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着ぐるみの事情           ①着ぐるみになりたい!

小さい頃から祖母の家の近くの宝塚ファミリーランドに現れる動物の着ぐるみが好きだった。人型のお人形よりも動物のぬいぐるみが大好きで遊んでいたので、それが人間ぐらいの大きさになって相手をしてくれるなんて、摩訶不思議な感覚でうれしかったように思う。私は着ぐるみを見かけるたびにそばに駆け寄り、くっついていた。 

小学校5年生の時、祖母の家に行き恒例のようにファミリーランドに訪れると、着ぐるみの口から中のお兄さんの顔が見えた。今思うと当時の名もなき動物の着ぐるみは、ほとんどが口から外を見るタイプだったのだと思う。   

よく「中の人」が見えると夢が壊れると言われるが、私は夢が壊れることなくショックを受ける事もなく、そのお兄さんに憧れ尊敬した。こんなに楽しそうに相手してくれてなんて優しい人なんやろう…!と思った。そばにいた他の子ども達が「中の人見えた!」「うそ?誰?」「男やで!」「見して見して!」とよく耳にするセリフが飛び交っていたが、私には関係なかった。むしろその動物さんを守ってあげたい気持ちになった。5年生の私は、着ぐるみの中は人間なのだともう知っていたし、その着ぐるみの演技にのったのか、のせられたのかは覚えていないが、とても自然に感動した。

その憧れを抱いたまま、高校生になり、卒業したら着ぐるみの人になりたいと考えるようになった。しかし着ぐるみに入るにはどうしたらいいのか見当もつかず、友人に言いまくっていた。するとある日友人の一人が「お姉ちゃんが友達と一緒にはりねずみホーリーの着ぐるみショーのバイトしたで。」と言った。そこで初めて着ぐるみのアルバイトが存在するという事を知った。


 



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