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粗さが目立つエロゲ系クラウドファンディング

まあタイトルが言いたいことのほぼ全てではあるのだが。

「金を出してない奴がワーワー言うな」という意見がある。この手の話にはつきものだ。確かにそうかもしれないので、今回は筆者がかつてクラウドファンディングで支援したプロジェクトだけで見てみよう。しかしこの「支援」という名前もどうかと思うな。要は購入であり売買契約に他ならないものに変な名前をつけてるのが諸々の粗さにつながってる面は明らかにあるでしょ。まあ話が進まないのでそれはさておき。

過去支援したプロジェクトたち

粗さ① 納期の粗さ

上掲のプロジェクトのリターン送付(≒商品発送)の予定と実績は以下の通り。

planetarian アナログ盤 制作プロジェクト
CF終了:2017年6月
リターン送付 予定:2017年9月 実績:2017年10月 遅延:1ヶ月(33%)

【リトルバスターズ!10周年ミッション】「クドわふたー」劇場アニメ化プロジェクト
CF終了:2017年9月
リターン送付 予定:2019年9月 実績:2020年11月 & 2022年9月 遅延:14ヶ月(58%)
(※特典すべての完遂でリターン完了と捉えた場合、遅延は36ヶ月(150%))

Key「planetarian」フル3D VRアニメ化プロジェクト
CF終了:2018年1月
リターン送付 予定:2018年4月 実績:2018年4月 遅延:なし

OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト
CF終了:2018年10月
リターン送付 予定:2019年6月 実績:2019年12月 & 2020年11月 遅延:6ヶ月(75%)
(※特典すべての完遂でリターン完了と捉えた場合、遅延は17ヶ月(212.5%))

餅月ひまり初オリジナルアルバム制作プロジェクト!
CF終了:2022年10月
リターン送付 予定:2022年12月 実績:??? 遅延:最低でも1ヶ月(最低でも33%)

最後のものは実績???としているが、ヘッダ画像で貼った通り延期すなわち遅延が確定している。遅延についてはYouTubeで触れただけで、クラウドファンディングのサイトでは現時点でまだ一言も書かれていないが。(後でも触れるが、どやねん、それは。)
※【追記】CF受付終了45時間後の2022年10月26日21時、正式に延期の報告があった。YouTubeで触れた「2023年初頭完成予定」に加え、手術の影響による期間不明の延期が発生する可能性があるとのこと。

いや~~~納期面だけでも酷いもんでしょ。前受金を貰っといてこれって、もう明らかに客をナメてんのよ。モノ売るってレベルじゃないよ。
クラウドファンディングはよくない商習慣。即刻廃止すべき。



粗さ② 案内の粗さ

まあ百歩譲ってやむにやまれぬ理由があって延期・遅延しますと、そうであったとしても、すべてにおいてあまりにも案内が雑というのもエロゲ系クラウドファンディングの特徴だ。主に支援者(=出資者・購入者・客)に対して公開される「活動報告」から、案内の粗さを見てみたい。

上掲プロジェクト群で遅延があった中、最も遅延が軽微な「planetarian アナログ盤 制作プロジェクト」の場合。
これはコンピュータゲーム『planetarian』のBGMやボーカル曲をフルグラフィックの特殊なアナログ盤(レコード)にプレスしたものを支援者限定で予約販売するという内容で、2017年6月に終了し、同年9月送付予定が10月送付となった。その後の一般販売はないが、商品はこのようなもの。

これがCF受付終了直後の活動報告。

planetarian アナログ盤 制作プロジェクト 終了報告&スケジュール

いやいや、CF受付終了時点で「送付が10月になるかも」って既に分かってんじゃないの。一言「当初9月送付予定でしたが、フルグラフィックのアナログ盤のプレス数が多くなる都合上、お届けが10月になりそうです。申し訳ございません。」とかなんで書いとかないの。しかも最終的には、こう。

planetarian アナログ盤 制作プロジェクト 発送完了報告

いやいやいや、9月末~10月上旬に発送作業するって案内しといて、しれっと送付した報告が10月末になっとるやないの、オイ!1ヶ月程度の遅延は遅れの内に入らんというんか!ええ?!
・・・でも他を見ていくとたぶん"そう"なのよね。これなんか遅延がごく軽微だし、案内も丁寧な方だよ。恐ろしいことに。
※筆者としては、ちょっとは引っ掛かりがあったが他がヤバすぎることもあり、この件に対しては別段現在含むところはない。と書き添えておく。流石に他と一緒にされたら可哀そうだ。

