ルイス・ハミルトンのアンチを14年やっている話

2021年のF1は劇的な結末を迎えました。
タイトル候補の上位二人が同点で迎えた最終戦。前でゴールした方がチャンピオン。
レースはルイス・ハミルトンがほぼ制圧しており、史上最多8回目の世界王者は目前に思われました。
しかしレース最終盤、奇跡のセーフティカー。あるはずのなかった最後の一周。
マックス・フェルスタッペンは最後の最後で優勝を手にし、新たな世界王者に輝きました。

…とまあ、こんなどっかで見たようなクサい文章はいいんですよ。

わたし、2007年からF1見てます。

ルイス・ハミルトン、大嫌いです。

見始めた頃のF1は、新鮮だったこともあってとっても面白かった!
2007年カナダGP・スーパーアグリの大活躍、翌2008年・イタリアGPでのベッテル優勝、夜中にTVにかじりついてたのをよく覚えてます。

そのとき、TV中継でヒールにされてたのがハミルトンでした。

まあ、TVに誘導されてたといえばそうなんでしょう。
でも、忘れもしない2008年カナダGP、ピットレーン出口でライコネンのリアに突っ込んでレースを台無しにした。
そのあとの会見で、「『もし』キミのレースを壊してしまったなら申し訳ないね(注:原文でも"if"と言っている)」と言いながらヘラヘラ笑っていたのを見て、はらわたが煮えくり返ったのを覚えています。
なんだよ「もし」って。明確にお前がレースぶち壊しただろうが。これだからイギリス人はよ。

レースでは自己中心的なドライビングで周囲を敬わず、レース外ではあらゆる批判を人種差別に帰結する。
ただただ嫌いでした。

わたしはハミルトンが他の偉大なチャンピオンと並べ立ててもてはやされることにずっと違和感を覚えていました。
最初からトップチームに居て、マシンがただ速いだけ、それをそれなりに走らせる能力はあっても、それ以上ではない、という立場をずっと取ってきました。

2014年、パワーユニット時代の始まり。前年にメルセデスに移籍したハミルトンは、ここから黄金時代を築きます。
つまり、わたしにとっては最悪の時代の始まりでもあったわけです。
ハミルトンが嫌いなのもそうですが、ライバルより1秒も2秒も速いマシンでただ圧倒するレースがシンプルに面白くなかったので、F1を夜起きだして見るほどの情熱はなくなりました。ちょうど可夢偉がシートを失ったこともあって、興味が薄れていきました。
そしてたまにニュースを見ればまたハミルトン。ハミルトン、ハミルトン、ハミルトン。自分が世界で最も憎むドライバーが、マシンが速いだけで勝ちまくっている。

正直、不愉快でした。

そんなこんなで、F1はぼんやり情報を確認する程度にしていたのですが、2021年に久々の日本人ドライバー・角田裕毅が参戦するということで、シーズンの最初にインターネット中継を契約しました。
角田の活躍が見たい。ホンダの活躍が見たい。自然とレッドブルとマックス・フェルスタッペンを応援するようになりました。

シーズン中に論争を起こす出来事がいくつもありました。
シルバーストンでの撃墜、ハンガリーでも撃墜、イタリアでの接触、サウジアラビアでのブレーキテスト、そして最終戦。
どれもこれも、コース上のフェアな戦いからかけ離れたものばかりです。両者ともです。
フェルスタッペンに有利に働くものは目をつぶり、ハミルトンに有利なものは怒りをあらわにしてきました。特に、イギリスでの撃墜はあまりにもあんまりで、本気でハミルトンを呪いました。○してやろうとすら思いました。
しかしハミルトンを恨んだり呪ったりする一方で、2020年のコロナ陽性、イタリアでの紙一重のクラッシュなど、ハミルトンが競技からいなくなる状況を全く喜んでいない自分が同時に居ました。

好きの反対は無関心とよく言います。

あれほど嫌いで、○してやりたい、○ねばいいのに、と公言してはばからなかったハミルトンが、いざF1から、この世から去るということがあり得る事態になった途端、絶対にそんなことがあってはいけない!という気持ちに支配されたのです。
それを自覚した途端、ハミルトンにどういう感情を抱いているのか、わからなくなってしまいました。

その気持ちのまま迎えた最終戦、タイトルの行方は冒頭の通りですが、あまりの出来事に呆然としてしまいました。これは夢か現実か。フェルスタッペンを祝う気持ちとは別に、当初はハミルトンに、ざまあみろ、と散々な言葉を吐きました。
しかしレースの後です。マシンを降りてインタビューを受けんとするフェルスタッペンに、ハミルトンが歩み寄り、ハグをしました。新たなチャンピオンの誕生を認める、最大限に紳士的な振る舞いでした。
今までのわたしなら、これをただのポーズだと叩きまくっていたことでしょう。
しかしそれを見た瞬間、わたしは、救われた気分になりました。
負けてなお堂々とした振る舞い。今シーズンのコース内外の論争を水に流すかのような、ライバルを讃え、祝うその姿。
わたしがずっと認めることのできなかった、歴代最多タイの7回王者がそこには居ました。

ハミルトンは、今年8回目の王者を取らなかったことで、逆に7回の王者に箔が付いたんじゃないか、と思っています。
むしろ、8回目の王者を取ってしまっていたら、わたしは一生ハミルトンを認めないままだったでしょう。
去年、7回目の王者となり、あのミハエル・シューマッハと並んだときには、これほどの賛辞を受けていなかったと思います。
今年負けて、負けてなおあの振る舞いが出来た、あれこそがハミルトンの真骨頂なのではないか、そうとすら思えてきます。

14年間、ハミルトンのアンチを続けていました。
でも、14年経って初めて、ハミルトンがすごいドライバーだと、ようやく飲み込むことができました。
彼は、偉大だ。

これからもハミルトンは応援しません。
応援はしませんが、彼の活躍を素直に受け入れられる自分がいます。
来年2022年、強力なハミルトンがフェルスタッペンと素晴らしいタイトル争いをすることを期待しています。

まとまらない雑文になりましたが、お読みいただきありがとうございました。

PS:トト・ヴォルフはカス

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