見出し画像

男性不妊と診断されて夫婦間で勃発した戦い〜先の見えない不妊治療に取り組む前に〜

(クローズアップ現代みたいなタイトルにしてみました)

↓前回

男性不妊と診断されたことを自分の奥さんに申告する時の心境と言ったら、とにかくどう振る舞えば良いのかが分からなかった。
うちの場合、結婚する前から子供を望む気持ちや不妊治療に対するそれぞれの考えを前々から共有していたので、幸か不幸か重たい空気になる事が簡単に予測できた。

あんまり深刻そうに話して空気が重くなればネガティブな方向へ話が進むかもしれないし、かと言ってヘラヘラ軽い感じで報告するのも違う。
人の人生を左右してしまうほど大事な、正直結婚するときより難解な局面を迎えた気がした。

伝え方が9割という本も読んだのだいぶ前だから内容忘れたし、今まで勉強して来たことなんて肝心な時に何の役にも立たないじゃないか、とのび太くんみたいにプンスカ怒ってみても仕方なく、家に帰って普通に報告した。

僕「〜という感じで、精子が全くいないという結果でした。不妊の原因は自分でした。」
奥さん「そう。」
僕「はい。」
奥さん「」


超気まずかった。
一応言っておくと、二人の上下関係は完全に奥さんが上なので、こういうとき僕は敬語で話している。

しばらく気まずい空気が充満した部屋には時計の音だけが鳴り響き、永遠にも感じられる時間が流れ、一晩中続いた雨も上がって太陽が東から昇り始めた頃(誇張)、奥さんは意見を述べた。それは以下のようなものだった。

①いつまで続くかも分からない治療に時間を浪費したくない。
②養子や精子提供といった選択肢は今の時点で考えをまとめる事は出来ない
③離婚して新たなパートナーを探す事が一番良いと思う


とにかく合理的な結論がものすごい速さで出てきてしまった。
こういう血も涙も無い決断を簡単に下せるところが好きなんだけども、僕は正直奥さんと一緒にいたいと思う気持ちがものすごく強かったので、反対意見を提示した。

・治療に取り組んでうまくいく可能性もある。
・期間を決めれば無下に時間を費やすこともない。
・その期間内でダメならきっぱり諦めて離婚するというのはどうか。


僕も正直言えば、離婚して新たなパートナーを探す事が最も合理的な選択だということに多少は賛成する。
でも、せっかく好きな人と一緒になれてうまくいっているのに、少ない可能性に賭けずに諦めるなんてそんなわけにはいかない。
時間を費やすことになるかもしれないけど、治療に取り組んだことは2人の為にも絶対に無駄な経験にはならない、とその時僕はそう言い切った。

この話し合いはその時だけで終わらず2〜3日続いたが、お互いの意見は変わらない。
少し内容は端折るけども、結果的には期間を決めて治療するという方向で合意した。

ただ、手術で結果が出なかったときや些細な喧嘩の時など不妊治療に取り組んでいる最中にも、気持ちの対立が再浮上して争うことは多々あった。
離婚するしないの話も、時間だけが過ぎていくことへの焦りも、お互いへの不満も含めて色んなことで喧嘩したが、大きく分けて3つの問題が顕著だったように思う。

1 時間の問題

奥さんの方が年上だったのもあり、年齢的な意識は奥さんの方が強かった。
男性も女性も30代を迎えると精子や卵子が劣化していくというのは研究で明らかになっている。
そんな日々劣化していくのが分かっている状態でゴールの見えないことに悪戯に時間を費やすことは、絶望的にもどかしいものである。

不妊治療は日々効果を実感するものでもなく、仕事をしていれば土日しか病院には行けないから診察にも時間がかかるし、手術まで2〜3ヶ月待たなければいけなかったり、さらにその様子を見るまで3ヶ月、といった具合でとにかく時間がかかった。

その度に、焦りも不安も生まれてくる。時間だけが過ぎていく。例えば離婚していれば、不妊じゃなかったら、この時間でどれだけのことが出来ただろうか。
いくら治療に費やす期間を決めたとしても、もうこれ以上は待てないという気持ちは当然生まれてきて、言い争いになる事が多々あった。

人生は一回しかないからお互い後悔しないようにといえども、そのベクトルが違えば分かり合えることは難しい。
自分の人生だけでなく、相手の人生についても深く考える必要があるように思う。

2 お金の問題

ここは僕も国に対して非常に憤りを感じている部分だが、不妊治療は保険外診療がほとんどなので非常にお金がかかる。
子育てに対する支援は厚くなってきたように感じるが、それより前に子供が作れないと意味がない。
お金の問題で不妊治療を諦めている人はどれくらいいるんだろうか。

こんな100万単位でお金をかけてまで子どもが欲しいのかと疑念に苛まれたり、金銭的な余裕の無さが心にも直結してストレスを感じたりする。
うちは二人ともそれぞれのことはそれぞれの財布から出しているので、治療費や手術費もほとんど自分で払ってきた。
それについては何とも思ってないけれど、手術の結果が良くないことで言い争いになった時には、一円も払ってないのに何なんだよという気持ちが生まれてしまった。

お金は人の生活においてとても大切なものだが、それが原因で大切なパートナーとの関係にヒビが入ってしまうのはとても悲しいことである。

余裕を持って治療に臨める経済状況なのか、無理してでも夫婦で協力して治療に取り組む覚悟があるのか。
お金に対する考えや経済状況をしっかり話し合ったり、実際にどれだけお金がかかるのか事前に調べておく事が重要である。
(今後、自分が何にいくら使ったのか記事にする予定です。)

3 将来の問題

子どもが欲しいか、欲しくないか。あるいは何人欲しいのか。
結婚する前や結婚当初など平和な時に話し合う人は多いかもしれないが、実際にその気持ちがどれだけ強いのか自分でも分かっていない人は多いかもしれない。

当たり前と思っていたことが当たり前でなくなった時、本当の気持ちが見えてくる。
上に挙げたような問題をどんなことでも乗り越えて絶対に子供が欲しい人。もしくはそんなに負担をかけてまで子どもが欲しいわけではない人。
養子や精子提供を受けることに前向きな人。子供がいなくてもパートナーがいれば幸せだという人。今までそんなこと考えたこともない人。色々いる。

子供は2人欲しいね、女の子と男の子一人ずつがいいね。そうだね。と一致していたはずの意見も転覆して、夫婦で意見が分かれるかもしれない。
ちなみに元々うちは子供1.5人欲しいということで合意してた。

決してどちらが良いと言えるものではないが、子供がいるのといないのとでは生活も人生も大きく変わってくる。
今一度、自分たちの人生について深く考え、思いを伝え合う必要がある。

・まとめ

不妊治療に取り組む前に、あるいは現在進行形で取り組んでいる方も付き合いたてのカップルも新婚の人たちもみーーーんな是非とも、これらの問題について話してみて欲しい。

二人の信頼関係とより良い未来のために。


この記事が参加している募集

スキしてみて

是非サポートをお願いします。 頂いたサポートはより多くの人に知っていただけるよう、宣伝や調査に充てさせていただきます!