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やぶけたボタン


我が家にはひとつだけ、
やぶけたボタンがある。

数あるボタンの中ひとつだけ。

それは、押すとピッと音を鳴らす。

仲間には、スチームだとかグリルだとか、とりけし、だとかいくつかある。

お家によって様々な仲間があるだろう。

そして、それを押すと、あらゆるものを温めてくれる。

それは、そう、オーブンレンジの「レンジ(発酵)」ボタンである。

やぶけた、というのはボタンを装飾しているビニール?がやぶけている、ということだ。

もう、「レンジ」の文字も見えていない。
かろうじて、(発酵)の「発」の文字がなんとか読めるくらいだ。

理由は言うまでもなく。
そればかり使うからだ。いや、それしか使わないと言っても過言ではない。

便利機能満載。のオーブンレンジだが、
使うのは、ほぼ、レンジ、のみ。

そしてさらに、この手のボタンというのは、勢いよく押してしましがちなのだ。

そのボタンに焦点を合わせた人差し指は、なぜか、すごい勢いで、それを刺してしまうのだ。

そうして刺され続けた結果、かわいそうな有様に成り果てたボタンが、我が家にひとつ。


しかし、そんな姿になってもなお、そればかり使ってしまうのだ。
それも刺すように押して。

だって、温めたい。
温めて食べたい、飲みたい物はたくさんある。

冷凍してある白ご飯、休日お昼の冷凍パスタ。
昨日の残りのおかず。

挙げればキリがない。

ああ、レンジが無ければ生きていけない。

他の機能には申し訳ないが、レンジがあれば、事足りるのだ。
そりゃ、パンやお菓子を作った時は、オーブンがあってよかった、とは思った。

だけど、圧倒的に、生活に必要なのは、レンジ。
そう、レンジ。

もし仮に、私が記憶喪失になっても、その破けて文字が見えなくなっているボタンが、「レンジ(発酵)」ボタンであることはピンとくるだろう。

どうか、レンジボタンが最低2つあるオーブンレンジを作っていただけないでしょうか?

きっと、売れるはずであります。

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