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【夏の文庫フェア】【キュンタ】『ある奴隷少女に起こった出来事』H.A.ジェイコブズ
重く、奴隷制の残虐さとリンダの強さに深く考えさせられる一冊。
夏の文庫フェアで購入した書籍、2冊目。こちらは「新潮文庫の100冊」から選んだ。
『ある奴隷少女に起こった出来事』
奴隷としてアメリカ合衆国南部に生まれた著者が、これまでの生涯を描いた作品。作中で、著者のハリエットはリンダという名になっているが、これは実話なのだ。
リンダが、傷つき苦しみながらも、自身と子供たちの自由を勝ち取ろうと必死に生き抜くさまが描かれている。
幼い頃に両親を亡くしたリンダは、奴隷の身分から解放されて自由になった賢く優しい祖母が近くにはいたものの、仲の良い弟とともに、ドクター・フリントの家の奴隷として辛い日々を過ごす。
フリント氏は、女子の奴隷に卑劣なことをしようとしたり、いやらしい言葉をかけたりする男で、フリント夫人は嫉妬を奴隷に向けるというひどい状況だった。
リンダは、フリント氏の思い通りにはならないという強い意志のもと、追い詰められて、衝撃的な行動に出る。別の白人紳士の子どもを身ごもったのだ。
リンダは息子と娘、二人の子どもを持つことになるが、フリント氏は、一生リンダと子どもたちを売らない、フリント家の奴隷のままにすると言う。
リンダは、自身と子どもたちの自由を勝ち取るため、逃げることを決意する。逃亡の過程で、リンダ自身は、立ち上がることもできない狭い屋根裏部屋で約7年間も過ごすこととなった。
リンダたちは、最終的には北部を目指すこととなる。
奴隷制について
アメリカ合衆国の奴隷制については、中高時代に世界史や英語の授業で学んだほか、子どもの頃に『アンクル・トムの小屋』を読んだことはあるが、正直なところ、近頃はあまり意識することがなかった。
法制度に裏付けられた権力のもと、他人に残虐な行為をするのも同じ人間であることが、私の心に重くのしかかった。
フリント氏が生まれながらの悪人である、というよりは、当時の社会がフリント氏のような人物を作り上げた、ということなのだろう。他人も自分も同じ人間で、同じように尊重されるべきであるということを忘れてしまうことは、本当に恐ろしい。
リンダの強さについて
リンダの強さはどこから来るのだろうと考えた。そもそも、このような境遇に置かれなければ必要のなかった強さだと考えると悲しいけれど、それにしても、心折れず、闘い続けられたのはなぜだろう。
私は、固い決意と、一人ではなかったこと、の2点が大きいように思った。
第一部の終わりには「わたしには、固い決意があった」、第二部の終わりにも「決意だけはあふれていた」という箇所がある。
自身と子どもたちを自由にしたい、奴隷としての生活から抜け出したい、という固い決意があったからこそ、どんなに辛いことがあっても、諦めずにいられたのだろう。
リンダと私自身を同じ土俵で語ることが適切かはわからないけれど、私がちょっとした仕事の失敗で心をすり減らしてしまったり、資格の勉強等をしようしようと思いつつ毎日の忙しさを理由に手をつけなかったり、そもそも自分のやりたいことがわからなくなったりしてしまうのは、結局のところ、今の生活に満足しているからだと思う。
快適な自宅があり、美味しいものが食べられて、安心して眠れる。家族や友人も近くにいる。色々と悩むことはあっても、本気で困ってはいないのだ。
リンダは覚悟が違う。自身と子どもたちを守るため、7年間屋根裏に潜伏するという、信じられないほど苦しいことにも耐えられる。
そして、祖母をはじめ、リンダには味方がいたことも、彼女の強さを支えていたと思う。リンダは一人ではなかった。
時代は異なっても、困難にめげずに強く生きていくため、本気になること、目指すことに向かって固い決意を持つことの重要性を忘れないようにしたい。
また、自身を支えてくれる周囲の人を大切にするとともに、誰かの味方に私自身もなれるよう、周囲に心を配っていきたい。
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