ソウルキャリバー・フレームデータ公開史

おひさしぶりのノート更新です。
2020年の11月に鉄拳7シーズン4、12月にキャリバー6 Ver.2.30のアップデートがあり、丸二ヶ月ほど対応していました。
作業自体は英語版対応も含めて年明けに完了したのですが、作業ストレスのネガティブなイメージの影響で燃え尽きてしまい、今現在もほぼプレイできていない状況がつづいています。
……いやその、マジでつれーんすよ。

さて、今回のnoteのテーマは鉄拳と同様、ソウルキャリバーのフレームデータ公開にまつわる小話になります。
とはいえ、いぐにすがキャリバーのフレーム公開のメインパーソンになったのは、2012年のソウルキャリバー5以降からですので、それ以前についての正確な詳細は、当時コミュニティの中心にいたプレイヤーより、あらためて何かの機会に補完なり、訂正なりしてほしいところであります。

ソウルキャリバー4の頃

SC3以前のフレームデータがどのように扱われていたかは、いぐにすは把握しておりません。
いぐにすがキャリバーのフレームに関心を持ち始めたのは、2008年のSC4からになります。
「フレームデータをもとに格闘ゲームを評価する」という行為自体は、鉄拳(ina tekken wiki)でポピュラーになっていました。
鉄拳にならってソウルキャリバーにもフレーム評価の文化を持ち込もうと、いぐにすはSC4発売に合わせてキャプチャーボード等の機材を購入しました。
しかし、かなしいことにそれはかないませんでした。
なぜなら、SC4のトレーニングモードはコマンドヒストリ(プレイヤーが操作を入力した内容をリアルタイムで画面に表示する機能)がありませんでした。

画像1

↑こういうヤツね。


そのため、いつ操作がはじまり、いつキャラクタが動き始めたかを正確に観測できず、フレームを評価することができなかったのです。
一応、海外の大手ファンサイト『8WAYRUN.COM』(https://8wayrun.com/)では、フレームデータの公開が行われていたようなのですが、なにぶん英語サイトです。日本語ネイティブが翻訳しながらデータを参照するのはストレスで……。
観測範囲で日本語圏のフレームデータが見つからず、結果、システムのほとんどが理解できないまま、初心者狩り・ワカラン殺しになすすべなくやりたい放題にされ、いぐにすはモチベーションを失うことになりました。

このとき、ひとつの疑念がわきあがりました。
「SC4プレイヤーは、どこで正確なデータを得ていたのだろうか?」
まさか、いつも海外サイトのデータを見ているわけがない。
もしかして、自分たちだけ日本語翻訳されたデータを見ていたのでは?
あるいは、身内のみでデータを秘匿していたのではないか?

※この記事投稿後、当時に詳しい方(Crna Rukaさん)からリアクションがあり、SC4以前と、SC4当時の状況についての覚書がツイッター経由で公開されました。それによると、
・SC1の時点でフレームデータ付き書籍が発売されており、攻略にデータ視点が反映されるようになった。
・以降はそれぞれ個人でフレームデータが公開されていた(集約化されていなかった)。
・SC4のフレームデータはSC3 wikiに上書きされる形で更新されていたため、検索性が非常に悪かった。
SC4当時、集約こそなかったものの、個人ブログ内に覚書のような形で、一部のフレームデータが公開されていたように記憶しています。

ソウルキャリバー5の頃

いぐにすの疑念を裏付けるかのように、2012年のSC5発表~発売当時、WEB上でとある組織の活動が観測されました。
その名も『(有)しのたに』。
コミュニティ外のいぐにすには、当時正確なところは把握できていませんでしたが、どうもSC4のトッププレイヤー群が連係して、SC5を攻略する目的で立ち上げたクランのようでした。

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余談ですが、恐ろしいことにメンバーリストには、のちの現SC6開発者も名を連ねていました。
そして、SC5発売後、彼らはフレームデータを公開することがなかったのです。

※少し誤解をまねく書き方だったため追記。「『(有)しのたに』としての情報公開がなかった」というのが正確。参加メンバーはSNSやブログ等、それぞれの活動範囲内で情報発信を行っていました。

いぐにすは義憤に駆られました。きっと、あの集団はデータを秘匿・占有しているに違いないと。
そして、必ず、かの邪知暴虐の集団を除かなければならぬと決意しました。
その一方的な思い込みで、SC5の攻略サイト『SC5 INCOMPLETE CONQUEST』は起ち上げられたのです。

2012年当時は、競技シーンとしてもかなり重要な分岐点だったと思います。
https://www.amazon.co.jp/-/en/Future-Press/dp/3869930551/ref=sr_1_3?dchild=1&keywords=soulcalibur+official+guide&qid=1613930016&sr=8-3
なんと英語圏は、SC5発売まもなくフレームデータ含めた攻略が完備された、オフィシャルガイドブック(『サイトー本』または『北米本』と呼ばれた攻略本)が発売されていました。
https://www.amazon.co.jp/-/en/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E9%80%9A%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84%E4%BC%81%E7%94%BB%E9%83%A8/dp/4047278866/ref=sr_1_1?dchild=1&keywords=%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%BC+%E6%94%BB%E7%95%A5%E6%9C%AC&qid=1613930085&sr=8-1
一方、日本国内で発売された攻略本(いわゆる『おおさか本』)には、フレームデータは記載されていませんでした。
自画自賛になりますが、国内外の知識の差を埋める意味で、日本語ネイティブ向けにフレームデータを公開していたいぐにすの活動は、相当に意義のあるものだったと思います。
現在の情勢にもつながりますが、国際大会の舞台で日本勢が劣った事実はありません。
格闘ゲームは、海外シェアが圧倒的大部分を占めるようになって久しいのですが、そういったプレイヤー人口の大差があっても日本勢が善戦できている背景には、トップ層個々人の努力や、コミュニティの団結はもちろんありますが、データを公開しているいぐにすの貢献も影響は決して小さくないと思っています。
キャリバー以外の他ゲー勢がキャリバーに参入するきっかけにも、貢献していたのではないかと思います。

