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育児の中で、子供が気付かせてくれたこと

育児をする中で、親の方が子供から教えられることは数多くある。

その中で、私が子供たちに特に感謝したいのは、絵を描く楽しさに気付かせてくれたことだ。

私は、子供の頃、絵を描くのが得意ではなかった。決定的に苦手意識を持ったのは、中学一年生のときだった。「その瞬間」を今も鮮明に覚えている。

美術の時間に、三次元の立体的なものを作っていた。どんな素材で何を作っていたのかは記憶があいまいだが、私は思い描くイメージのとおり形にすることができず、試行錯誤を繰り返していた。

そんなとき、私の机のそばを通りかかった美術の先生が、私の作品をさっと手に取り、みんなに見えるよう高く掲げながら、私の作品を「失敗作」と呼んだ。それを聞いたクラスの子たちは、クスっと笑って、それから何もなかったように自分の作業に戻っていった。

今の私なら、「大きなお世話や、放っといてくれる?」という趣旨のことを失礼にならない程度の言葉遣いで言い返しただろう。でも、当時の未熟だった私は、ただ傷つき、その教師はおろか、美術全般が嫌いになってしまった

そして、「美術は嫌い」、「美術は苦手」という意識が定着してしまってからは、試しに絵を描いてみようなどと思うこともなくなった。

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息子は2歳を過ぎた頃から、日常生活で目にしたものをお絵描きしたがるようになった。我が家からそう遠くないところに公営の牧場があり、そこによく連れて行っていたこともあり、息子は、私に馬を描いてくれだの、豚を描いてくれだの要求してくるようになった

当時の私は、犬と猫を描き分けることもできないレベルだったので、正直困った。困ったが、愛する息子のためになんとか期待に応えようと、動物の絵本をお手本にして、クレヨンで動物の絵を描き始めた

それが始まりだ。

最初は、単純なラインのイラストを模写していた。意外にそれらしく描けることがわかり、恐竜やアニメのキャラクターなど、息子が喜びそうなものに次々と挑戦した。恐竜などは、筋肉の盛り上がりや表面の質感を表現するのが難しいが、その分やり甲斐があった。何よりも、私が描いた絵を見て、ぱっと目を輝かせる息子の反応が嬉しかった

子供にせがまれることがなければ、絵を描こうなんて思うこともなかっただろう。今では、お絵描きの時間はもはや子供だけのものではなくなった。横から口や手を出す子供に、「ちょっと今邪魔しないで!」と言いながらお絵描きに没頭する私がいる。

人生の楽しみの一つに、子供が気付かせてくれた。些細なことだけれど、このことがもたらした新たな気付きは、何事も先入観にとらわれず挑戦してみることの大切さだ。

子供のように好奇心に満ちた目で生活を見つめ直すと、何気ない日常の中に様々な楽しみが転がっているかもしれない。






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