見出し画像

鮮度と旨味を打ち消すご飯の粘着。

「祐一郎商店 札幌駅前通り店」2020年12月9日(水)

このまま春が来て欲しい。
仮に雪が降ったとしても薄らでいいから、このまま春が来て欲しい。
一方でこの季節の雪のない反動に、この街の市民は心の準備をしている。
必ず訪れるドカ雪の襲来にあらかじめ諦観しながら…

と言って、さすがにコートを着なければ薄ら寒い。
地下歩行空間に向かい、少し早歩きをして薄ら寒さを打ち消した。
人通りの少ない師走の光景は、ランチでも店内に余白を形取る。
きっとどの店に入ろうが、行列はおろか待機時間もさほどないであろう。
特段、目的の食を決め込んではいない。
限られた時の中で何を食べようか?
振り返ると、最近の傾向は麺類ばかりで明らかにバランスを欠いている。
成り行きながらも、ランチらしい何かを心の中で定めつつあった。
駅前通りにあるビルに足を向けた。
階段がベンチ代わりになる木調の安らぎに、若い会社員が弁当を食べたり、スマートフォンを凝視する若者の姿が見受けられた。
その光景を横目にしてエスカレーターで2階に辿り着く。
どの店もランチタイムを展開している中で、魚系に心惹かれた。
店内はやはり余白だらけであった。
窓辺に腰掛けた。
北海道庁赤れんが前の閑散とした風景もまた余白のままだ。
店名の冠にある“魚バカ”に魅せられたのだから、「海鮮丼」に狙いを定めるほかないだが、心なしかスタッフに鮮度がない。
店内の寒さは、きっと窓辺ということだけではないはずだ。何らかの経費削減も働いているのかもしれない。
そんな状況で「海鮮丼」は体を暖かくするはずもないのだが。
思いの外、小さな丼は価格設定からして許容範囲であった。
しかしながら、丼に凝縮された魚たちの鮮度は決して悪くない。
むしろ底に眠るご飯があまりにも柔らかく餅米のように粘着することに難点がある。
カンパチ、サーモン、マグロ、しめ鯖、エビ、ホタテ等…多様な魚それぞれの身は締まり、快活な食べ応えなのに、ご飯がそれを打ち消してしまう。
ご飯も経費削減の一因なのであろうか?
飲食店が置かれている状況がこのようにして可視化されているとすれば、我々はさらに店との距離を保たなければならなくなる。
この状況に苦い想いを募らせながら、身震いをして閑散とした地下へ舞い降りた…

画像1

画像2

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?