フェーロー語学習の際の資料②洋書

2 洋書

以下の前回の記事の続きです。

さて、フェーロー語を扱っている洋書は少なくありません。網羅することに意味を感じないので、私が特に有用だと感じたものを挙げ、それに対する感想を述べています。今回は主観性が強い記事になるので余り参考にならないかも知れません。また論文類は(学習の際に参考になるものもありますが)取り扱っていません。

2.1 フェーロー語を中心的に取り扱った書籍

★ W. B. Lockwood: An Introduction to Modern Faroese. Tórshavn, 2002: Føroya Skúlabókagrunnur

→上記は4版です。初版はおそらく København, 1955 : E. Munksgaard です。さて、この本は発音 (pp. 5-27)・形態 (pp. 28-101)・統語 (pp. 102-157)・読本 (pp. 158-200)・語彙集 (pp. 201-244) の5部よりなります。形態も品詞ごとに取り上げられており、いわゆる漸進的な教科書ではなく文法ハンドブック的なものです。発音・形態・統語の部分を通読すればフェーロー語の概略を掴むことができます。一方でウムラウトやアプラウトの概念、また古ノルド語からの通時的変化には触れられておらず、純粋にフェーロー語の実用を目指すための本でしょう。逆に言語学的な知識や他言語の知識は前提とされていませんので敷居も低いです。

★George V. C. Young, Cynthia R. Clewer: Føroysk-Ensk Orðabók/Faroese-English Dictionary. Peel, 1985: Mansk-Svenska Publish. Co.

→フェーロー語英語辞典です。辞書に関してはデンマーク語との辞書が有名だと思いますが、まあ多くの方にとってはこれの方が良いと思います。

★Kristján Árnason: The Phonology of Icelandic and Faroese. New York, 2011: Oxford University Press

→オックスフォードの Phonology シリーズの一冊です。 Lockwood の教科書と異なり学問的ですがその分厳密です。アイスランド語と共に扱われています。 Lockwood は発音に関しては概略的ですから詳しく知りたいときはこちらも参照すると良いと思います。

★Höskuldur Thráinsson, Hjalmar P. Petersen, Jógvan í Lon Jacobsen, Zakaris Svabo Hansen: Faroese. An Overview and Reference Grammar. Tórshavn, 2004: Føroya Fróðskaparfelag

→1 正書法と発音、2 音韻、3 屈折、4 派生、5 統語、6 共時的多様性(方言)、7 通時的変化 の7部に分かれます。フェーロー語という言語自体に興味がある方にとってはとても面白い本だと思います。

★Hjarmar P. Petersen: Føroysk mállæra 1-3. Tórshavn, 2020-2021: Nám

→最近出版された本です。3巻あり、1巻が形態論を、2巻が統語論を、3巻が音韻論を担当しています。フェーロー語で書かれていますがこういった類いの文章はかなり読みやすいです。特に統語を扱った2巻は情報量が多いと感じます。

2.1 北欧語/ゲルマン語全体を取り扱った書籍

北欧語ないしはゲルマン語を取り扱った書籍ではその一つとしてフェーロー語が取り扱われています。ページ数としては少なくなりますが、逆に特徴を掴んだ紹介がされていることが多く読む価値があります。

★ Einar Ingvald Haugen: The Scandinavian Languages An Introduction to Their History. London, 1976: Faber & Faber

→独訳 (184: Helmut Buske Verlag Hamburg) もあります。書名通り言語の歴史に重点が置かれています。また実際のテキストも数多く取り上げられていて読んでいて楽しい本だと思います。

★Ekkehard König, Johan van der Auwera: The Germanic Languages. London, 1995: Rouledge

→pp.190-218 で扱われています。該当部は Barnes, Michael P. and Weyhe, Eivind によります。29頁のみですが Lockwood を読んだ後にでも一読しておくと良いと思います。

★Osakar Bandle: The Nordic Languages An International Handbook of the History of the North Germanic Lanugages Volume 1-2. Berlin, New York, 2002-2005: Walter de Gruyter

→上下巻共に1000頁超えの大部の書で多くの情報を得ることができます。拾い読みすると良いと思います。

2.3 さいごに

以上です。今回はかなり絞って紹介しました。入手が困難な本もありますが Google Books や図書館などを活用しましょう。

(需要がありそうなら)次回はオンラインリソースを扱いたいと思います。いつになるか分かりませんが楽しみにして頂けると幸いです。

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