【寅さん、戻らず】 『男はつらいよ お帰り 寅さん』。
私はずっと寅さんが苦手だった。
寅さんはずっと「健全な=ニセモノの大人の世界」の象徴であったのだ。
私の様な繊細な昭和の子供にとって、
「健全な」家族、親族、地域コミュニティは「抑圧装置」であった。
寅さんに代表される「幸せな大人同士の健全な会話」が繰り広げられたあと、
現実世界では本人が居なくなると必ず「ディスり合い」が始まるのだ。
「あれが誰に金借りた」だの「あそこの娘の旦那が働かないで暴力振るう」だの「あそこんちはか○ぼーだから」だの「あそこの息子が首吊った」だ