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サントリー映画『天気の子』を君は見たか

概要

本日(2021年1月3日)21時、新海誠監督作品『天気の子』が地上波初放送された。まだ視聴されていない向きのためにネタバレ抜きで書くと、あらすじは概ねこうだ。

「離島・神津島から東京都心へ家出してきた少年・帆高は、しかしすぐに生活に行き詰まり、離島からの連絡船で知り合った男・須賀の事務所に転がり込み、須賀のライター業の手伝いを始める。異常気象で連日雨が降り続く東京。母を亡くし、弟と二人だけで暮らす少女・陽菜と知り合った帆高は、陽菜の"祈ると100%晴れにできる"不思議な能力を知り、陽菜とその弟・凪と共に、"晴れ屋"を始める。連日の雨の東京の中ですぐに大人気となる晴れ屋。楽しい日々を過ごす帆高と陽菜たちだったが、しかし帆高に捜索願とある容疑がかけられていることから警察に追われることに。3人で異常気象下の東京を彷徨い、警察から逃れ、ようやくホテルに落ち着いた3人は楽しいひと時を過ごすが、しかし運命は―――」


『天気の子』は、数多くの企業と協力関係を結んだ結果、膨大な数の店舗や商品、あるいはサービスがそのままの名前と形で登場する。神津島と東京の連絡船さるびあ丸、帆高が困ったらすぐに相談するYahoo!知恵袋、その投稿を行うAppleのiPhone、東京生活で最初の拠点にしたネット喫茶マンボー、その個室で啜る日清のカップヌードルにどん兵衛、夕食に入ったマクドナルドなど、冒頭10分程度でざっと目に付くだけでもこの調子だ。その中でも、全編を通してサントリー製品の出現回数と執拗さはえげつないことになっている。この記事では、上に書いた「あらすじ」の範囲内で、サントリー製品その他をできるだけ拾ってみようと思う。視聴前に、あるいは視聴後に、答えあわせ感覚で読んでもらえれば幸いである。


実例集

01:マンボーのドリンクコーナーがペプシ

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ペプシはコカコーラと共に、アメリカの…いや世界の2大コーラに数えられるブランド。日本では紆余曲折の結果、1998年よりサントリーが飲料事を展開している。帆高が東京生活で最初の拠点にしたネット喫茶マンボーのドリンクコーナーとして、この映画の中でおそらく最初のサントリー関連として出現。あまりに一瞬なので、今回見直して初めて存在に気付いた。


02:歌舞伎町の雑居ビルの自販機がサントリー、ゴミ箱がBOSS

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BOSSは1992年からサントリーが展開するコーヒーブランド。東京生活に行き詰まり、風俗のボーイをやろうとして断られ続ける帆高がうずくまった雑居ビルの店頭にて出現。ゴミ箱左下の空き缶は「みかん」と書いてあるが、おそらくサントリー製品ではなく架空のものだと考えられる。どことなくファンタオレンジ(コカコーラ社製品)の旧デザインっぽいし、サントリーのみかん飲料と言えばなっちゃんだし。


03:猫のアメを見つけた先にPremium BOSS缶

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見直してあまりの偏執狂的サントリー押しに笑ったシーンその1。先の雑居ビルで子猫を見つける場面。


04:ぶちまけたゴミ箱の中にペプシコーラとC.C.レモン

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C.C.レモンは1994年からサントリーが発売するレモン味の炭酸飲料。こちらも続きのシーン。雑居ビル入り口でスカウトマンに絡まれて転ばされ、ゴミ箱をぶちまけてしまった帆高。サントリーの自販機脇のゴミ箱なので当然サントリー製品が満載。まあ、変なものも入っているのだが。


05:事務所の最寄り自販機がサントリー

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連絡船で知り合った須賀を頼り、彼の神楽坂の事務所に赴く帆高。この映画、はっきり映る自販機はサントリーの自販機と覚えてもらって差し支えない。


06:事務所入り口にサントリービールの通函

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スナックの居抜きをそのまま転用している須賀の事務所「有限会社K&Aプランニング」。ここまでご覧の諸賢はもう驚かないだろうが、入り口のビール通函に、サントリーの文字が当然入っている。


不明1:事務所バーカウンター上のボトル

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いやこれ何だろう、見たことある気がするしこの流れ絶対サントリーのウイスキーでしょ、と思うんだがわからなかった瓶2つ。識者の意見求む。

追記:テレビの右側にある瓶は「サントリーウイスキー ヤングプレジデント50周年」あるいはそのコンパチが有力。(参考:ジャパニーズウイスキーデータベースwiki)


07:事務所冷蔵庫のサントリー天然水

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サントリー天然水は1991年発売の「南アルプスの天然水」に始まり、取水地が増えるなどの事情から名称変更を行いつつ、現在国内トップブランドのミネラルウォーター。この映画に出てくるミネラルウォーターは、視認できる限りすべてこのブランドである。


