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着ぐるみの事情           ⑥キャラクターショー

初日の練習を終え、アクションの練習がどういうものなのかはわかったが、練習では着ぐるみを着ないのか?そもそも着ぐるみはどこにあんねん…と思っていた。                            

青春の事務所内に着ぐるみは置いていないし、このパンチ、じゃなくて右殴りは何と言うアニメのショーで使うんやろうか…と思っているうちに2回目の練習日になった。

初日に「練習行こうか」と声をかけてくれたライオン先輩、マンツーマンで教えてくれたあらいぐま先輩がいたので両先輩にこの日もついていった。

言葉少なめに一緒にエレベーターでマットを持って練習場所に降りると、1回目の練習では女性は私1人だったが、この日はもう1人いた。いとこのお姉さんが青春のメンバーらしく、自分も入ったのだと言う。話すと同い年だった。パインとの出会いだった。

いとこのお姉さんの方は、出演するショーが決まっているらしく、美少女ムーンの練習をしていた。

パインと私はアクションの練習だった。パインは何人かの先輩と親し気に話していたので上手なのかなと不安だったが、マット運動はどっこいどっこいだった。

そして円になって殴り蹴りなどをした後「パイン、このは、こっちこい」とあらいぐま先輩に言われ、もう一度最初から基本の動きを教えられた。

私とパインはすぐに打ち解け、仲良くなった。ゴールデンウィークに一緒のショーになったらいいなぁと思っていた。

話しているうちにゴールデンウィークにやるアクションショーとは今テレビで放送中の5人の戦隊物の「マルレンジャー」や、「ライダー甲羅」らしいことが分かった。                

「美少女ムーン」については世間で流行っていたから見ていなくても主題歌ぐらいは聞いたことがあったし、「正義パン」だって幼い頃みんなと同じように歌わされたり踊らされたりしたから知っていた。           

しかし戦隊物…。ライダー…。全く知らない。

そんなものを見聞きしていたのは何才ぐらいの頃だろうか…。見聞きどころか興味を持っていた時代もなかったような気がする。私の記憶が正しければ正義のヒーローに憧れたこともない。子ども番組の歌のおねえさんに憧れたことはあるが…。

よし!やったろうやないかー!私は逆に燃えた。家が、テレビのある部屋には居づらいというヤバイ環境だったので、あまりテレビを見て勉強しようという気にはならなかったが、かっこよく戦おうやんけ!と決意した。私はやったことがないことを始めるのが今でも好きだ。

私が思い描いていた「着ぐるみショー」は「キャラクターショー」になり、略して「キャラショー」になった。



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