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霞ヶ関を辞めた人間は一体どこに行っているのか

はじめに

 ぼくの観測範囲+Webサーチベースなのでかなり偏りがありますが、何かのご参考にいただければ幸いです。役所外の人も、ふーんと思って頂ければ助かります。

長いDisclaimer

 念の為ですが、このNoteは役所を辞めることを一般的に推奨するものではありませんあと完全にぼくの観測範囲ですので、めちゃくちゃバイアスが掛かっています。Twitterでもご指摘頂いておりますが、全員がこんなちゃんとした転職をしているわけではないですし、辞めた後役所から離れていった人もいます。

 その上で、何故リスクを冒してこのリストを作ったかですが、単純に私が限界係員だった時に、こういう情報があればもう少し前向きに働けたかなと思うからです。違う世界がある、いざ心身の限界が来ても辞める選択肢があると認識しているだけで、残る場合でも精神的に泳げる余地がぐっと広くなります。残業150時間以上が常態化すると、辞める/休むという発想自体が無くなります。そういう若手において、多少の気晴らしになればと思っています。

 また、ここに挙げられている人達は一見キラキラ前向きに辞めていって活躍しているように見えるかもしれませんが、多くの場合はそんなこと無いと思います。悩みながら役所を辞め、全く異なる仕事で苦しみながらなんとか生き延び、この瞬間においてそれなりにちゃんとやっている風な感じに見えているだけ、という方も多いのではないかと思います(私のことは書いていませんが私もこのパターンです。転職先では過労とメンタルで2回倒れています。3年後に食えているのかは未知数です)

 そのため、総合的に霞ヶ関より民間が良いと伝えたいわけでもそう実感しているわけでも全く無く、単に事実として私の見えている範囲の人達がどうなっているのかを整理しています。

本日申し上げたいこと

1. いざとなれば役人辞めてもなんとかなるので、現役の人達は安心して職務に邁進してほしいなと思っています。死にそうになったら休むか辞めるかしてくださいね
2. 霞ヶ関と民間の人材交流(出戻り含め)はもっと増えればよいですね

わたしの属性

・役所で言うと10年目くらいの総合職(退職済)
 ーそのため、5-15年目くらいの総合職の人が直接の観測対象になります

実名開示ルール

 ご迷惑をかけることを防ぐため、所属先のBioにお名前と出身官庁が載っている方についても、[1]別途Web上のインタビューに答えている or [2]事業部門の長(プロファームで言うとパートナー以上)以外は実名を記載しないことにします
 実名を記載している方も、ご迷惑であればすぐ消しますので個別にご連絡くださいませ。

①コンサルティングファーム

 私の身の回りでは、という留保付きですが、なんだかんだでこれが圧倒的に最大勢力です。特にMcK, BCG, Bainが多いです。今現役で在籍している人達だけでも、McKで約10名、BCGで10-15名、Bainで3-5名はいるはずです。流動性も高いので、過去に在籍した方も含めるとその3倍は軽く超えると思います。
 MBB以外にも、ATKやRBにも1-2名いらっしゃった気が。また、総合系(EY, デロイト, PwC等)にも知る限りで5名は行ってます。地方創生等の文脈で役所のプロジェクトも多いので、移りやすいかもですね。逆に、総研系への転職は殆ど見ません。一人いらっしゃるかどうかです。(※5/3追記: 3名は行ってるという情報を頂きました。申し訳ありませんでした)
 意外に(?) 多いのが、経営共創基盤(IGPI)です。私の知る限りでも累計で4人行ってます。富山さんが役所でプレゼンス高いのと、再生系/地方系のPJが多いため、役人のやりたきこととも親和性が高いのかもしれません。ハードワーク気味ですが非常に良いファームです。
 コンサルに転職した人の出身省庁ですが、METIが最大勢力であるものの、かなりまんべんなく居ます。例外的に警察庁だけは見たことがないです。何故だろう…
 今残っている方で最も年次が上の方は、METI→McKの坂本さんかなと思います。(※6/18追記:MOFA→McKシニアパートナーの桑原さんのほうが年次が上かもしれません(未確認))
 BCGにもパートナー級がお二人(テレコム/外務)いらっしゃいます。マネージャー級で活躍されている方は結構な数が居ます。例えば元テレコムの岡部さん
 もうコンサルを卒業してしまった方も多数ですが、そういった方の行き先は適宜別途まとめます。一例だけ挙げると、コンサルで数年働いた後に、その方の古巣の省に中途で戻られた方がいらっしゃいます。こういう流れが増えると良いですね。
 なおこれは余談ですが、霞ヶ関ではないものの役所に近い属性の人は、コンサルにかなりの数いらっしゃいます。日銀/JBICあたりが多い気がします。意外と多い(と言ってもn=2ですが)のはPMDA(医薬品医療機器総合機構:要は薬や医療機器の承認してるところ)で、医薬品系の専門的なプロジェクトで活躍されています。

