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ふらふら読書記(5)

低地 ジュンパ・ラヒリ(訳:小川高義)

ここ数か月中に読んだ本の中で最も衝撃を受けた話。

インドのカルカッタで育った仲の良い兄弟、
長じて弟は過激な共産主義革命運動に身を投じ、
兄は弟に同調することなく、研究者としてアメリカに渡る。
やがて弟は友人の妹と結婚し、実家で落ち着いたかと見えたものの、
密かに続けていた革命運動のために警察に追われ、
両親と妻の目の前で警官に射殺される。
知らせを受けて実家に戻った兄は、
弟の妻の妊娠、彼女の実家での不遇を知り、
兄は彼女をアメリカに連れ出すため、自身と結婚することを提案する。
夫を亡くし、生まれてくる子どもを抱え、
自分自身の両親は亡く、夫の両親からは疎まれて、
八方塞りだった彼女は、兄の提案を受け入れて、
兄の妻としてアメリカに移住する。
アメリカで新生活を始めた二人のその後は・・・?
とまあ、そんなお話。

信念のために死んだ弟(ウダヤン)が、
両親、兄(スバシュ)、妻(ガウリ)の心に永遠に影を落とし続けて、
彼らの人生はウダヤンの死以前と以後で括れるくらいに変わった。

両親は最早立ち直ることができず、時が止まったままになる。
傍で見ていて(読んでいて)とても辛い。

スバシュとガウリは?
スバシュとの結婚に決して乗り気でないガウリだったけど、
インドと違って慣習に縛られないアメリカで、
共に子どもを育てているうち、時間の経過に癒されて
やがてスバシュに心を開いて・・・
という展開を予想をしながら読むでしょう。
でも全然違う。全然違うんです。
やっぱりウダヤンから離れられなくて、
そこにガウリ自身の強さが相まって、
スバシュとの生活に身を入れることができない。

ガウリが穏やかな晩年を過ごせていたらいいなあ、と思うばかり。
(スバシュ?スバシュはあの様子だと、多分穏やかに暮らせてると思う。)





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