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【明日も仕事を頑張る】『絶対泣かない』山本文緒


自分で選んだ仕事とはいえ、楽しいと思えない日もある。調整に神経をすり減らすこともあれば、本当に誰かの役に立てているのか、山積みのタスクに向き合いながら、ふと考える瞬間もある。


それでも、なんだかんだ1日1日を積み重ねて仕事を続けられているのは、「もっと頑張ろう」とか、「あの人には負けたくない」とか、「この仕事をしていて良かったな」とか、ちょっぴり前向きな気持ちになれる瞬間があるからだ。


『絶対泣かない』(山本文緒 著)は、そんな瞬間を切り取って、大事に集めてきている。重くなりすぎず、「まあでも、明日も頑張ろう」と肩の力を抜いて明日も仕事に向かう気力を授けてくれる一冊だ。


異なる職業につく15人の女性たち


この本には、異なる職業につく15人の女性が登場する。


フラワーデザイナー、体育教師、デパート店員、漫画家、営業部員、専業主婦、派遣・ファイリング、看護婦、女優、タイムキーパー、銀行員、水泳インストラクター、秘書、養護教諭、エスティシャン


特に私の心に残っているのは、フラワーデザイナー営業部員のお話だ。


花のような人


損害保険会社で頑張り続ける「私」と、転職してフラワーデザイナーになった薔子。安易な気持ちで転職したと思われた薔子は、次第にフラワーデザイナーとしての自信を得ていく。


仕事をする、ということについて、「私」が最後に思うこの言葉に、大きく頷いた。


自信をなくし、そしてまた違う形の自信を取り戻す。


辛い時期を乗り越えて、少しずつ自分に自信を持てるようになること。投げ出さず、成長していけたらと思う。


話を聞かせて


国産ワインメーカーで営業を担当する衿子。冷淡な酒店の店主への対応について、彼氏に相談しながら色々と工夫する中で、人の話を聞くことの重要性に気付いていく。


一生懸命になるあまり、自分の話ばかりしてしまうこと。私にも身に覚えがある。特に就職して数年は、私も恋人に自分の仕事の話ばかりしてしまい、ぶつかることが少なくなかった。最近では、バランス良く、相手の話も聞けるようになってきた。


このお話は、心に留めて、これからも気を付けていきたいと思う。色々な揉め事は、まずは相手の話をよく聞くことから解決に向かっていくと信じている。


明日も頑張ろう


この本は、平易な言葉で淡々と書かれているが、それが心地良く、働く私の心に響いた。


初版は今から20年以上前ということだが、古さは全然感じない。作者のあとがきも魅力的だ。


この本を読むと、明日も頑張る元気が湧いてくる。私がまったく知らないところで、本当に色々な職業の人が、ときに自信をなくしたり落ち込んだりしながらも仕事に打ち込んで、それで社会が回っているのだと少し視野を広げると、前を向ける気がする。


この記事を読んでくださっている仕事に悩むあなたとも、一緒に頑張っていけたらな、と思っている。


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