次に「【リトルバスターズ!10周年ミッション】「クドわふたー」劇場アニメ化プロジェクト」の場合。

これはコンピュータゲーム『リトルバスターズ!』のスピンオフ作品『クドわふたー』を劇場アニメにしたいです!そのアニメBD新録主題歌CD等のグッズを支援者限定で販売します!更に高額支援者にはクレジット記載・試写会招待・完成記念パーティー招待などもあります!という内容。元々2年を予定していた長期プロジェクトのところ、なんか色々あって14ヶ月もリターンが遅れ、さらに予定通りのスケジュールで進行していればかすりもしなかったはずの新型コロナウイルスの影響で支援者参加の完成記念パーティーが延々開けず、すべての完了は今年の9月(CF受付終了から実に5年が経過)というツワモノだ。(2017年9月終了・2019年9月送付予定→2020年11月送付、全特典完遂は2022年9月)
活動報告をタイトルだけ一部抜粋するとこんな感じ。

タペストリーとビッグタオルのデザインが完成しました2017/10/20 21:37
アクリルアートパネルが届きました!」2017/11/15 19:25
Bコース~Dコース発送準備整いました!」2017/11/27 17:04
CAMPFIRE AWARD受賞しました!」2018/03/23 10:58
リターン送付の延期と監督交代のお知らせ」2019/03/26 22:49

わかります?これ。9月末のCF受付終了後、11月末までは投稿があって、4ヶ月飛んで翌3月末に受賞の報告。その次は1年後(受付終了1年半後)にいきなり「完成が1年延びます!監督交代です!」って。ちなみにこれ、その間の投稿はありません。・・・いや流石に?

【リトルバスターズ!10周年ミッション】「クドわふたー」劇場アニメ化プロジェクト活動報告一覧 2019年3月末時点

流石にその後は反省したのか、(要約すると)「すみませんでした」「お詫びの品送ります」「脚本一部公開」「打ち合わせしてます」「コンテできました」「インタビュー録りました」「インタビュー載せました」等と、メインのリターン送付までは月イチ程度のペースで活動報告がある。がしかし、当初納期が受付終了の2年後のところ、半年後から1年半後までは何の音沙汰もなく、あった音沙汰が「1年延期します!」ってそれは無いでしょう。最終的に更に2ヶ月延期したけど、これに対してはきちんと報告もあったので、インパクト的には些事。なお、先にも触れたが、高額支援コース限定の完成記念シークレットパーティーはコロナ禍にモロにひっかかり会場選定等が難航したらしく、2022年9月まで開催できなかった。実に5年。Keyで言えば1999年に『Kanon』でデビューして翌2000年に『AIR』をリリースして延期延期の3年を経て2004年に『CLANNAD』を出すまでがちょうど5年。(まあ、これは正直なところ、延期の長さを嘘ではない最大限まで誇張する意図の5年なので話半分に聞いてもらえばいいが。)
しかし記念パーティーを除いた本体部分でも、2年予定が3年2ヶ月と大幅延長され、2017年9月時点では2019年9月リリース予定だったものが2020年11月リリースになったわけで、2019年10月の消費税増税8%→10%はどう対応したのか気になるところだ。消費税は、前受金を売上高として計上するタイミングで発生するはずなので・・・

続いて「OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト」の場合。

これはPCゲームメーカーOVERDRIVEの最終作『MUSICA!』を開発するので、支援者には額に応じてゲーム本体や各種グッズ・バージョンアップのパッチ・打ち上げライブの視聴権・完成記念パーティー参加権等を販売します!という内容。2018年10月終了・2019年6月送付予定→2019年12月送付、全特典完遂は2020年11月。このプロジェクトは活動報告数241と、報告自体はむちゃくちゃ頻回にやっている。

OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 活動報告数(241)

じゃあ何が粗いか?報告の、言葉だ。当初「こうします」をめちゃくちゃ饒舌に書いてたと思えば、キワになって都合が悪くなったら「こういう事なんで!」ってしれっと流して自分で言ったことを守らない。なら最初から言うなよという内容だらけで正直呆れる。色々あるが冗長になるので、具体的には「発売延期と一般販売について」に絞って見ていく。

