見出し画像

わたしが思うに、例えばあれはナンバーガールの衝撃


人は、これまで得てきた知識のどこにも当てはまらないものを見たとき、それをどう表現する生き物なのでしょうか。

これまで、わたしの人生において色々な「きっかけ」となってくれたアーティストを1組ずつ、エッセイとしてnoteに書いてきました。思っていた以上に「わたしの人生、大体音楽で語れてしまうんだな」ということがわかってきて、わたしの人生における音楽の存在の大きさに改めて気づいたし、当時の自分の思いを言語化するのがなかなか大変で、これまでどれだけ自分がイメージだけでぼんやりと生きてきていたかに愕然としました。結構ショックでした。
就活とか関係なく、ちゃんと自分の「好き」な気持ちをどこにでも伝えられるように言葉にしておく作業の大切さに気づきました。今後もnoteを使って、この作業を引き続きがんばっていきます。もし趣味が合ったら、また読みにきていただけるとうれしいです。

そしてここまで書いて、この「言語化できない感想」をうまく消化できず、ただもどかしい思いを抱えながら聴いていたバンドがいたことを思い出しました。

NUMBER GIRLのことです。

それまで聴いてきた、どの音楽にもカテゴライズしきれなかった衝撃を与えてくれた彼らのことを文章にしていくのは、わたしにとってかなりの挑戦です。どのようにまとめられるかいつもより不安ですが、よろしければお付き合いください。


出会い

NUMBER GIRLを初めて聴いたのは、高校2年に上がる少し前でした。高校では軽音楽部に入ったのに、周りにTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを知っている人がまったくおらず、1年のあいだはひたすら絶望に近い悲しみをおぼえていました。
結局自分ではコピーもできませんでしたが、予想外なことに2つ上の先輩にミッシェルのコピーをされていたバンドがいて、パートが同じだったベースの先輩とは、ご卒業されたあとに時々メール(当時、フィルタリングのブロック対象にLINEが含まれていたので…)でお話をしていました。そのとき、その先輩がいちばん影響を受けたというNUMBER GIRLを教えていただいたのです。

せっかく教えていただいたからには聴かねば!感想もお伝えせねば!と思ったわたしは、すぐにTSUTAYAに行き、ネットで名曲と聞いた「透明少女」収録のメジャー1stアルバム、『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』をレンタルしました。

めちゃくちゃ聴きやすかったです。

アジカン(ASIAN KUNG-FU GENARATION)やベボベ(Base Ball Bear)っぽさをとても感じるメロディとサウンドで、シンプルに聴きやすくてかっこいいと思っていました。彼らよりシャウト成分多いなとは思いましたが。
そのときは知りませんでしたが、この2バンドは特にナンバガからの影響をもろに受けていることを公言している両名なので、「っぽさ」を感じて当たり前といえば当たり前なのですが…

アジカンなんて、ROCK IN JAPAN FES. 2014、3日目GRASS STAGEのトリで突然「透明少女」のカバーをしています。当時の観客置いてけぼり。最強に攻めてます。


これはハマるかもしれない、と思ったわたしは、先輩に「とてもかっこよかったです!他のも聴いてみます!」とメールで伝え、次のアルバムを借りに行きます。
その「次のアルバム」が、3rdアルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』でした。

どう表現したらいい作品なのか、少しもわかりませんでした。

まず1曲目「NUM-HEAVYMETALLIC」を再生した瞬間から流れる、万歳三唱。万歳三唱…??? そして向井さんが何と言っているのか、初見はまず聴き取れないと思います。
全体的に「和」の雰囲気を感じるメロディが特徴ですが、途中で突然テンポが変わったり、とにかく前のアルバムに感じた聴きやすさは全くなくて聴いている間にひたすらハテナが浮かぶような、いかにも前衛的な雰囲気のアルバムでした。いや、オルタナってそういうジャンルなのかもしれないけれど…

なかでも、3曲目「NUM-AMI-DABUTZ」を聴いたときの衝撃は忘れられません。noteを書きながら久しぶりに全曲聴いてみましたが、アルバムのなかでもこの曲と「NUM-HEAVYMETALLIC」だけちょっと浮いているような気もします。

MVからすでに異様ですが、なにより異様なのは向井さんのボーカルスタイルです。歌ってないのにもはやボーカルと言っていいのか?
「歌う」ではなく「語る」、そして「叫んで」いるのです。

規則正しいビート、ギャンギャンに歪んだギターにはロックの要素を感じますが、これは… ロックでいいの???
もうよくわからなくなりました。

先輩には、他のアルバムも聴きますと言った手前なにかお伝えしなくてはと思って、前と同じように「かっこよかったです!」とメールしました。でも、送信したあとも「ちゃんと理解できないばっかりに、かっこいいとしか言えない自分が情けない」とか、そもそも「これは〈かっこいい〉という表現で果たして適切だったのか?」と考えてしまい、ずっとモヤモヤしていました。今でもモヤモヤしています。
アジカンもベボベも憧れるすごいバンドのはずなのに、ちょっとわたしには聴くのが早すぎたのかもしれない… 当時のわたしは自分の音楽的素養の足りなさ、そして表現力の足りなさを痛感し、落ち込みました。


衝撃、鋭くなって

『NUM-HEAVYMETALLIC』の難解さに凹んだあと、わたしはリベンジのように2nd『SAPPUKEI』を借りに行きました。なんと、こちらは割と楽しく聴けました。

