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都市の中に訪れた小さな森の安穏。

「レストラン のや」2020年12月1日(火)

吹き荒ぶ風はまさに冬真っ盛りなのに、雪の降り積もらない日々が続く。
この積雪の少なさの反動は必ずやって来るという予感は、この街に住む者の暗黙の了解である。

それにしても、都心エリアは再開発という名の元に、破壊と創造が彼方此方で止むことなく繰り広げられている。
それは、未来の再々開発に向けて壊す前提で作っているようにも思えた。

札幌駅からひと駅の苗穂駅に降り立つ。
このエリアも、再開発の襲来を余儀なくされている。
直線的で無機質な街への変貌は、新しさゆえの美しさを備えてはいるものの、どこか特徴もなく表情もなくなりつつある。
あらゆる機能が郊外から札幌駅都心部に収斂されるその様に、理解し難い疑問だけが湧き上がって止まなかった。

その中で苗穂駅前の住宅街は、年季の入った佇まいが残っていた。おそらく、このエリアもいずれは無機質な再開発の襲来に消えゆくのだろう。
一見してレストランと見受けられない石造りの長閑な佇まいに出くわした。
中に入ると、時代を巻き戻したレトロな落ち着きを宿していて、まるで森の中にいるような静穏に包まれた。
店内に置かれた暖房や雑貨、その全てが懐古主義を主張する。まるで再開発に反発するかのように…
日替わりランチの「チキンチーズガルツ北欧風」なるメニューを選択した。
どこか長閑な空気は、忙しない時を止める。
それはこの店独特の木調の優しさが放つものでもあるのだろう。
プレートに載ったチキンカツは、その表情をソースとチーズに包まれて窺い知ることはできない。
ナイフとフォークを駆使して口元へ運んだ。
さほど濃厚でもないソースがチーズと溶け合ってチキンカツを抱擁している。
何が北欧風かは、把握することは難しい。
ただ、この静かな時と空間の中で、北欧風の緩やかなひとときは、大らかなるものの喪失感の自覚を突きつける。
フォークとナイフを駆使して丁寧に食することに徹した。
そして食後のコーヒーが減ってゆく。
それが着実に現実への回帰の到来を告げているのだ。
コーヒーを飲む干し、無味乾燥な再開発の街並みに戻ろう、と諦念を以って意を決した…

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