリターンは限りなく少なく、資産を大きくするのに途方もない時間を要します。
ま、この辺は釈迦に説法でしょうから、ここでは割愛します。
ただ、プロの投資家・ファンドマネジャーであっても、百発百中、100%の成功率を出すことは不可能に近く、必ず大なり小なり失敗をして資金を溶かします。
また、値動きがあるような市場では、「誰もが底値で買い、天井で売る」ことを目指したいものですが、そんなことは神のみぞ知る訳で、本物の投資家はギャンブルをしません。
そしてこれが最も重要なことですが、成功確率をより高めることは当然のこととして、損を出す時にいかに小さな損で抑えるか。
さらには、利益が得れる局面でいかに大きくするか、ここが成功の鍵、ポイントになってきます。
専門用語に直すと【利小損大】ではなく【損小利大】を追求していく、ということですね!
今日は私が普段から参考にしているレイ・ダリオ氏を取り上げてお伝えしました。
あなたが資産運用の先生として尊敬し、崇めている人はどんな人ですか?
もし良ければ私に”内緒で”教えてくださいね^^
今回のGIA通信はいかがでしたか?
感想・ご意見などございましたら、こちらからお気軽にお寄せください。
以上、今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
それでは、次回のアカデミー通信でまたお会いしましょう!