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この調味料を買うな!2024

軽い気持ちで買ったら後悔する調味料と香辛料と食材をバンバン紹介していく。マジで持て余すから、間違って興味持ってしまってやむを得なく買うにしても一番ちっさいロットで買うんだぞ!ぜったいにカバー画像みたいにアホみたいな量で買ってはいけない。数年残り続けるから。マジで。


1.郫県豆板醬(ぴーしぇんとうばんじゃん)

有用度:★★★★★☆
持て余し度:★★★★★
主な効能:麻婆豆腐がいきなり本格化する
主な難点:本格中華以外の使い道なし・塩分多すぎ

豆板醤には種類があり、一般的に普通のスーパーで見かけるのはこんな感じの赤くて粒が細かくて唐辛子と塩気が利いた、日本の「かんずり」の友達みたいなものが多い。
一方、中国食材店で主に売られているのがこの郫県豆板醬だ。全体的に赤茶色の味噌で、溶けかかったソラマメやトウガラシがゴロゴロ入っている。
男には誰でも、何かのきっかけで狂ったように麻婆豆腐作りに明け暮れる時期がやってくるが、その時に絶対に辿り着く調味料でもある。(辿り着かない者は情報収集力や行動力や本気度といったパラメーターが欠如している。)
それはさておき、この郫県豆板醬の効能は素晴らしく、味噌の中にふんだんに含まれる塩蔵発酵ソラマメから出る旨味と塩気、そして中国唐辛子の独特な辛ウマさが家庭の麻婆豆腐にもビッとした輪郭を与え、使うだけで麻婆豆腐の仕上がりがいきなり数段階アップする。葉ニンニクとか黄ニラとか手切り肉とか豆腐の下茹でとかがはっきりと些事になるくらい、それはもう明らかに仕上がりに差が出る。挽肉を炸醤で用意するよりも影響力は大きいのではないだろうか。もちろんこの郫県豆板醬は麻婆茄子みたいな派生料理にも適合する。やったぜ!
これだけなら本当に素晴らしい調味料なのだが、明らかな欠点もあり、それは「本格中華にしか使い道がないのにデカすぎ塩辛すぎで、いつまでたっても無くならない」ということ。無理して使うと腎臓を中心とした内臓を壊すし本当にままならない。わが家の冷蔵庫には8年モノが存在しており、このペースだと10年後にも存在しているだろう。
買ってはいけない。

2.豆鼓(とうち)

有用度:★★★☆
持て余し度:★★★★★★
主な効能:中華がそこそこ本格化する
主な難点:中華以外の使い道なし・塩分多すぎ・調理めんどくさい

男に生涯何度か訪れる麻婆豆腐狂時代。その時に郫県豆板醬と共に辿り着く調味料といえば豆鼓だ。納豆と味噌の中間地点を塩漬けで干したような代物で、黒く湿り気のある大粒納豆のようなビジュアル。
この豆から出るコクと旨味と塩気が麻婆豆腐の仕上がりを上げてくれるのだが、しかし「発酵豆のコクと旨味と塩気」というのは先に挙げた郫県豆板醬でカバーできる領域であり、併用するとよっぽど気を付けなければ塩気のバランスが崩れる。本格麻婆豆腐を作りたいだけなら郫県豆板醬だけでいいのではなかろうか。
豆鼓のよくないところは郫県豆板醬と役割が被るというだけではない。使用にあたっては「軽く洗って水にしばらく漬けて塩抜きしていい感じのタイミングで水を切って表面の水分を拭った後にみじん切り」という工程を要し、はっきり言って面倒臭い。この工程をある程度はスキップしてもいいのだが、全部飛ばすと「噛んだら強烈に塩気と豆の旨味が炸裂する塩爆弾」が麻婆豆腐に点々と含まれ、一方で豆のコクと旨味と塩気は全体に広がらないというちぐはぐな状態になってしまう。何ともままならない。
一応郫県豆板醬より優れている点としては、唐辛子の風味が不要な中華にも使用できるというものがあり、たとえば「下処理した豆鼓を油で揚げるように炒めたあと、大ぶりに切ったピーマンを加えて絡ませさっと炒める」とか「下処理した豆鼓を油で揚げるように炒めたあとチャーハンを作り、その際は塩・味の素・醤油をごく控えめにするか入れない」といったレシピも成立する。
しかしやっぱりどうしても下処理がめんどくさいし、塩気が強いので思った以上に全然減らないし、無理して使うと腎臓を中心とした内臓を壊すし本当にままならない。
買ってはいけない。