※画像のエリアを読み飛ばしたい人向け※
・当初「2019年6月にリターン送付・一般販売はリターンが届いた1ヶ月後」と宣言
・「発送後に発売日を告知することで発売延期を無くせる」構想を発表(2019/1/18)
・しれっと3ヶ月延期を発表(2019/4/3)
・突っ込まれて3ヶ月延期をお詫び、正式に2019年9月発送と報告(2019/4/5)
・10月下旬発送になると報告(2019/6/18)
・10月下旬発送の話は触れられず「10月中旬体験版リリース」に変更、一般販売の発売日を12月20日にし、リターン送付は「その相当前」と表明(2019/9/3)
・11月下旬発送に変更、一般販売の発売日は12月20日で変わらず(2019/9/30)
・台風の影響もあり11月末~12月初頭発送に変更、一般販売の発売日は12月20日で変わらず(2019/10/18)
・最終的に発送開始が12月10~13日へ変更、一般販売の発売日は12月20日(2019/11/28)

OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/1/18[開発日誌66]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/4/3[開発日誌82]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/4/5[開発日誌83]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/6/18[開発日誌100]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/9/3[開発日誌126]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/9/30[開発日誌140]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/10/18[開発日誌149]
OVERDRIVE最終作「MUSICA!」開発プロジェクト 2019/11/28[【重要】リターン発送開始日について]

結局、支援者のメリットとしての「一般に先行してゲームプレイできる期間」は最大でも1週間しか確保できずというオチに。「無論、パトロンの皆さんには相当先に送付するぞ。最近よく読まないで喚く奴いるから一応書いておく」とは何だったのか。だいたい客を「喚く奴」呼ばわりってマジで何。この言葉が象徴的だが、言葉の節々に粗さを感じるのは筆者だけではないだろう。
都度の引用は控えるが、リターンの発送が遅延し続けている期間中、転売を強く牽制する言動や、このゲームの一般販売はいかに販売店の利益率が高い設定かを得々と語る言動、「架空の音楽雑誌」の制作・無料配布に力を注いでいる旨の発信が活動報告でたびたび行われていた。それら全ては支援者の利益と直接関係がないか、あるいは支援者の利益と対立するものですらあるため、活動報告をすればするほど反感が出てくる不毛なアナウンスだったと記憶している。

余談ではあるが、活動報告を読み返していると「作品の文中に出てくる商標名」や「作品に出てくる楽器の形状の著作権」等の知的財産権周りの処理に苦労して時間を割いている旨の記述が多く、どうにも気になった。額面通りに受け取るならば、それらは日本国内において一般的に商標侵害や著作権侵害の対象外となる典型例であり、本当にしなければいけない仕事だったのか大いに疑問がある。一方、先行登録済みの商標の関係でタイトルを『MUSICA!』から『MUSICUS!』に変更した件については、公開情報からも抵触がわかるわけで、事前に調査をしておかなかったことが仇となった形。活動報告内では商標ゴロのような存在を強く示唆する書き方をしているが、先行登録はごく真っ当な登録に思える。知財周りの判断にはどうにもピントのズレが感じられ、これらが別の理由による遅延のカバーストーリーでないとすれば、変な思い込みがあるか、変な人に騙されてるか、あるいは両方ではないだろうか。

最後に「餅月ひまり初オリジナルアルバム制作プロジェクト!」の場合。

これは「エロゲが大好き!」という切り口でYouTuberをやってる餅月ひまりさんがオリジナル楽曲のアルバムをこのたび作ることになりましたので支援してください!例によって支援者には額に応じて曲データやCD・グッズ・クレジット掲載権等を販売します!という内容。つい先日の2022年10月24日に終了した。リターンはサイト上で2022年12月送付予定となっているが、CF受付中の時点で既に「楽曲数が増えて制作延期!2023年初頭にお届け予定!」とYouTubeで言っている。が、CFのサイトでのは2022年10月26日現在、12月送付予定のままであり、納期遅延のアナウンスもなし。
他の完了済プロジェクトと異なり、支援者に対するマトモなアナウンスはまだまだ可能な状況なので、ぜひ先行事例を他山の石とし、適切な案内を行っていってほしい。
※【追記】CF受付終了45時間後の2022年10月26日21時、正式に延期の報告があった。YouTubeで触れた「2023年初頭完成予定」に加え、手術の影響による期間不明の延期が発生する可能性があるとのこと。可能な限り早いタイミングでのアナウンスを、まずは評価したい。

