伊豆ドライブの計画

道志みちでのドライブから僕はすっかりドライブにはまっていた。そこで、有名な道路を片っ端から走ることにした。検索して目に入ったのは「アネスト岩田ターンパイク」「芦ノ湖スカイライン」「西伊豆スカイライン」だった。

ふむ、どうやら「スカイライン」と名の付く道路は良い道路らしい。そしてさらに調べると、「伊豆スカイライン」「箱根スカイライン」なる道路も出てきた。後、ワインディングロードを調べると、「椿ライン」というものも見つけた。

多分この記事を読んでもらえるくらい車の話題に飢えた方なら、こうして挙げた道路を知っているか、走ったことがあると思う。しかしこの時の僕にとってはワンピース初期の七武海くらい未知で魅力的な道だった。

そこで全部を一編に通ることにした。幸い、どのみちも伊豆とその上の部分に集中していたから、回り切れると思ったのだ。グーグルマップも大体6時間くらいだと言っているから多分回り切れるだろう。この前の道志みちで時間がかかったのは何かの間違いのはずだから。そう考えていた。

そこで、次のような条件でルートを考えた。
    1. 一筆書きのようなルートにすること(通った道を逆方向に通らない。つまらないから)
    2. 最後に温泉に入ること(ただしオープン走行をやめる直前)

そこで最初にアネスト岩田ターンパイクを通り、椿ラインで下ってから熱海ビーチラインを通り、伊豆スカイラインを通ってから西伊豆スカイライン、そこから北上して、芦ノ湖、箱根スカイラインと通って帰ることにした。

ドライブ当日、まずは小田原に向かって小田厚道路を走った。制限速度を守りながら走ると、周りの車が坂道の登りと下りであからさまにスピードが違う。嘆かわしい、僕も気づかないところでやっているのだろうけれど。

アネスト岩田ターンパイクは車が少なく走りやすい道だったが、逆に言えばそれだけで、特別景色がよいとかそういうわけではなかった。下調べでは事故がたくさん起きる道という評判だったので身がまえていたが、一体どうやったら事故るのかと拍子抜けした。

ターンパイクを抜けた後は椿ラインに入った。当時の僕にはすさまじく曲がりくねった道で、いくらワインディングロードが好きと言っても限度があった。そもそも僕はああいう道の下りは嫌いだ。登りの方がいい。いくらでもアクセルを踏めるし、踏みすぎても勝手に減速してくれる。対して下りはギアを上げ下げするだけでつまらないし神経が磨り減る。

椿ラインを出た後はオレンジラインを通って熱海ビーチラインに向かった。オレンジラインは悪くない道だった。しかしその後の熱海ビーチラインの方が記憶に残っていて、海にかなり近く、景色は綺麗で迫力もある楽しめる道だった。周りに合わせてスピードを出した。しかし出てくる先がよくない。
熱海の中心地に出てきたが、僕がドライブに行く大きな理由である喧噪に近づいてしまう。しかも道がわかりにくく、さらにエンストまでした。

伊豆スカイラインに向かうまでの道はなんだか暗くて薄気味悪い道だったが、伊豆スカイライン自体は綺麗で走りやすく、そして何よりもみんなスピードを出していた。僕は観光目的でこの道を走っているが、他の人は高速道路としてつかっっているらしい。富士山や海が綺麗なのに。僕の後ろには行列ができていた。

終点の手前で降りて、西伊豆スカイラインに向かった。この辺でもう1時か2時を過ぎていて猛烈にお腹が減ってきた。コンビニで休憩したが、せっかくの休日にコンビニ飯は惨めだ。惨めさなら普段の生活で慣れ親しんでいるがだからこそ休日くらいはおしゃれなかふぇーがいい。道徳か公民の授業で聞いたことがあるような話だ。今になって腑に落ちた。

しかし僕はこの時空腹状態で運転することの意味をまだ知らなかった。確かに何らかの法律違反だし良識的にも良くないが、何より空腹状態ではレストランの看板を見つけてから通り過ぎるまでに合図を出して曲がるという判断が難しくなってくるのだ。空腹→レストランを見逃す→さらに空腹→さらに見逃す 恐ろしいループだ。だからロードサイド店は馬鹿でかい看板を掲げるんだろう、骨と皮だけになっても入れるから。ついでにお粥でも売るといい。

しかし何とか蕎麦屋に止めることができた。と思ったら蕎麦屋は休みだったので隣のスパゲッティ屋さんに入った。綺麗でおしゃれな店内でパスタも期待通りの物だった。しかしおしゃれな内装とは裏腹にトイレにウォシュレットがついていなかった。あんなにおしゃれなトイレだったのに。目の前のそのパスタ屋さんの駐車場には僕の車よりも高い車が並んでいた。やはり高い車が買えるくらい優秀な人は駐車場を間違えないらしい。黄色のフェラーリとかいた。

西伊豆スカイラインは素晴らしい景色だった。確かに景色は伊豆スカイラインよりこちらの方がよいかもしれない。しかし路面状況は伊豆スカイラインの方が好みだった。道路わきの駐車場にAE86的な車が止まっていたが、周りに人がいなかった。持ち主はどこにいるのだろう。車中泊にしては時間がおかしいし、気配?がない。

西伊豆スカイラインを走り終えたくらいで、自分は猛烈に疲れていた。今から思うとなぜあんなに疲れていたのか分からない。思い当たる節としては、帽子とサングラスを持っていなかったことと、日焼け止めを塗っていなかったことくらいだ。そんな状況だったが、芦ノ湖スカイラインと箱根スカイラインには向かった。

芦ノ湖スカイラインの駐車場で困ったことに気づいた。パーキングブレーキをかけても車が転がって行ってしまう。実は初めて車で出かけたとき、パーキングブレーキが少しだけ入った状態で、数百メートルほど運転してしまったのだ。確かにビックリマークの意味が分からなかった自分も悪いが、この程度でパーキングブレーキが壊れるMR-SもMR-Sだ。そんなことはあったが、芦ノ湖スカイラインも箱根スカイラインもとてもきれいな道で、走っていて気持ちよかった。そのままレンブラントホテルの日帰り入浴に入った。隣に富士八景の湯もあるが、レンブラントホテルの日帰り入浴の方が200円安かったのだ。30分だけ仮眠して、出発した。

御殿場ICから高速に入ったが、案の定渋滞している。その時の僕は世の中には画期的な選択肢が必ずあり、それを選びさえすれば楽に事が運べると信じていた。そこでナビが提案する「近道」を選択したら、何だかよく知らない住宅街を走らされ、あまりの心細さに這う這うの体で渋滞している高速に戻ることになってしまった。画期的な楽な方法などなく、早くからこつこつやってこなかった者に救いはないのだ。すべて手遅れなのだ。

それから僕は渋滞を避けることに苦心するようになった。


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