3.ドライのカレーリーフ

有用度:☆
持て余し度:★★★★★★★★★★
主な効能:最初に調理してる時だけはカレー"やってる"気持ちになれる
主な難点:期待外れもいいとこ・乾燥工程で香りが99%オフ・食味悪し

男には麻婆豆腐狂時代と同じくカレー狂時代も訪れるが、その時に間違って飛びつきがちなのがこのカレーリーフ(ドライ)だ。
カレーリーフというのはオオバゲッキツ(大葉月橘)やナンヨウザンショウ(南洋山椒)・カレーノキ・カラピンチャ等と呼ばれる柑橘類の木の葉っぱで、南インドやスリランカのカレーに特徴的なハーブである。その効能たるや凄まじく、油でサッとテンパリング(※中低温をキープした油でスパイスやハーブを炒めて香りを油に移す工程)するだけで、心地よく爽やかでスパイシーでコクも感じられる青ミカン・山椒・ゴマのような風味が加わり、家庭で調理したカレーをバキっと一気に本格化してくれる。煮込みの工程に入れてもまた違った香りの表情を見せてくれるし、カレーの中に入れっぱなしでも噛んだ時にブワッと爽やかな香りと仄かな苦みが広がりある種の"リズム"を与えてくれる。「これを知ったらもう戻れない」という料理人も多数という、神域のハーブなのだ。生ならば。
これが問題のカレーリーフ(ドライ)になった瞬間、そういう心地よい香りはほぼほぼ消え去り、テンパリングしてもなんか青臭い匂いがついたかな?どうかな?ってだけになり、煮込んでも全然効果がないし、噛むと葉脈がジャギジャギして単に不快なだけという、どうしようもない代物になる。はっきり言って入れない方が全然いい。カレーリーフ(ドライ)に手を出すということは、輝かしき生カレーリーフの効能を知ってのことのはずなので、求める期待が全部外れることで喰らう精神的ダメージも半端ではない。
一応「ブレンダーやミルサー(※乾燥したものを破砕できるミキサーの一種)でパウダー状にしてふりかけると・・・」といった調理例も出てくるが、そんなんカスリメティの葉っぱのドライを揉み潰してふりかけるのでよくない??という具合。何もいいところがない。おまけに「乾燥した葉っぱ100g」はちょっとした枕くらいのサイズで届くので、何もいいところがないうえに大量で邪魔でもうムキー!!とキレて暴れるしかない。(ちなみにカバー画像の一番左がそれ。最終的にいらん紅茶茶葉とスパイス類全部を大鍋で煮込むやけくそチャイを数回やってなんとか消費した。)
このカレーリーフをいかにして日本で生の状態で入手するか?というのはカレー界隈での至上命題だったこともあり、そのへんのワードで調べると大森「ケララの風」店主の武勇伝なんかがゴロゴロ出てくる。色々な取り組みが成功して、また、たぶん日本が温暖化したこともあって、今日(こんにち)では限られた場所ではあるが生のカレーリーフを入手できるし、「生」には流石に劣るが性能8割くらいの冷凍カレーリーフなんかも流通している。なのでカレーリーフ(ドライ)に手を出す必要性は本当にマジで1mmもない。
買ってはいけない。

