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【夏の文庫フェア】【キュンタ】『ハレルヤ!』重松清


「年齢を重ねるのも悪くないかも」と思える一冊。


夏の文庫フェア、9冊目。新潮文庫の100冊より、『ハレルヤ!』(重松清 著)を読んだ。



重松清さんのお話には、学生の頃たくさん救われた思い出がある。『きみの友だち』なんかは特に印象に残っている一冊で、学校という狭い世界の人間関係に悩んだとき、そっと寄り添ってくれた。


子どもや学生だけでなく、大人を励ましてくれるお話もある。今回は、こっちの分類の一冊だった。


ショットガン・ホーンズ


これは、46歳のアカネが、学生時代に組んでいたバンドの名前だ。アカネと4人の仲間は、高校時代に吹奏楽部で一緒で、卒業後にバンドを結成した。


アカネたちは大学を卒業した後に解散し、疎遠となっていた。しかし、偉大なロックミュージシャンであるキヨシローの死をきっかけに、アカネは仲間たちに会いに行くことにする。


46歳の彼らが抱えているものは重い。アカネは、介護も子育ても一段落し、燃え尽きたような状態だった。ハクブンは、パートの妻と小中学生の子どもたちと暮らすが、失業中。ラジオ局で働くチャワンは、パーソナリティーと不倫をしている。キョーコは、44歳で双子を出産したが、夫は自ら希望して中国で単身赴任をしているため、一人で子育てに追われている。新聞記者のカンは、社内政治に敗れ、政治部からとばされた。


この情報からは、大人になるのは大変そう、辛そう、若いうちの方が楽しいのではないか、と思ってしまうが、この本の軽やかなタッチは、読者をそんな暗い気持ちにはさせない


いま、幸せですかー?


アカネは他の仲間について、「みんな大変だったし、元気じゃないひともいたけど……でも、幸せだったよ、みんな」と話す。


色々な問題が目の前にあったとしても、人生はまだまだ終わらない。明日何があるかはわからないけれど、私たちは必死に前へ進んでいくことができる。失敗しても、次のステージがある。


このようなことを、このお話は私たちに力強く訴えかける。


将来を考えて漠然とした不安に襲われることもあるけれど、この本を読み終えた今、「年齢を重ねるのも悪くなさそうだな」と不思議と気持ちが軽くなっている。


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