②総合商社

 多いです。知る限りでも6-7人居ます。METIや外務あたりがメインになると思いますが、第二新卒の間口も広いので、わたしの見えていない範囲でも結構な数行っている気がします。資源/通商畑のみならず、経済学/MPPの修士を持っている方がマクロ分析担当で行っている事例も見ています。
 【5/1追記】ご質問をいただいたので、マクロ分析担当で某総合商社に行った本人に、具体の職務内容を確認しました。主に、[1]各国のマクロ状況の分析 [2]各産業の動向分析を通じて各カンパニー(事業部門)の意思決定を支援するとともに、[3]幹部が対外的に発信する内容のサポートを行っているようです。要は役所の調査課機能ですね。
 あと、このマクロ分析やアナリティクス系のポスト、商社に限らず将来的にかなり可能性がある(枠が広がる)と思っていて、特に、METI本体や外務というより、エネ庁/国交省/農水/テレコムなど、産業軸が定まっている人の需要が大きいのではないかと思います。

③スタートアップ

 スタートアップに直接転職する方は最近増えてます。政策渉外だけでなく普通の事業企画として行く例が多いです。たとえばFreeeには、総務省の小泉さんMETIの山本さん等、優秀な方が多くジョインしています。もはやFreeeをスタートアップとカテゴライズするのはどうなんだという意見もありますが…
 社員数人のスタートアップに転職する例も。たとえばMETIの野村さんなど.他にも、世の中には出ていませんが、FinTechや自動運転系のベンチャーに行っている人がちらほらおります。ある程度自走できつつ、政策のランドスケープも分かる人材はスタートアップにおいて重宝されるのではないでしょうか

④GAFA

 GoogleとAmazonには複数人居ます。政策渉外ではなく、普通に事業企画をやっています。AppleとFacebookには知っている人がいません。

⑤日系メガベンチャー

 Yahoo、メルカリ、楽天、CAなどでちらほら見かけます。政策渉外や経営企画のみならず、「○○事業を立ち上げるから来てくれ」といって新規事業担当として引っこ抜かれた事例を見ています。あとリサーチ系のポストでも行ってます。
 最も有名なのは、上の方ですが、総務省→DeNAのCOOの岡村さんかと思います。他にも、METI→メルカリの吉川さんも有名ですね。

⑥超レアケース:金融プロフェッショナル

 逆に殆ど見ないのは、IBDやPEに役所から直接行く方です。知っている限りでは、MBA(M7)でファイナンスを専攻した後に、かなり若くして日系PEに移った方だけです。その方は非常に優秀であり例外的だと思います。(他にいらっしゃったら非常に興味深いので、是非情報提供いただければ助かります)
 【5/1追記】Twitterで、「役所から外銀に直入した事例がある」との情報を頂きました。もともと外銀も見てた人が第二新卒で行く感じでしょうか(全くの推測ですが)

⑦広告代理店

 私の周りでは2例だけです。一人は電博系のコンサルティング会社に行き、もう一人は電博のどちらかの本体に行きました。後者の方はかなり役人らしくないユニークなバックグラウンドですので、めちゃくちゃレアケースだと思います。一般の役人と代理店ではスキルセットが違いすぎる(共通するのは重労働耐性くらい※冗談です)ので、あまりこっち方面への転職は少ないのかもしれません。

⑧政府系金融(日銀やDBJ等)

 これ、けっこう多いはずなんですよね…直接知っているのは、ぼくの大学のクラスの友達が環境省から政策金融公庫に行った事例のみです(友達なので敢えて具体を出します)。中央銀行にもいらっしゃると聞いたことがあります。