4.ブラウンカルダモン

有用度:★★★☆
持て余し度:★★★★★★
主な効能:マイナーなカレーに確かな"渋み"を与える
主な難点:使える範囲が狭い・普通のカルダモンでいい

カレー狂が膏肓に入ると手を出しがちなのが、このブラウンカルダモンだ。ビッグカルダモンやワイルドカルダモン、またはブラックカルダモンやロングカルダモン・ラージカルダモンといった名前で出ていることも多い。
ブラウンやビッグやワイルドが冠についている通り、普通のカルダモン(グリーンカルダモン)もある。普通のカルダモンはショウガの仲間の実であり、子供の小指の爪くらいのサイズの緑色~黄緑色をした莢(さや)に、黒い種が固まって入っている。スーッと爽やかで一種のお香のような強い香りがあり、特に莢ごと嚙み潰すと目が覚めるような衝撃が来る。この強い香りはクミンとコリアンダーとターメリックとチリパウダーと並び、カレーの"核"として作用する。カレーをスパイスから作るおじさん界隈では避けて通れないスパイスであり、様々な使い道があるので、普通のカルダモンの方は「買うな」判定ではない。むしろ常備してない奴はモグリ。
一方で問題のブラウンカルダモンであるが、普通のカルダモンとはショウガの仲間の実であり莢の中に黒い種が詰まっているという共通点はあるが、大きさが大人の親指第一関節くらいかそれ以上であり、見た目は茶色でシワシワという違いがある。色だけで言えばタマムシとウバタマムシの関係に近い。香りや味も違っており、普通のカルダモンに比べて爽やかさは半減し、お香っぽさがより土着的になり、代わりに煙りっぽさ・土臭さのようなものが大きく増える。なぜそうなるかと言うと、落花生のように地下に実を結ぶからで、掘り出して火で乾燥させないとスパイスとして出荷できないからだそうだ。なので高確率で土がうっすら付いているので、調理の際にはちょっと洗って拭いた方がいい。
料理に使うと独特の風味が渋みと深みを与え、インド料理屋の中でも本格的なとこのマイナーメニューや、「ダルバート」を謳うネパール食堂といったあたりの一種"泥臭さ"が出てくるのでテンションが上がる。
ならいいじゃん!と思えるが、実のところカレー狂時代でも「こんだけディープなカレーを俺も自宅で再現したぜ!」で喜んでいられるヤバい時期が過ぎ去ってしまえば「普通においしいカレーを食いたくねーか?」となり、そんなら普通のカルダモンでよろしがなとなるので、次第に持て余すようになる。幸いにして一緒にカレーを食べてくれるご家族ご友人がいる場合でも、多くの場合はブラウンカルダモンを使った料理よりも普通のカルダモンを使ったものをお出しする方が喜んでくれるだろう。
買ってはいけない。

5.ヒング

有用度:★★★
持て余し度:★★★★★★★★★☆
主な効能:野菜系カレーに確かな"香り"と"深み"と"味わい"を与える
主な難点:使える範囲が狭い・臭すぎる・家に置いていい代物ではない

カレー狂が膏肓に入ると手を出しがちなものが続く。このヒングもそうだ。
セリ科のアサフェティダという草の茎から採れる樹液・樹脂を固めて粉末状にしたもので、ヒングパウダー・ヒン・アギ・アサフェティダなどの別名があるが、"悪魔の糞"というどうかしてる異名も持つ。
その異名の通り、とにかく臭い。「そのもの」の鋭い匂いでは無いのだが、無対策だと「腹具合が悪くてオナラをし続けてる奴がいる宴会場」とか「田舎のボットン便所の汲み取り口に面した道」みたいに、じんわりと・しかし確かにそのあたりに"ある"ような空気が、どんどんストッカーを、そして台所を、気が付けば家を汚染していくという恐ろしいヤツだ。
余談ではあるが、仏教で「葷酒山門に入るを許さず」という標語があり、これは要するに「修行の邪魔になるから臭いものとアルコールは寺に持ち込むんじゃねー!」ということを表しているが、この"葷"部門にネギ・ニラ・ニンニク・ギョウジャニンニク・エシャロットと並んでヒングがランクインしている。昔から仏門修行の差し障りとなる"臭い"認定を下されているのだ。
匂いはこんなだが、料理の最初に油でじっくり加熱してやると悪臭は消え、代わりに飴色玉ねぎやフライドガーリックのような食欲をそそる香りに変化し、香りだけではなく味わいとコクを加えてくれて実に美味である。特にベジカレーやダール(※豆のカレー)には効果が大きい。
しかしやはり常時の悪臭は耐え難く、ポリ袋を二重三重にして厳重に封印して保管するしかない。それでもじわじわ貫通してきたりする。完全な封印に成功したら成功したで、存在自体が忘れ去られてしまい数年後に湿気を吸ってベタっとなった無残な姿で発見されたりする。なぜ家でこんな呪物の封印まがいのことをしなくてはならないのか。
買ってはいけない。

6.スパイスハーブ味塩の類い

有用度:★★★★★
持て余し度:★★★★★☆
主な効能:料理が手軽に美味しくなる
主な難点:全部その味になるからすぐ飽きる・塩なので大量消費不可

例としてマキシマムを挙げさせてもらったが、これはクレイジーソルトでもほりにしでも何でも同じことである。
だいたい味塩こしょうの発展形というか、塩がメインで味の素が入り、場合によってはカツオ節やビーフエキスといった動物性の味もオン、胡椒を中心にローズマリーやガーリックパウダー等のスパイスハーブを混ぜましたというような商品。
焼いただけの肉でも野菜炒めでも、振りかけるだけでお手軽に料理の味をキメてくれるので最初は重宝するのだが・・・3割くらい使ったところで急激に減るスピードが減衰する。難点はそう、何でもかんでも全部同じ味同じ香りになってしまうところだ。
これに気付いてしまうと後がキツい。最初はよく思えた香辛料の組み合わせにも飽きが来るのだ。その上、塩だけでなく色々なものを入れている都合上賞味期限も早い。味塩こしょうという古い組み合わせの商品が全然ビクともせず残っているのは、ミニマムで万能だからなんだねと気付いてしまう。
「この味がいつもの味で全然いい」という気に入り方をするならいいのだが、言うてこれ"塩"なので、大量消費がほぼ不可能。一応「塊肉を買ってきて全面に塗(まぶ)して塩漬け肉を作る」という最終手段はあるが。
買ってはいけない。

