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親友

1年前、海外に赴任した親友を思い出していた。中学時代からずっと仲がいい。顔を合わせてしゃべりたい。その夕方、メッセージが届いた。

「K、元気?日本で仕事があり、一時帰国するんだけど、もし都合よかったら会わない?」

親友からだ。ラッキー、晩ご飯の約束をした。

当日、彼はコーヒーをお土産にしてくれた。(ケニアのコーヒーだが、彼の赴任先はアジアだ。なぜこれが売っていたのか、ちょっと不明🥳)

僕は、十年以上身につけていた御守りをあげた。ネイティブカナディアンのお守りで、石を積んだ絵柄が寄木細工のようにして描かれている。

「子供、産まれたんだって?」
「うん。元気だよ」
「よかった!」

彼の奥さんと3人で会ったこともある。彼の家族がみんな健康で、海外でも護られるようにと思って渡した。

すぐに哲学や世界史、芸術の話で盛り上がる。
「ヨーロッパってそんなにキリスト教の神をずっと全員が信仰していたのだろうか?」
彼が問う。クリスチャンだったか、覚えていないけれど、彼はキリスト教に深い縁がある。

「うーん。どうだろう。ニーチェが「神は死んだ」と言ったけれど、そもそも「神は生きていたのか」という問いが成り立つかもしれない。それはヨーロッパの最後の歴史学になるかもしれん…」

僕は予言者っぽく、格好をつけて言った。ジンジャーエールを飲む。

「巡礼っていうか、地下深い世界に潜っていくような…」
彼が最近、気にかかっているらしい人生の比喩を話す。

「巡礼か。敬虔な感じがするね」
僕もインスピレーションが湧いて来る。

「ファイナルファンタジー7のライフストリームにたどり着くかも。笑」
共通のゲームの話題。

2時間半くらいしゃべって店を出て、また外を散歩しながらしゃべった。

「Instaって10年くらい前はトイカメラのようだったよね」
「ベンヤミンの『写真小史』はいいよ。異化効果だ」

好きなことを好きなだけ話して、聞いてくれる友達。なんて貴重なのだろう。一年分のおしゃべりをしたような気になった。

「いっしょにラジオやろうぜ。Zoom収録で!」
彼は3回くらいそう言って、僕もうなずいて別れた。

また会う日まで。お互い元気でいよう。

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