最後のはまだ挽回可能だが、総じてまあ案内面はボロボロ。
クラウドファンディングはよくない商習慣。即刻廃止すべき。



粗さ③ 企画の粗さ

クラウドファンディングは、ある意味「型」ができすぎていて今や茶番みたいになっているところがある。
・開始当日か翌日に早々の当初目標達成
・おっつけで「まぁ~まだちょっと無理かな」って額までストレッチゴール設定が発表
・全体期間の40%位までの日数、停滞しつつもダラダラ支援額が伸びストレッチゴールがじわじわ消化
・全体期間の半分近辺で生放送!ストレッチゴール含め詳細内容をUP!
・そっから全体期間90%くらいまでダラダラ支援額が伸びる
・最後の1週間とか2日とかでまた生放送!最後のストレッチゴール発表!そのままの勢いで全部達成!Totalで300%OVER!ヤッター!
↑マトモに支援額を達成するCF、だいたいこうじゃない?
まあそれは構造上仕方ないとしても、今回、中間発表のストレッチゴール詳細設定がこのようなものだった。

餅月ひまり初オリジナルアルバム制作プロジェクト! 2022/9/16発表ストレッチゴール

確か1500万円強集まってる状況で、あと150万・300万・400万積めば曲が増えますよと。ほうほう。そんでそんで?

餅月ひまり初オリジナルアルバム制作プロジェクト! 2022/9/16発表ラスボス

今から400万円ほど上積みしたらこの人が作曲しますと。あのさあ。
この形で名前出すのはすごく失礼な話
じゃないか?一線超えてるよね。
だってもし達成できなかったら「あ、オメーの看板では400万ぽっちも集まんなかったわ。ラスボスって神輿で出してきたけどしょっぺーファンすら居ないオワコンなんすねw」ってなるでしょ。ならない?いや絶対なるよね。
そうなると、そうはさせないために何らかの方法で足りない400万は何としてでも突っ込む用意があるぞと、陣営がマトモなら備えてるわけで、じゃあ他人の名前を出す時点でそれは達成されること前提の茶番じゃねーか。ふざけんなよと。

ケーキで例えようか。
「今度パーティーやります。いま確定してる分では不二家さんと銀座コージーコーナーさんとキルフェボンさんに特製ケーキ作ってもらってます。ケーキは参加人数によって更に増えるかも!予定としては◯人増えると更に1個!」←まあ、ここまではいい。
「最終的に1500人集まると!あの!パティスリーSATSUKIさんに発注できます!みんな集まって!!」←どう考えてもアカンやろ。
パティスリーSATSUKIさんに「うちのパーティーに1500人集まったら、そちらに特製ケーキ発注したいので、そのつもりでいてもらっていいですか?パーティーの宣伝もよろしくおねがいします!」って頼むか?二重三重にありえないよね?そういうことです。

ご本尊がヨソのクラウドファンディングの神輿になっちゃったファン目線から整理するとなおのこと酷い。
A:即座にストレッチゴール達成
 →チョロwこれからも頼むわ金づる君たちw
B:期限キワキワまでにじわじわストレッチゴール達成
 →ケッ、しょっぺーファンしか居ねーのかよ!
C:ストレッチゴール達成できず
 →ざっこwしょっぺーファンすら居ないマジモンのオワコンじゃねーのw
絶対こうなるし、比較的マシなBを選ぶしかないし、事実今回はそうなった。

いくらなんでも企画が粗いし、もうちょっと上手い事やれんかったのかと。誰が考えて誰がGoしたのかわからないが、もし当のYouTuberさん本人が思い付いた案だとしても、こんなものはプロデューサーなりキュレーターなりの肩書の人がきちんと止めて、明らかな茶番には見えない綺麗な出し方をしないといけない。何のための肩書か。

もうこれで明らかにわかったように、
クラウドファンディングはよくない商習慣。即刻廃止すべき。


以上より導かれる結論

クラウドファンディングはよくない商習慣。即刻廃止すべき。


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