⑨資格職(医者や弁護士等)

 弁護士になった人が周囲に数名います。もともとロースクールを出ていた人もいれば、旧司法試験/予備試験に受かって辞めた方も。
 あと、地味に医学部再受験組も周囲に2-3名おります。どのような形であれ、能力を社会に還元するのは良いことですね。

⑩デベロッパー

 局地的事象な気もするのですが、とある財閥系のデベロッパーに数人転職しております。業界全体で多いのかその会社様に目敏い人事がいらっしゃるのかは不明ですが、役人のスキルセットともフィットのある業界と思われます。

⑪その他の事業会社

 本来はコンサルに次いで多い気がするのですが、周囲にあまりいません(グローバル製薬企業のアナリティクス担当で行った方+αくらい)。国交省や農水省など事業官庁系の方は、その知見を活かして所管業界に転職する場合も多いのではないかと思います。他方で、とある事業官庁の友達が言っていたのですが、「(労働環境に目をつぶれば、)同じ業界の民間企業で働くよりも、役所で政策を作る面白さが勝る」とのことです。まあどっちも面白いと思いますが、一理あるかと。

⑫地方創生系

 死ぬほど大雑把な括りで恐縮です。地方で街づくりに携わる、縁のあった中小企業で幹部人材になる、田舎に帰って家業を継ぐなどの事例を見ています。本当に素敵なことだと思います。
 例えば、経産省の木村さんは、山口県長門市に出向された後、確か退職されて同地域の街づくりに携わっています。(出向時の記事はコチラ)。また、つくば市副市長の毛塚さんは財務省を退官して26歳で着任しています。
 ※このカテゴリの方、個人的に非常に興味深いので、もし首長や議員の先生以外で身元を公表されている方を他にご存知であれば、是非情報共有頂ければ幸いです

⑬政策渉外(GR)

 このカテゴリでご活躍されている方は多いです。企業内渉外で言えば、メルカリの吉川さんが最も有名かと思います(再掲)。専門の会社では、マカイラの代表の藤井さん(文科省)、GR Japan取締役の後々さん(経産省)、ポリフレクト代表の宮田さん(経産省:元ヤフーの政策企画)といった方々がご活躍されています。政策形成プロセスに企業や市井の個人が関わることが多くなるなか、今後明らかに伸びる業界ですので、個人的にも注目しています。

⑭広い意味で役所と民間をつなぐ仕事

 うまく定義が難しいですが、GRのみならず、コンサルティングや様々な企画を通じて、役所と民間を繋いでいる方々がいらっしゃいます。最も有名なのは、霞ヶ関改革の走りであるプロジェクトKの代表をされていた、現青山社中代表の朝比奈さん(経産省)かと思います。青山社中は、国交省の竹内さんや内閣府の久保田さんも参画しています。また、最近はPublink代表の栫井さん(経産省)のお名前もよく聞きます。この会社、オウンドメディアがかなり面白いです。

⑮メディアを通じて、世の中に発信する等の仕事

高橋さんや原さん等、役所でけっこう上に上がって退官した方を除けば、このカテゴリの嚆矢は宇佐美さん(経産省)なのではないかと思っています。宇佐美さんの「アンチグローバルマッチョ宣言」という記事は心に刺さりすぎて、一時期は抜粋の上PCの壁紙にしていました。著書もおすすめです。
 最近のイチオシは、千正さん(厚労省)です。政策立案プロセスや役所の働き方について積極的に発信されています。例えばこちらのNoteは一読の価値アリです。既にメディアにも多数出演されており、完全に世の中に見つかっちゃった感があってギリ古参としては少し悲しいですが、引き続き応援しております。
 また忘れてはいけないのが、最も敬愛する友人の一人である望月優大です。役所には一年しか居なかったのですが、その後GoogleやSmartNews等を経て独立しています。外国人労働者等、社会的に弱い立場に置かれた方の実像を伝えており、我が国にとって貴重な存在であると考えています。

おわりに/Disclaimer
 繰り返しになりますが、このNoteは役所を辞めることを一般的に推奨するものではありません。残るにしろ辞めるにしろ、いろんな生き方があることをお伝えしたく書いておりますので、何卒宜しくお願い致します。



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