7.スモークウッド

有用度:★★★☆
持て余し度:★★★★★★★★☆
主な効能:自家製燻製ならではの楽しみがある
主な難点:いろいろ面倒・数回やったらもういい

男たるものやはり一度は自家製燻製には手を出すもので、燻製に欠かせない燻煙のリソースがこのスモークウッド。上に挙げたのは細かい木の粒を練り固めてあり、必要分だけ切って使うタイプだが、単に木のチップを袋詰めにした製品など、タイプはいろいろある。
燻製にもいろいろ道があり、素材の調達から機材から温度調節から何から何まで最上級最難関のスモークサーモンは永遠の憧れとして(さておくとして)、スモークナッツ・燻製玉子・燻製肉くらいはこのような記事を参考に、フライパンと金網とスモークウッドを用意すれば後先考えずに手を出せてしまう。出せてしまうのだが。
少し考えたら当たり前の話ではあるが、食材が変色するくらいの煙を発生させて食材に浴びせるということは、食材に当たらなかった煙はフライパン(や燻製器)に当たるし、そこから出た煙は換気扇に全部吸われるわけではなく家の壁や柱にも当たるという事実がある。つまりベタっとした茶色いタールが、フライパン(や燻製器)と換気扇、そして壁や柱に付着するという事であり・・・後始末が・・・何故燻製がキャンプの定番なのかの意味が頭でなく心で理解・・・というわけで、家の中でやるのはあまりにオススメしない。
もちろんこんな段ボール製スモークハウスも売られており、こういうので屋外でやるならそんな心配はない。耐久性もソコソコあり、雨に濡らしたり火加減間違えて燃やすとかしなければ、最低でも5回は使えるだろうか。屋外で煙を出せる環境があればこっちでやることを断然オススメする。
なお、燻製肉をやるにあたっての肉の下準備は、他でもないスパイスハーブ塩の類を大量消費するまたとないチャンスでもある。
しかし燻製という行為自体も悲しいことにやってるうちに自分の中のブームが去っていくものであり、業務系スーパーでイイ感じの塊肉を見定めて買ってトリミングしてグラム量って塩とハーブを計量してソミュール液作ってジップロックに肉塊を漬けて5日待って流水で塩抜きしてバットに置いて冷蔵庫で乾かしてピチットシートで仕上げて肉を吊るしていざ燻製!って会心の工程を踏んだはずなのに妙に苦酸っぱい出来になって、その後食べたロピアのベーコンになんでこの値段でこの味出せてるのかわからないって感想を持ってしまったりすると自然ともうやらなくなってしまう。結果、いつまでたってもストッカーに鎮座する使いさしのスモークウッドが誕生してしまう。
買ってはいけない。

8.長粒米

有用度:★★
持て余し度:★★★★★★★
主な効能:カレー"やってる"感MAX
主な難点:コンロ1口占有する価値・日本米で十分

話がカレーに戻る。家でスパイスから作るカレーを余裕でできるようになり、ホールスパイスも十数種類常備し、チキンマサラだけじゃなくてダルカレー・チキンドピアザ・サグカレー・ゴアンフィッシュカレー・ポークヴィンダルーなどとレパートリーも増やし、なんならアチャールも数種類作って・・・となると米の方にもこだわりたくなる日がやってくる。そして早晩手を出すのが長粒米だ。
インディカ米とかバスマティライスとかジャスミンライスとかいろいろ名前はあるが、品種だったり銘柄だったりバラバラなのでここでは「長粒米」とする。日本(で一般的な)米と違って細長くてパラパラしたアレだ。
これに手を出すほど脳にカレーが回ってしまった人間は間違いなく「湯取り法」という調理法をやるのだが、これは「鍋に多めのお湯を沸かし、麺類のように長粒米を茹で泳がせる。規定時間が経てばザルに開けて水を切り鍋を洗う。洗った鍋に米を戻して弱火で水分を飛ばし、火を止めて蓋をして蒸らす」というもの。
よく考えてほしいが、長粒米が欲しいタイミングというのは大概がカレーを作っている時であり(いやシンガポールチキンライスってセンもあるが)、そのカレー調理と並行してコンロを1口占有してこの「湯取り法」をやるわけだ。手数が多いし物理的に邪魔だしでまあ面倒。
それで「やっぱ長粒米しか出せない"味"があるなあ!」となればいいが、悲しいことに日本のコメのスペックが高く(そして食べなれていることもあり)、「そんなにかぁ?」となること請け合い。そして米であるからには賞味期限もあるし、1kg単位で売られているとはいえ調理前のデンプン1kgを短時間に消費しきるのはなかなかに難しい。ササニシキ買って固めに炊飯器で炊くとか、サトウのごはん(概念)の長粒種バージョンを買うとかした方が絶対いい。
逆に「おうちでビリヤニ!」くらいまで"至って"しまうと欠かせない食材になるが、そうそうそうはならないので。
買ってはいけない。

