見出し画像

苦楽

エンタメにおける楽しいとは何か?
参加者・視聴者、運営、関係各所等、全員が楽しいと感じるエンタメを作るには何が必要かを我々は追求し続ける。

1. エンタメを追求する団体の設立

 最初にGood Game Companyという団体設立に迫る為に私の昔話をしておきたい。
 私は2015年11月よりYouTubeにて配信活動を開始した。当時はYouTuberという職業がそれほど浸透しておらず、友人にYouTubeで配信活動を始めたと言えば失敗するだけだとよく笑われたものだ。配信内容としては視聴者参加型配信(配信者が一方的にゲームで遊ぶ様子を配信で垂れ流すのではなく、配信を見ている人と一緒にゲームで遊びながら配信をする形式)を行っており、実際に会ったこともない人達と共に同じゲームで遊び、共に配信で盛り上がる様子を当時理解してくれる人が非常に少なかった。
 その後スマートフォンのゲームをLIVE配信したいと思い、Mirrativに1年ほど活動拠点を変更し、荒野行動というTPSゲームの配信を始めた。
 当時はまだルーム機能等の実装もされておらず、Silverというチームが界隈で一番強かった時代だった。私も当時はまだ若かったので頂点に上り詰める為に毎日視聴者と共に練習を重ねて様々なチームと戦い、ゲームを楽しんでいた。
 しかし若さはいつまでも続かない。大学を卒業する頃にはそれまでのように十時間ほどの配信を毎日行うことが出来る体力はなくなり、配信者としての活動から引退することを心に決めるようになっていった。私の配信者としての灯が消え去ろうとするのと反比例してeスポーツという単語が流行し始めた。そこで私は視聴者参加型から派生させて、全員が楽しめる今どきのことをやりたいと思い、CoDモバイルのバトロワモードを用いた大会の開催を発表した。CoDモバイルがリリースされて間もなくの頃で、バトロワモードを熱心に取り組むユーザーはそれほどいなかったが、もともと荒野行動の配信者であった私の周囲にはバトロワモードでの大会を心待ちにするユーザーが集まっていた。
 その配信を自身の配信者としての人生に幕を下ろそう。そう思い最後に相応しい大きなイベントにしたいと思っていた。そんな中、京都の和菓子屋の京菓堂が賞品の提供を行って頂けることとなり、配信プラットフォームであるNimo_tvより独占配信を行わせてほしいとの連絡を頂いた。
 これこそがオンラインイベント運営団体Good Game Company始動の瞬間であった。
 どうすれば参加者と視聴者に楽しんでもらえるのかを考え、企業に協賛してもらい、関係者も運営をした私たちも楽しむことが出来たイベントとなった。これがエンタメを追求する団体を設立したきっかけであり、オンライン上でのエンタメを開催する者としての神髄になっているであろう。

2. 突飛な発想と実績のない事柄は相手にされない!?

