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【詩】自由

ある日、自由は言った。

「私は力の源だ
自由からいろいろなものが生まれて来る
私はなににでもなれる
なんでもできる」

「だが、私はやがてルールを覚えた
ルールや型を覚え
自分を形作るようになった
すると友達が増えた」

「それから、ひとつのことに心を傾けるようになった
私はひとつのことにつとめ
もうほかのものであろうとは思わなくなった
その時、変化が起こった」

「大きな力が、私の中に入り込むのがわかった
それは私自身のものではなかった
大自然の、人々の、神々のもつ力だった
なんでもできると思っていた頃には、その力はなかった」

「その力は私のものではなく、あずかりもの
もともと、私の若さも体力も技術もこの心も
みんな外からのさずかりものだった
それを世界に還すことが、私の仕事なんだ」

そして、自由はほがらかに言った。

「自由はよろこびだ
自由は自分一人のためではなく、みんなのためにある
だから、自由の意味を知る時に
生命いのち理由わけもわかる」

「私の生命いのちの意味がわかる
あなたの生命が生まれて来る
そうして、生命がつながり、めぐり、ひろがる
この世界のいたるところに…」

自由は名残惜なごりおしそうに口をつぐみ、次のうたを生命へとゆずった。


* 自由の意味について考えた詩です。「なんでもできる」かのような自由が、「ひとつのこと」に自分をささげる姿勢に変わる時、大きな力がやってきて、誰の生命いのちも生き生きするように思われます。


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