引っ越し
引っ越す。新しい町に行く。新しい暮らしが始まる。
”いつものスーパー”を決める。必需品を揃える。猫を見つけ、「これからもよく会うのかな〜」などと思う。
行き交う人を見る。町の雰囲気を見る。
どこかに通い始める。ルーティーンができる。行動範囲が決まる。
川を見つける。花を見つける。振り返る。
その町で、人生が積み上がっていく。
引っ越しは旅行とは違う。旅行は、帰ってくることが前提になっている。だから気軽にあちこちに行ける。
引っ越しは行ったきりである。元の場所に行きたければ行くことはできるが、それはあくまでも”訪問”であり、もう”帰る”ことはできない。あなたの帰る場所はそこではなくなっている。
つまり、引っ越しとは、”帰る場所を変えること”である。
私達は時おり、「人生において自分はどこへ行くのか?」と自問自答する。私はそれと同時に、「自分はどこへ帰るのか?」ということも考えたい。私がどこかに行くと決めたとして、そのとき私はどこに帰ってくるのだろうか?
人生は旅だと言う。それはすなわち、どれだけ遠くに行ったとしても、いつかはある場所に帰ってくるということを示唆している。
引っ越しは体の帰る場所を変える行為である。私は、心にも引っ越しがあると思う。心の引っ越しは、人生でどこかに進んでいくときに、いつも思い出す何かが変わっていくことである。
心の引っ越しが起こる時、それは、別れの寂しさと、出会いの喜びが出会う瞬間である。
ふるさとは好きだ。しかし、新天地も悪くない。そんな気持ちで人生を旅していきたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!