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霜月の終わり

紅葉などとうの昔に散ってしまい、自分も含めて周囲が慌ただしく冬タイヤに交換を始める季節。
朝、いつもの通勤路である河川敷の道を歩いていると、日を追う事に霜の量が増えていくことに気づく。
いよいよ晩秋も終わり、冬の到来を告げていた。

そもそも秋なんてあったのかいささか疑問だが、同じことを毎年問うているような気もする。
もう日本に以前のような四季を求めること自体が無理難題なのかもしれない。

長野に来て2年目の冬を迎えた訳だが、去年より慣れたかと言うと全くそんなことはない。
11月で既に最低気温が氷点下を下回る環境に、1年そこらで慣れるわけないだろ。
現に今このnoteを、私は風邪をひいてぬくぬくの布団の中から書いている。
気温差、応えるね。寒すぎるだろ。

だが、どうやら原因は他にもあるらしい。
私は生来の睡眠好きを自負しており、学生時代は隙あらば昼寝をかましていたように思う。
しかし社会人になるとそうもいかない。
学生の時の比べて明らかに自由時間が減るからだ。

と思っていたが、これは何やら言い訳臭い。
実の所、寝る時間を捻出しようと思えばいくらでも捻出はできた気がする。
だが謎の勿体ない精神が発動し、残業で遅く帰った時こそすぐ寝れば良いものを、あれやこれやと趣味関係のことやネットサーフィンをしているうちに時間はどんどん溶けていった。
その結果、学生時代と比べて明らかに睡眠時間が減少した。
睡眠時間の減少は即ち免疫の低下を引き起こす。
実際、社会人になってから体調を崩すことが多くなったように思う。

愚かな男である。寝ればよかったのだ。解決方法は簡単だった。
こんな簡単な結論に今更気づいた訳だが、「遅すぎるなんてない。不可能なんてない。」をモットーに今後は隙あらば睡眠を心がけていきたい。

今月はライブに出張にとドタバタでもあったので、良い機会とゆっくり休むこととしたい。

あんまり書くことがないので、今月読んだ本の紹介でもする。
(なるべくネタバレなしの紹介を心がけるが、多少は出てしまうのでご容赦を。)

※以下ネタバレ注意

青くて痛くて脆い/住野よる

「君の膵臓をたべたい」を書かれた住野よる先生の作品。
これはもう、タイトルそのままとしか言いようがない。
10代から20代にかけての青い春を過ごす若者たち。
彼らは青く若いが故に、あまりにも脆く傷つきやすい存在だった。
本作はそんな彼らの、傷つき痛みを伴う大学4年間の青春を描いた作品だ。
あまりにもリアルな人間関係の描写につい作中世界に入り込んでしまった。

青春というものは爽やかなイメージが先行しがちだが、時として残酷な一面を持ち合わせている。
だが、その残酷な一面こそが青春を青春たらしめているとも考えられる。
そもそも傷つかない青春など存在し得るのだろうか。
当然、自ずから傷つきたくて傷つく人はいないだろうが、しかし思春期の多感な若者どうしが関わり合う以上、そこには何かしらの軋轢が生まれることだってある。

傷つき、痛みに苦しみ、そして瘡蓋を作って前へ進んでいくのだろう。
正直、読後感はあまり良いとは言えない。
しかしその綺麗ではない歪さが、青春そのものであるように感じられた。
できるだけ若いうちに読むべきだなと個人的には感じた。(かなりダメージ食らうので)

推し、燃ゆ/宇佐見りん

2020年に芥川賞を受賞した話題作。
作者の宇佐見りん先生は私の同い年らしい。驚愕。。
こちらもタイトル通り、推しが燃える話である。
燃えると言っても燃焼の方ではなく、炎上の方。
物語は主人公の推しのアイドルが炎上するところから始まる。

自分も「推し」を持つものとして、思わず目を引かれ購入した。
恐ろしいまで最近の「推し活」事情を詳細に描いた本作は、「推し」とは一体何なのかをこちらに問いかけてくる。

確かに、「推し」という言葉が一般的に使われるようになって久しい。
「推し」という言葉は非常に便利なもので、一口に「推し」といってもそこには様々な意味が内包されている。
好きな人、愛している人、尊敬している人、応援している人、なくてはならない人、等々。

この便利な代名詞が生まれたことで、何でもかんでも安易に「推し」と呼称することが多くなっている気もする。
それが一概に悪いこと、とは思わないが「推し」が自分にとってどの様な存在なのかを今一度見つめ直す必要があると自戒も含めて感じた。

物語の中で、主人公は「推し」のことを「背骨」と表現した。
生きる上で無くてはならないもの、精神的支柱であると。
同じように感じる人はきっと多いと思う。

一方で自分にとっての「推し」はどういう存在なのか。
私にとって「推し」は、背中を押してくれた存在だった。
これまでの人生の大事な局面で踏み出す勇気をくれたのはいつも「推し」だった。
それを一言で表すとすれば、「追い風」なんだと思う。

御託を並べたが、この本は「推し」を持つ全ての人に読んで欲しい。
きっと自分の「推し活」の一助になると思う。

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