08:事務所バーカウンター上の「角瓶」

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サントリーウイスキー"角瓶"は、サントリーの前身となる壽屋時代の1937年から発売を続けている、日本最古級のウイスキー。先ほどの謎ウイスキー2本の奥に、僅かながら顔を覗かせている。


架空1:夏龍ビール

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事務所に帰ってきた須賀が、帆高に投げてよこしたビール。この映画は「明らかな解像度を伴う飲料製品は基本的にサントリー製品」というルールの裏に、「ただし未成年飲酒につながりかねないシーンは架空の製品」というルールも存在しているようだ。夏龍というビールは存在しないが、「SINCE 1978」という年号も特に意味は無いのではないのだろうかと思われる。ただしデザインは思いっきりキリンのそれを意識している。


09:ザ・プレミアム・モルツ

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ザ・プレミアム・モルツは2003年からサントリーが全国発売している生ビール。いわゆる「プレミアムビール」の嚆矢であり、大手ビールメーカーのシェア争いでキリンやアサヒそしてサッポロに大きく水を開けられていたサントリーがシェア3位に浮上する原動力となったブランド。須賀はこの後、ビールはプレモルしか飲まない。


10:事務所原稿執筆中

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須賀が持つプレモルの裏に伊右衛門とサントリー天然水。伊右衛門は京都の老舗茶輔・福寿園とサントリーのコラボで誕生し、ペットボトル緑茶飲料国内シェア2位を持つサントリーのブランド。


架空2:ゆめここち

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帆高の歓迎会で出された架空飲料。外観はサントリー「ほろよい」に酷似しているが、「ゆめここち」という缶チューハイ・缶カクテルは存在しない。見てのとおりだがC.C.レモンとザ・プレミアム・モルツも大写しで並んでいる。余談になるが、このシーンでは劇場公開時に「飲み会でC.C.レモンは無いやろ。未成年おるってもそこはコーラとかやろ…」と違和感を抱いたが、小説版を読むとこのシーンではコーラが供されていたことには苦笑を禁じ得なかった。


11:オールドグランダッドとカナディアンクラブ

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オールドグランダッドは1796年に誕生したとされ、現在は米国ケンタッキー州のジム・ビームの工場で生産されているバーボン。これはおそらく「オールドグランダッド114」のオールドボトルと思われる。カナディアンクラブは「C.C.」の愛称で知られる、カナディアンウイスキー。いずれもビーム・サントリーとして世界展開するサントリーの取り扱い品。事務所の掃除をする帆高の右側、バーカウンターに並んでいる。しかしオールドグランダッドのレギュラー品はサントリー扱いとして、114の方は専ら横浜市中区不老町の食品輸入会社・有限会社ウイックが日本に持ってきている気がするのだが…まあビーム社で作ってるからいいのかな。いいんでしょう。


12.赤玉スイートワイン、サントリーホワイト、サントリーソーダ

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奥の棚の帆高の頭の上の部分、上段中の区切りの右側に赤玉スイートワイン、真ん中にサントリーホワイトが。そして須賀の手元にサントリー ソーダが確認できる。赤玉スイートワインは、サントリーの前身となる壽屋が1907年に発売し、洋酒事業全般の発展の礎となった甘味果実酒。かつては「赤玉ポートワイン」の名前で販売されていたが、ポルトガルの本家ポートワインとの商標上の紛争を回避するために1973年に改名。サントリーホワイトウイスキーは、同じく壽屋時代の1929年に発売された、国産ウイスキー第1号。元々は単に「SUNTORY WHISKY」として販売され、通称「白札」とされていた。現在のサントリーホワイトウイスキーとして発売されたのは1960年から。サントリー ソーダはブランドページなどがパッと調べた限りでは見当たらず、歴史などはよくわからなかったが、このブランドは割り材用としてかなり前から(知る限り少なくとも25年以上前から)あるもの。帆高に居留守を使わせつつ須賀が晩酌するシーンで登場。先ほどのオールドグランダッド114とカナディアンクラブも、このシーンのほうがよくわかる。帆高の顔の右にあるボトルと、カウンター上の須賀の手元にあるボトルははっきりわからなかったが、サントリーと関連するものか架空の商品かのいずれかだろう。

追記:コメント欄で下段右の区切り、帆高の顔の右のボトルはラベル変更前のグレンフィディックではないかとの情報をいただいた。確かにトールボトルのラベル上下に特徴的な曲線のラインが入るデザインはグレンフィディックと思える。グレンフィディックはスコットランド・ハイランド地方のスペイサイド中心部にあるダフタウン地区のスコッチウイスキー蒸留所にして、同蒸留所が製造するシングルモルトウイスキーの製品名。複数の蒸留所のウイスキーを混ぜて販売するブレンデッドウイスキー(有名なブランドはジョニーウォーカー、バランタイン、デュワーズ、ホワイトホース等)が主流の中、単一の蒸留所だけの酒を瓶詰めして販売する「シングルモルトウイスキー」のはしりになったとされる。その名前はゲール語で「鹿の谷」を意味し、牡鹿のマークが特徴的。また、このボトルはそうではないが、三角柱型の瓶も特徴のひとつであり、グレンフィディックをメインの原酒として使うブレンデッドウイスキー「グランツ」も同じ三角柱型の瓶を使用している。作中に出てくるのは、色合いと瓶の形状からしてグレンフィディック18年だろうか。そしてグレンフィディックも、当然サントリーが輸入・販売している。


13.歌舞伎町路地のBOSS缶

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見直してあまりの偏執狂的サントリー押しに笑ったシーンその2。わかりますか?