この時点からサウンド面ではなんとも表現しがたいよくわからないことになっているけれど、それに博多弁が不思議とハマって他にはない聴こえ方をしてきます。
ナンバガのなかでも、理由はわからないけれどよく聴く曲の1つが「URBAN GUITAR SAYONARA」なのですが、冷静に聴くとこのサウンドもだいぶおかしい展開です。でもなぜかよく聴きます。なんだか童謡のようなメロディとピアノがメインのサウンドが(比較的)かわいらしく、耳に残ったからでしょうか。
それよりもアルバムバージョン、サックスの音の妙な存在感のクセよ。意図を想像しようとしても、さっぱり見当がつきません。話題になった、米津玄師「Lemon」の”ウェッ”なんて霞んでしまうレベルです。

また、アルバム未収録だった「鉄風 鋭くなって」がハマりました。

『NUM〜』が当時のわたしにとってあまりにも前衛的すぎて、その後に聴くナンバガの楽曲はすっかり頭にハテナを浮かべながら聴くものとなってしまっていたのですが、この曲だけは曲の展開も素直だし『SCHOOL GIRL〜』ぶりにすんなりと聴けました。リリース時期としては『SAPPUKEI』の次にあたるシングル曲ですが、アルバム収録曲よりも聴きやすい印象でした。

なので、余計にあの魔物のようなアルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』が難しく感じました。あれはいったい何だったんだ?
NUMBER GIRLが16歳のわたしに与えた大きな衝撃は、今のわたしにも鋭く刺さったままです。大きすぎて、その後のメンバーの活動まで追う気にはなれませんでした。


林檎嬢のお導き

アジカン、ベボベのほかにも、NUMBER GIRLのファンを公言しているアーティストは数多くいます。その1人が林檎嬢こと、椎名林檎さんです。
彼女は2003年のツアー『椎名林檎 実演ツアー 雙六エクスタシー』(このときのバックバンドがのちの東京事変1期!)にて「delayed brain」をカバーしているほか、フジテレビで放送されていた対談式の音楽番組『僕らの音楽』の向井秀徳回(2005/07/08)ではゲストとして登場、一緒にZAZEN BOYSの「KIMOCHI」を歌う場面がありました。照れながら恥ずかしそうに歌っている林檎嬢、新鮮でとても可愛らしかったです。

NUMBER GIRLは聴き始めたときにはとっくに解散していたし(2002年解散)、その後の向井さんの活動であるZAZEN BOYSは、なんとなく食わず嫌いしてしまって聴いていませんでした。でも椎名林檎は東京事変としての活動も含め、今でも10年以上聴き続けています。その曲も、林檎嬢の新譜だと思って聴きました。

「神様、仏様」です。

最初に浮かんでくる、あの文章の時点で完全に向井秀徳。
察したとおり、この口上は向井さんご本人が担当されています。CDの歌詞カード、特設サイトには名前の記載がありますが、MVへの出演もクレジットもなく、YouTubeのキャプションにも一切説明はないため、ナンバガやZAZENを知らない人には何が何やらだったかもしれません。
この曲を聴いたとき、「NUM-AMI-DABUTZ」を聴いたときのあの突然の語り口調への戸惑いや、ナンバガの歌詞でも頻繁に登場するあまりにも個性的な固有名詞、そして「NUM〜」以降の活動に、タイトルやバンド名からも現れている仏教からの影響が、パズルのピースのようにすっかり綺麗にはまったような感覚がありました。

これを言わせるなら、向井秀徳しかいない。
林檎嬢の声で言われていても、この迫力とちょっと不気味な雰囲気は出なかったでしょう。そもそもご本人ではされないとは思いますが…

この「神様、仏様」を聴いて、わたしはようやく「NUM-AMI-DABUTZ」の衝撃を、2年越しにちょっとだけ消化することができました。

ここで消化できた彼の「語り」スタイルが、THA BLUE HERBなど後にハマる日本語ラップも抵抗なく聴ける素養になったような気もするなと、今振り返ると思います。長くなりそうなので、こちらの部分はまたの機会にお話できれば。


再結成、その後

昨年2019年2月。ひとつのニュースが、ロックシーンを騒がせました。

NUMBER GIRL再結成。
そして、同年8月のRISING SUN ROCK FESTIVAL出演決定。

台風の影響で、ナンバガが出演予定だった16日は開催中止となってしまいましたが、その後もツアー開催・YouTube配信開催、さらにはFNS歌謡祭への出演など、活動は(中止公演も多いですが)今も続けられています。

現在のナンバガはまだ観られていないのですが、この夏にYouTubeで開催された「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2020 in EZO on YouTube」はしかと見届けました。

この前口上からワクワクがとまりませんね!

また、ギター・田渕ひさ子さんはBiSHのアユニ・DちゃんのソロプロジェクトPEDROにも参加されています。

「やったーー!!!」の声に笑ってしまいました。気持ちめっちゃわかる!


そしてこのnoteを書いて、ちょっと今ならZAZEN BOYSも聴けるかも… と思い、もう一度リベンジしてみることにしました。
まずはやっぱり「KIMOCHI」から。『僕らの音楽』で聴いたことのある曲なのもあって取っつきやすかったです。そして当時のベース・吉田一郎さん、最高のグルーヴ。やっぱりさすが!

そういえばZAZENはひなっち(日向秀和さん、現ストレイテナー・Nothing Carved In Stoneのベーシスト)もいたことがあるバンド。ベース弾きとしてはもっと早く聴くべきだったのかもしれないなあ…

Spotifyでも検索してみました。アルバム1枚しか配信されていないみたいだったので、人気順1位だった「ポテトサラダ」を聴いてみました。


…向井秀徳ワールド、なかなか一筋縄では攻略できない世界です。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?