生活習慣病患者への指導で思う事
はじめに
私は市中病院で内科医として働いています。そのため、外来で生活習慣病 (高血圧症、糖尿病、脂質異常症など)の患者さんを多く相手にします。
生活習慣病患者の指導って、とっても難しいです。
今回は内科医の仕事として重要なものの一つ、生活習慣病患者に対する指導について書いてみたいと思います。
なぜ生活習慣病患者の指導が難しい
単刀直入に言うと、生活習慣病は症状が乏しいからです。例えば、血圧が180/100であっても、無症状のことが少なくありません。糖尿病であれば、血糖値が300であったって、別に痛くもかゆくもないのです。
にもかかわらず、健康診断で引っかかって、受診を強要されるわけです。そして受診すると、生活習慣病はきちんとコントロールしないと将来的に心血管イベントが・・なんて聞いててもよくわからない話をされる。別に自分は元気だよ!となってしまう。
体感的に健康診断で引っかかって、受診の継続が維持できる人って半分くらいではないかな、、と思っています。
忘れられない国家試験の問題
では、受診の継続が必要な患者さんをどのように説得するのか?ご安心ください、医学教育ではそのような内容も網羅されているのです。
もう私が国家試験を受けたのは10年以上も前ですが、いまだに忘れられない問題があります。詳細は忘れてしまいましたが、生活習慣病のコントロールが悪い患者がいて、どのような言葉をかけるか?みたいな問題だったと思います。
正解は、なぜ治療意欲がわかないのか教えていただけますか?みたいな選択肢だったと記憶しております。そして、国家試験には禁忌肢といって、絶対に選んではいけない選択肢があります。それが、「このままではお体が大変なことになりますよ」という選択肢でした。
解説には、患者さんとの信頼関係に悪影響であり、治療意欲をそぐ可能性があるから、と記載されていたはずです。
確かに言っていることはごもっともです。学生のころの自分はまだ純粋だったので、医者になったらそういうことは言ってはいけないのだ、と思ったのでした。
本当に恐怖をあおるのが絶対にダメなのか?
最近、私はホリエモンがこんな独自映画を製作していたことを知りました。
この映画は、糖尿病が原因で足壊疽/下腿切断や透析に至った患者さんにインタビューを行いつつ、フィクションでとある家族の大黒柱である父親が知らず知らずのうちに糖尿病を患ってしまう様子をありのままに映し出しています。
率直な感想は、「マジで怖い」、でした。医者をやっている以上このような患者さんを診たことは当然ありますが、とにかく生々しい。言い方は悪いですが、下手なホラー映画よりよっぽど怖かった。
怖かった、と思うと同時に、この映画を見たらどんな人であれば絶対に糖尿病になりたくない!と思うのではないかとも感じました。
ホリエモンの言動には賛同できない点 (最近の境界知能に関する発言など)も少なくないですが、このような啓蒙活動を行っているのは素直に素晴らしいと思います。
このような映画を作ったことで、大きな反発もあったことでしょう。糖尿病患者への差別を助長するとか、製薬会社と儲けようとしている、だとか。。
ホリエモンの行動は非常に勇気が必要であったと思います。
生活習慣病患者と一言で言っても、当たり前ですが多種多様です。インテリジェンスが高い方、自制心をきちんと持っている方であれば、スマートな指導でよいのでしょう。しかしながら、このような生々しい事実を伝えるという方法も、私は時には必要ではないかと最近は思うのです。
さいごに
今回は独断と偏見で生活習慣病患者の指導について最近思っていることを書かせていただきました。結局のところ、患者さんとよく話をして、その患者さんの特徴を的確に判断することが重要ですね。
もちろん、この生々しい事実を伝える指導を多用するのは良くないとは思います。使いどころをよく考えて、慎重に使ってみようかな??と考えています。
皆さんはどのように感じたでしょうか?
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