14.事務所バーカウンターの角瓶

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先ほどの角瓶がくっきりはっきり映るシーン。後ろのもサントリー製品ぽいんだけど、識者の意見求む。ところで、劇場で見た時は帆高がノーパソで執筆しているシーンに角瓶が大写しになっているカットがあったように記憶しているのだが、このカットはソフト化にあたって無くなったんだろうか。それとも見間違えだったのか?


15.事務所のプレモル

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プレモル。はい次。


16.事務所バーカウンター棚中のサントリーオールド

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サントリーオールドウイスキーは特徴的な瓶の形から「だるま」の愛称で知られ、高度経済成長の時期に「水割りで食中酒として飲ませる」二本箸戦略がヒットして同社の代名詞的存在となったウイスキー。須賀の事務所の女性、夏美が就活に出て行くシーン。いままで帆高の頭に隠れたりして出てこなかった中央下段の真ん中に、サントリーオールドの姿が認められる。また、はっきり確証は持てないが、サントリー角瓶や、グレンフィディック12年ないしピュアモルト(あるいはピュアモルト8年)が映っているようにも。というかこの棚、中身がけっこう頻繁に入れ替わっているような気が・・・


17.田端駅の自販機

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当たり前のようにサントリー。陽菜の家を訪ねるシーンにて。


18.フリマの差し入れ

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"晴れ屋"の初仕事にて。この世界で水といえばサントリー天然水なのは言うまでもない。


19.フリマの屋台と受付

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サントリー天然水なんだよなあ・・・


20.フリマの帰路

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フリマの場所はお台場、お台場といえばサントリー本社。劇場でクッソ笑ったシーン。こちらも劇場公開時はもっとクッキリSUNTORYが映っていたように記憶しているが、見落としなのかカットされたのか見間違えなのか…


21.体育の時間

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東京はずーっと雨が続いてんだよなーというシーン、モブの水分補給に選ばれたのは当然のようにサントリー天然水でした。


22.神宮外苑花火大会

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勘のいい皆さんはもうお気付きでしょう。看板にペプシとプレモルがあることに・・・


23.面接会場

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第一志望の御社の面接官も、当然ですがサントリー天然水を選んでいます。


24.逃走劇

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逃げ出した先にも、当然サントリーの自動販売機はあります。


25.事務所バーカウンターのメーカーズマーク

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メーカーズマークは1本1本手作業でつけられる赤い封蝋が特徴のサントリーが扱うクラフトバーボン。作中に出てくる普及製品「メーカーズマーク レッドトップ」は非常に強いバニラと木の芳香を持ち、甘い口当たりとほのかな木の渋みを味わえ、個人の趣味趣向こそあるものの「これぞバーボン」と言って差し支えない。2000円程度で全国各地のスーパーで普通に買える製品であるのが俄かに信じがたい出色の出来。サントリーの良心面といえる。事務所のバーカウンターで止めたタバコに手を出して、酔いつぶれる須賀の傍らに・・・置いてるけどこれよく見たら未開封じゃない???


不明2:夏美の傍らの謎のウイスキー

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先のシーンの前後で、夏美が飲む謎のウイスキー。New Piers TruthでMALT & GRAIN BLENDED WHISKY SINCE 1973らしいが、どちらもよくわからない。まずシーンごとに瓶の形状が変わっているので分析不能とするが、角ばった形状の時の外観はジャックダニエルに―――特にそのオールドボトルに―――酷似している。(なお、ジャックダニエルは現在アサヒビールが輸入しているが、かつてはサントリーが輸入していたこともあった。まさに画像の瓶の形状の頃には。)


26.ホテルのルームドリンク

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リプトンは19世紀スコットランド出身の商人であるサー・トーマス・リプトンが興した世界的紅茶ブランドであるが、日本では缶とペットボトル事業を当然サントリーが手がけている(なお、紙パック飲料は森永乳業)。東京を彷徨った末になんとかホテルに落ち着いた帆高と陽菜と凪の夕食。サントリー製品のみならず、ローソンや日清の製品もふんだんに並んでいて、広告戦略の面目躍如たるシーンである。


27.だからこれ以上、僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください。

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サントリー ピュアモルトウイスキー 山崎。



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