 配信者としての活動に幕を下ろし、オンラインエンタメを作るオーガナイザーとしての活動へと移行した後、私は大きな壁に当たることとなった。配信者として活動をしている時は、自身が配信をすることで集まる視聴者の数に対して興味を持ってくださる企業は幾つかあった。しかし、配信者としてではなく自身が面白いと思うイベントを企画してみても、eスポーツのコミュニティ大会という文化がそれほど根付いていない当時は、前例のない突飛な発想として相手にされないことが多々あった。
 最初は私自身のポケットマネーから賞金を出して面白いと思うイベントを開催しながら参加者数等の実績となる数字を作る活動を行った。しかし個人で用意出来る賞金には限界があり、企業が求めるような数字を獲得するまでに必要な定期的なイベント開催には全く持って資金が足りなかった。
 その頃の私は、参加者数を増やすには賞金額を多くする他に方法がないと思い込んでいたこともあり、企業へ営業時に賞金に使うためのお金を出してほしいと話していた。
 しかしながら、常時32人程の大会開催実績しかない団体では宣伝効果があると感じてもらうことが当然ながら出来ず、アポイントメントを取る段階で相手にされないことが多かった。
 当時は既に大手の企業が大会プラットフォームと呼ばれる一定条件を満たす大会に対して賞金等の提供を行うトーナメントサイト等があり、個人開催のコミュニティ大会の多くはそこを用いていた。
 私は幾度かそのサイトを用いることも検討したが、それでは団体としてのオリジナリティを作れないと思った。コミュニティ大会で獲得できる参加者数の数字はどこの団体もそれほど差がなく、10人程度~150人程度というそれほど大きくない数字でしかなかったからだ。
 イベント運営においてオリジナリティを出すためには、外部ツールを使うのではなく独自のツールや技術開発を行うことが必須なのではないかと考え、イベントに参加してくださる32人程の参加者からもらう意見や、直すべき点を重く受け取めて改善を重ねることを決めた。
 そんな中、設立から9カ月ほどが経過した2020年の夏頃に日本学生eスポーツ協会/Gameicが、当団体主催イベントを公認大会として支援してくださるというチャンスを得た。タイトルとしては以前からコミュニティ大会を開催していたShadowverseに加えて、ゲームをダウンロードしたことすらなかったApexLegendsの2つで決定した。公認大会として支援をもらえるとは言っても、他のコミュニティ大会と差別化を出来るように規模が大きなイベント開催をしたいと考えていたので、追加の協賛獲得に向けて営業活動を続けることとした。開催したことはなかったがApexLegendsが3人1組で遊ぶゲームであることや、過去に荒野行動やCoDモバイル等で活動をしていた経験から優勝賞金1万円×3人で、32チーム96人程度は参加するであろうと考えていた。
 しかし実際に3カ月間営業をする中でこれまで開催したことがない上に、スナイプ方式という非常に特殊な方法でPS4ユーザーのみを集める方式での開催であったことなどから『前例のないもの』として理解してもらうまでに困難を極めた。
 そんな中、スカウトリーグというプロ選手育成の場を提供している会社の社長にアポイントメントが取れ、提案を行わせて頂ける機会を得た。
 大変ベンチャー気質の強い方で、『新しいことへの挑戦』として協賛を受け入れてくださった。
 後に当時の話しを聞くと「前例も実績もないにも関わらず、自信満々な顔をして成功させますと言うので、面白くてかけてみようと思ってしまった」とスカウトリーグの社長は仰っていた。
 初開催となった2020年11月の大会時には、当初想定していた32チームを大きく上回る71チーム(213人)のエントリーを獲得した。
 突飛な発想と実績のない事柄でも成功すると信じて諦めなかったことが結果に繋がった瞬間だった。

3. イバラの道は成長への道

 大会プラットフォームを用いずに大会運営を行うというイバラの道を選んだ当団体は、Apex Legends大会初開催の際に洗礼を受けることとなった。
 プラットフォームを用いる場合、参加者からの結果収集と反映が非常に容易であるが、個人でスプレッドシートとdiscordを用いて行っていたことから、チーム名の記載がない報告の確認や、不正がないかの確認等を2, 3人で行おうとした結果テンヤワンヤになり、2試合目が終わっても1試合目の結果反映が出来ていないという事態に陥ったのだ。
 当然参加者から大会後のアンケートにて『運営の反省点はどこですか?』という質問に、「結果反映が遅すぎる」「運営がグダグダ過ぎてイライラする」等、不評のコメントが多数寄せられていた。しかし、これまでに大会等があまり開催されていなかったPS4のユーザーをターゲットにしていたことから、次回大会に対する期待度は高くアンケートの『運営陣へ一言』には、「めげずにまた開催して欲しい」や「大会そのものは面白くてよかった」等のポジティブなコメントが多かった。
 そこで私ときつねは翌月に開催の第2回大会に向けて、スプレッドシート内の関数を組み上げて、当日は届いている結果を入力するだけのスキームを作り上げた。それにより各試合の結果を次の試合終了までの間に出すことが出来、第1回大会の時の雪辱を晴らすことが出来たのだ。大会後のアンケートでも参加者満足度が高く、前回の改善点を直したことに対するお褒めの言葉が大半を占めていた。
 しかし、次から次へと問題は出てくるものだ。第3回大会時は参加者も運営側も少し慣れてきたことがあり油断もあったのだろう。エントリー時とチーム名が合わない結果報告が多数発生し、最終の結果発表を翌日に持ち越す事態となってしまった。参加者からは「参加者側のミスが目立った」という意見や「運営側の準備不足」という意見の二極化していた。当然運営側としてそういったイレギュラーの発生を想定していなかったわけではないが、第1回と第2回大会時に発生件数が少なかったことから油断をしていたことが敗因となった。早急に改善を行い、第4回大会時にはチーム名での報告ではなく、エントリー時のチーム番号で結果を報告してもらう仕組みに変更した。(半角や全角、漢字や仮名文字等によるチーム名の照合が出来ないケースが多かったことから数字であれば問題がないだろうと考えた為)
 ところがそう甘い話ではなかった。数字での報告故に結果反映そのものはこれまでにない程早い速度で行えたが、エントリー時のチーム番号を間違って認識していたチームも多数いたことから、修正の時間を要してしまい最終結果発表はまたしても翌日に繰り越しとなってしまったのだ。
 敗因は明らかで、スプレッドシートの見方を参加者全員が理解出来ている訳ではないことを運営陣が理解していなかったことであった。
 第5回大会時からは大会開始前にエントリー時のチーム番号を画像でdiscordにて参加者に共有することでチーム番号の認識を間違えるチームが激減し、試合終了後十数分で結果発表が出来るまでに仕組み作りが出来たのだ。
 大会プラットフォームを用いずにオリジナリティを出そうという強い決意と、スナイプ方式という非常に特殊なルールが相まって当団体の技術力はコミュニティ大会の中でも上位に食い込めるまで上がったのだ。