さて、フレームデータ公開によって、キャリバーコミュニティ内での認知・発言力を高めたいぐにすですが、築いた人脈をたどって、後々になって『(有)しのたに』の顛末を知る機会がありました。
『(有)しのたに』は発足まもなく、活動実績のないまま空中瓦解していました。
さいわいなことに、フレームデータを秘匿する陰湿なトップ集団は、存在しなかったのです。
実際はいぐにすの完全な独り相撲、空回りでした。
『(有)しのたに』について興味のある方は、関係者へ事実確認やインタビューを試みるのも面白いかと思われます。

なお別件で、強者のみを寄り集めたクランの形成が行われ、いぐにすが知らずに一方的に審査され、そこからふるい落されたという胸糞悪い事件があったようですが、割愛します。

そしてソウルキャリバー6

2018年にソウルキャリバー6が発売されました。
日本語圏のフレームデータについては当方『SC6 INCOMPLETE CONQUEST』が独占状態になりました。
作業量をかんがみて、発売当初は各プレイヤーからのフレームデータの提供も行ってもらいました。
現在は、いぐにすが組織化できなかったのと、クオリティコントロールの観点が合わさって、いぐにす独力で更新が続けられている状況です。

海外については、当初は老舗ファンサイトの『8WAYRUN.COM』と、モバイルアプリ『Soul Frames』の二枚看板でフレームの公開が進められていました。
『8WAYRUN.COM』と『Soul Frames』は相互補完の関係にあり、連係してフレームデータの公開を行っていました。
また、Steam版鉄拳のフレーム表示MOD『Tekken Bot Prime』をもとに、ソウルキャリバーフレーム表示MOD『SCUFFLE』が開発されました。
このmodは内部パラメータの読み出しが可能なため、現在でも非常に強力な解析ツールとして活用されています。

SC6は、それまでのバンダイナムコ系格闘ゲームとは大きく事情が異なり、頻繁にアップデートが行われました。
発売は2018/10でしたが、
2019/1 Ver.1.10
2019/3 Ver.1.30
2019/8 Ver.1.50
2019/12 Ver.2.00
と、リリース初年度だけでも短いサイクルでバランス調整を意図したアップデートが行われました。
いぐにすは個人のフットワークと不屈の根性でこのアップデートに対応しました。
一方、海外コミュニティはこれに対応できませんでした。

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https://github.com/Gitschi/SoulFrames/issues/4

2019/3のVer.1.30の時点でアプリ『Soul Frames』は機能不全に陥り、『8WAYRUN.COM』の更新内容をウチのサイトを参照することで対応しています。
『8WAYRUN.COM』コミュニティの内部に、フレーム表示MOD『SCUFFLE』を使える人材はいたようですが、動画を解析してフレームを調査できる人材はいなかったようです(また、それとは別にサイトを更新できる人材も必要でした)。

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2019/5、『Soul Frames』が引退宣言を行います。

そして、海外のフレームデータ公表はモバイルアプリ『FrameCalibur』(https://twitter.com/FrameCalibur)に移管されます。
2019/5の段階でアプリのデモンストレーション(https://twitter.com/FrameCalibur/status/1127591666465034240?s=20)が公開され、バトンタッチはスムーズに行われると思われました。
どっこい、ここから動きが不穏になります。

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なぜかフレームデータの調査人員の募集を行っています。

「もしかしてコイツ、フレームデータを表示するアプりを作っただけで、肝心のフレームデータを調査する能力がないんじゃ……?」という疑惑。

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そしてこのツイート。「JSON形式に直してくれる人手がいない」
簡単に説明すると「データをアプリで読むには「JSON」ってフォーマットに直す必要があるが、そのデータフォーマットを自力で作れない。」という意味がわからない状況。
誰かがフレーム調査結果を用意しても、アプリに反映できないと自白したも同然です。

じゃあおまえ、何ができるんだよ!?

なんやかんやで一年くらい、まともに対応できない状況が続きました。
個人的には正直ダメだろうと見限っていたのですが、2020/8になって事態が大きく進展しました。

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なんと『SCUFFLE』の現行開発メンバーを巻き込むことに成功したのです。
ほぼ一年前の2019/12のシーズン2アップデートにも対応できていなかったのですが、現在は現行Ver.であるVer.2.30に対応しています。

ただ、海外フレーム解析あるあるで、動画のコマ送りなんてめんどくさい解析は行っていないようです。mod値そのままの現実的でないデータもちらほら。

……大丈夫かなぁ????


以上、いぐにす視点のソウルキャリバーフレーム史でした。
次回note更新では、攻略サイトの収益化に失敗した話をしたいと思います。


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