9.ダル

有用度:★★★
持て余し度:★★★★★★★★
主な効能:カレー"やってる"感MAX++
主な難点:乾物の、豆

ダルとは豆の事で、ダールという表記もある。
インドを中心としたカレー圏では、ヒンズー教なら牛肉NG、イスラム教なら豚肉NGといった具合に宗教上の理由で食べられない肉が多く、またそもそも菜食主義者も多いため、抵触しない豆のカレーが広く食べられている。そのため、本格的インドカレー店やスパイスカレーの現地派の店ではメインのカレーと一緒に出てくることが多い。つまりダルに手を出す時点で脳にカレーがだいぶ回っているということだ。
ダルにもいろいろ種類があり、ムングダル・チャナダル・ツールダル・ウラドダル・マスルダルなどが手に入りやすい。そしてそれぞれのダルで(当然ながら)味や食感や風味が異なる。ダルの種類から来る味や食感や風味は確かに違うのだが、動物性の食材と比べれば風味はニュートラルなものであり、テンパリングしたスパイスの風味がよりダイレクトに反映されるので、スパイスカレー調理の楽しさは間違いなくある。
しかしすべてに共通することがあり、これらは乾物の豆である。
乾物の豆であるからには、調理前に洗って水に漬けて何十分間みたいな工程が必要で、めんどくさがって飛ばすとなんか芯が固くて生煮えでどうにもマズい代物が出来上がってしまう。
そして乾物であるからには、想像以上に水を吸って膨らんで体積が増え、出来上がりの量が増え、一度に消費できる量が少ない。元々メインのカレーと別の添え物として作っているものだから尚更だ。つまり買ったが最後、いつまでたっても無くならない。
どうしてもダルを添えたい場合は、まずはこのようなレトルトで試すのがよいのではなかろうか。
買ってはいけない。

10.グンドゥルック

有用度:★★★★☆
持て余し度:★★★★★★★★
主な効能:カレー"やってる"感MAX+++++++
主な難点:それ以外のすべて

グンドゥルックとはネパールの発酵乾燥青菜である。野沢菜に似たアブラナ科の植物をベチベチ叩いて繊維を破壊して干し、その後水に入れて放置、天然の乳酸菌で発酵させて、発酵したら干すという製法で作られるらしい。
これに辿り着く時点で脳のすべてにカレーがくまなく回りきっているか、さもなくばデイリーポータルZの記事を読んだかみたいな代物である。
グンドゥルックは流石にAmazonにも取り扱いがなく、スパイス専門店でもインド人やネパール人がやってるガチなとこ(日本人より圧倒的に在日インド人ネパール人が客として多いとこ)でしかまず置いていない。これ通販やってるティラキタはすげえなの意を表する。
さてグンドゥルックだが、カラシ系の辛さがあり酸っぱく、青臭いなんかの漬物って感じのものであり、確かにネパール系のカレー定食(ダルバート)を家で再現しようと思う際に、これの炒め物とか、これ入れたダルカレーとかやったらビッと決まるなあとは思う。が、残念ながらそれ以外の使い道はほとんどない。ほとんどないというか、コイツが登板すると強制的に"超本格ネパールの味"になるので、「カレーを作るぜ!」というテンションの時にも「なおかつ今日はダルバートだぜ!」まで行かなければ出番がない。「カレーを作るぜ!ゴアでキメるぜ!」って気分でポークヴィンダルーとゴアンフィッシュカレーとダールとラッサムとアチャール用意したときとかは邪魔になるのが明らかなので「カレーを作りたいときに積極的に忌避されるカレーしか使い道のない食材兼調味料」という謎の立ち位置を占める。まあどう考えても持て余すよね。
カレー狂の到達点のひとつとして記念に買うならまあ、止めはしないが・・・
買ってはいけない。

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