4. 自分の常識は他人の非常識

 2021年に入ると大会への参加者数も500人を超える等団体として出来ることや実績も大きくなってきた。それに伴って運営メンバーの人員不足に悩まされることとなった。新しい運営メンバーが入る度に私ときつねは自分たちが何をやっているのか、どういう作業をしているのかを伝えたが、大会当日に我々が求めるクオリティどころか、そこらへんで開催されているコミュニティ大会のクオリティにも満たない運営をする人が多かった。
 私ときつねの中では当たり前のこととして行ってきたことがどうして彼らには出来ないのだろうかと何度も憤りを感じたこともあった。しかしふとした瞬間に根本的なことに気が付いたのだ。『彼らの常識が我々にとって非常識であることと同様に、我々の常識も彼らにとっては非常識なのではないだろうか』この考え方は今でも後輩や新人を教える際には持つように心がけている内容である。
 私やきつねはただ大会を開催することがゴールなのではなく、参加者全員が満足したと言い、その上で参加者数を数千人や数万人に増やしていくという狙いがあった。それに対して運営を手伝ってくれる人の多くは、他より少しでも大きなイベントの運営に携わり楽しみたいということがゴールになっていた。
 この意識の違いがある限りどれだけ作業内容を説明しても同じクオリティを出すことは出来ない上に、参加者の満足度を全員マックスまで上げることは不可能であった。
 それほど器用でない私は教育のやり方を変えた。小手先の資料作成や言葉で新しく入った運営メンバーに伝えても根本的な私の考え方は伝わらないと思ったからだ。そして怒ることから考えさせることに伝え方も変えた。
 自分が何を一番大切に考えているのか、その上で何を成し遂げたいのか。大会を通じてどのようなwin-win-winな関係を作り上げたいのか等、意識部分を熱弁し、間違えている部分は問いかける方法で答えを探させた。
 その結果新規運営メンバーの出入りが激しくなってしまったが、私と同じ熱意を持ち同じ夢を見てくれる仲間を得ることが出来た。それが現APEX部門長のごえもんだ。
 私は壁にぶつかった時に必ず行うルーティンがある。『なぜ?』を考えることだ。今回は『なぜ?』を考えた結果、自分と他人の常識としての認識が異なる点に気が付き、対策を立てることに成功したのだ。

5. 本当に戦う相手は自分自身

 団体の成長に伴い外部の方から良くも悪くも評価や口コミを頂くことが多くなってきた。もちろん良い評価もあるが、良くない評価や悪意のある噂等を聞くこともある。
 大会後のアンケートとは異なり、恣意的な意見がSNS上や口コミではどうしても多くなることがある。無視しておいた方が良いという意見もあるが、私は全てに目を通すようにしている。
 昔好きだったドラマの中でこんなセリフがある。
 「現象には必ず原因がある」
 これは口コミや噂にも同じことが言えると考えている。
 良い噂の場合は何が良かったのかを分析し、その良さを今のGGCの強みとして更に伸ばせないかを考えるようにする。良くない噂や口コミが起こるときは、何かしらユーザーの中で思っていたクオリティに達していない点があった時に起こることなので、どのようなクオリティを求められていたのか等を分析することで更なる運営技術の向上を図るようにしている。また、恣意的な悪評や噂が立つ時は、その噂を立てている方の領域において何かしら当団体が脅威になっているという証拠に他ならないので、それを通じてその企業が今後どのような展開をしようとしているのかや、何が脅威になっているのか等を分析することで今後の戦略を練るようにしている。
 良い噂や意見を頂くと嬉しいので喜ぶが、良くない意見等も全て一喜一憂することなくしっかりと分析して今後の活動に活かせるようにしている。

本当に戦う相手は自分自身である

運営団体 Good Game Company
公式ホームページ:https://ggc-homepage.com/
公式Twitter:https://twitter.com/japanese_2019

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?